FacebookなどのSNSでは「いいね!」が汎用されています。

実は、この「いいね」には凄いパワーが宿っていると思います。

 

今日は私自身の経験談をお話しします。

 

ある患者さんのお話です。

事前の情報によると、話しが長い、なかなか理解してもらえない、すぐに機嫌が悪くなるなど、あまり良い声は聞こえてきませんでした。

 

がんの患者さんなのですが、一般的ながん治療はすべて終了している状態でした。

しかも、内科や外科の先生方もあきれ果てて、

その患者さんの診察に手をこまねいていたのです。

 

そして、ついに私の外来に紹介となったのです。

まずはじっくり聴いてみようと、「マイク」をお渡ししてみました。

患者さんの口からは、「治療」という言葉が盛んに出てきます。

 

はじめは、やはりがん治療が終了となっていることをご理解されておられないのかも

しれないと心配していたのですが、どうもそういうことではなかったのです。

患者さんが行っていたのは、いわゆる民間療法である琵琶(びわ)温灸のことだったのです。

 

その時、私の頭の中にはあることが浮かんできました。

この方はセルフケアを自ら行って、

なんとか病気をおとなしくさせたいのではないだろうか?

そして、そんな一生懸命な自分の努力を承認して欲しいのではないだろうか?

 

そこで、「いいですね!」と言った後で、

「自らの自然治癒力を活性化しようとされているのですね」と伝えたところ、

笑顔で深くうなずかれたのです。

 

時間にして30分ぐらいだったでしょうか。

私の目には、とても嬉しそうに帰って行かれる姿が見えました。

その後の外来も、特に時間がかかるなどはありませんでした。

 

人は、本当に言いたいことを聴いてもらえたときに、穏やかで満ち足りた気持ちになるのではないでしょうか。

あるいは、自ら言葉にすらできない思いや感情を、相手が言語化してくれたときにスッキリするのではないでしょうか。

 

どんなことでも頭から否定せずに、まずは「いいね」で受け止めてみる。

その上で、その人が何を考えているのか、どんな感情を抱いているのかを観察し、

本当に言いたいことはなんだろうかとアンテナを向け続けることが大切なのかも知れませんね。

 

この患者さんには、後日談があります。

息子さんと良く山登りをしていて、四国山脈の山々を制覇したそうです。

状態が悪くなって入院したのですが、息子さんが病室に鉢植えの植物を持って来られました。

感染症などのリスクを懸念して、鉢植えの植物はお断りする病院が一般的ですが、

緩和ケア病棟では患者さんやご家族の大切なものとして病室に置いていただくことが多いです。

 

その植物がこちらです。

なんという名前の植物かおわかりですか?

 

 

実は私も初めてみた植物です。

なんと、息子さんからのメッセージがさりげなく添えられていました。

 

またたび、できますように」

 

そう、これがマタタビなんです。

このメッセージを見たときに、親子の情愛を強く感じて、じんときました。

そして、自然の中に身を置いていたからこそ、琵琶温灸の可能性を信じていたのだなと納得できたのです。

 

それにしても、粋なことをする息子さんですよね。

今でも忘れられないエピソードです。

 

少し脱線しましたが、いいね!はパワーを秘めた言薬であると思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。