「水曜日が消えた」
 
 

 

COVID-19禍の下、「映画が消えた」日常を経て、個人的には5ヶ月ぶりとなる劇場での映画鑑賞。と、書きつつ、「劇場での映画鑑賞」という表現に違和感を感じる。そもそも映画鑑賞は映画館で行う行為を指し、家で映画のDVDを観るのは「DVD鑑賞」という使い分けをこだわりたい、というめんどくさい書きだし。
で、鑑賞再開第一作目に何を選ぼうか、と考える。まだ配給が追いついてなく、過去の名作上映も目立つラインナップ。そんなチョイスも悪くはないか、と考えていたところ、たまたま当日封切りの映画を発見。「水曜日が消えた」。
上映開始前に主演の中村倫也さんのあいさつ映像あり。公開延期も、無事この日を迎えられたことの感慨深さ。そう、マスクをし、まばらに座ることを強いられ、少し違和感を感じつつではるが、まずは映画館で過ごす日常が戻ってきたことを素直に喜ばねば。
 
ざっくり、ストーリーを要約すると…。
 
交通事故で解離性同一性障害となり、曜日ごとに違う人格を過ごす「僕」、そのなかで地味で損な役回りをさせられている「火曜日」を中心に物語は展開。そんな「火曜日」がある日、目を覚ますと、なぜか世界は水曜日。他の曜日の自分が散らかした部屋をかたずけることもなく、火曜に休みの図書館にも行ける。喜ぶ「火曜日」だったが、さてさて、「水曜日」はどこへ消えたのか…。
 
登場人物。
  • 主人公「火曜日」、ほか曜日ごと、計7名の「僕」:中村倫也
  • 7人の秘密を知り、「火曜日」のことをほーっておけない同級生・一ノ瀬:石橋菜津美
  • なぜか毎水曜の朝に出くわす、図書館のマドンナ・瑞野さん:深川麻衣(元乃木坂)
  • 7人を見守るお父さん的お医者さん・安藤先生:きたろう
  • 謎の新任医師、「火曜日」的には苦手なタイプ・新木:中島歩
  • 「月曜日」のバンド仲間であやしい関係・高橋:休日課長(ゲスの極み乙女。ベース)
といった、面々。
 
箇条書きにて雑感。
  • 複数の人格が曜日ごとに棲み分けられていて(強調や交流や小さな反目があるにせよ)、お互い干渉しあうことがない。
  • その中で一番地味な「火曜日」が主人公であることにより、平凡な日常をベースに、そこから「水曜日」が消えることによって派生していくドラマがこの映画のストーリーである。
  • そういった意味で、多重人格ネタにありがちなエキセントリックさはなく、そういうものだけを期待して観に行った人は失敗。
  • というか、もっと繊細でやさしい雰囲気がこの映画の魅力。散りばめられた伏線も難解すぎることがなく、かといって安易でもなく。そして、適度に心にしみてくるじわっとした幸福感とせつなさ。
  • 中村倫也。正直チャラいイメージしか抱いてなかったが、こういったイノセントなキャラも演じられる、というのは新たな発見であった。一人七役なんて売り文句より、ずっと「火曜日」の演技を眺めてたい、とさえ思った。
  • サブキャラの女性二人とのやりとりも、絶妙な距離感を感じることができて、個人的にはかなりツボであった…。
  • 曜日ごとに色の違う付箋紙がキーアイテムになってるけど、後ろの方の席に座ったため、書いてあることがよく読めなかったのは残念。
  • 監督の吉野耕平さん。長編映画は初めてとのことだが、オリジナル脚本で、このお仕事ぶりはお見事。映像クリエイターとして実績をつんできたとのことで、映画の中でときおり折り込まれる事故のシーンは特に美しい。
 
と、いうわけで予告編。

 

 

うーん、ちょっと実際の映画の雰囲気からは解離しているイメージだなあ…。

実は今回は、まず「映画を観にいく」という前提のもと、その日やってる作品からチョイスしたながれで、事前に予告編を鑑賞したりはしてなかったのだけど、もし前もってチェックしてたら、観にいかなかったかも、ぐらいの解離度。たまに見かける商業主義的でチープな予告編になってしまい、残念。

 

 

さいごに。

 

ひさびさの映画鑑賞。そして再開第一作がこの作品でよかった、と素直に思える作品。
COVID-19のせいで、はかりしれないダメージを受けている劇場型エンターテイメント。映画界もまずは、収容率50%以下から少しずつ、の再開ということにはなるけど。とにかくも、日常を取り戻すための第一歩。これから、やれることを少しずつ。
 
それでは、また。
 
そしてしれっとこのブログも1年数ヶ月振りの再開。