オーストラリアには『ラウンド』と呼ばれる言葉がある。
簡単に言うと、オーストラリア一周、バックパックの旅。
ワーキングホリデーで渡豪中の日本人や、
長めののホリデーや社会制度で旅する外国の方々が
大きなバックパックひとつ背負って旅をしている。
そういう人たちを対象にしたキャンプツアーも豊富に存在する。
臆病者の私も、自分より大きなバックパックを背負って
ドキドキしながらぐるりとまわったものだった。
ここでの出会いは、自然と異文化交流になって面白い。
私は基本的に英語環境の中にいたかったのと
1人で旅をしていたこともあって、よくこの手のツアーに参加した。
ツアーには、たまに日本人や韓国人もいるが
圧倒的にヨーロッパ勢が多い。
特によく出会ったのはイギリス、ドイツからの旅人。
他にもアメリカ、オランダ、ノルウェー、シンガポール…
国籍は多岐に渡る。
イギリス人やアメリカ人などは、それはそれは旅しやすいだろうと思う。
だって母国語なわけだから。
コミュニケーションにも、手続きにも何も困らない。
トラブルが起きてもいち早く現状を把握できるし、
支持をすぐに理解することもできれば、意見もできる。
でも私はそうはいかない。
必死だ。
そしてイギリス人やアメリカ人じゃなくても、
ヨーロッパの人たちは、英語が母国語じゃなくても堪能な人が多い。
どうしてだろう?
何が違うんだろう??
その頃の私は、まだ
『ヨーロッパは陸続きだから言語が混在している』
『母国語じゃない言語も普通に飛び交っている』
という今となっては当たり前と思える事実に気づいていなかった。
まぁ気づいていたところで英語力が飛躍的に伸びるわけではないのだけれど。
とにかく私は必死だった。
面白いもので、アジアの小さな女の子が
どう見てもヨーロピアンとは一線を画する英語で必死にしゃべっていると、
自然とみんな手を差し伸べてくれる。
「ひろみたいに英語が話せる日本人に初めてあったよ!」
なんて嬉しい言葉をくれた人も1人や2人ではなくて
おかげで私は彼らと共に、とても楽しい時間を過ごすことができた。
そんなある時、参加したツアーにノルウェー人が数人いた。
彼らの母国語はノルウェー語。
ちなみにノルウェーはスカンディナビア半島の端にある。
隣りはスウェーデン、一部フィンランド。
北のほうで若干ロシアと国境を接している。
ヨーロッパといっても北欧は、言語的にはそれぞれの国が独自のものを持っているし
ドイツなどのように多国家が混在している大陸の環境とは若干異なる。
日常で英語を必要とすることも、そうそうないはず。
なのに彼らは英語が堪能だった。
見事なまでに、堪能だった。
何故?
たまらず私は聞いてみた。
「どうしてそんなに英語が話せるの?」
それに対してくれた彼女たちの答えは
私に、日本の現状を語らせることを拒ませた。
「だって私たち、5年も英語を勉強してるのよ!」
5年…『も』?!
言えない…
とても言えない…
日本は基本的に最低でも6年勉強してるだなんて。
その上で英語を話せる人なんてほどんどいないだなんて。
ヘタしたら8年とか10年とか、
勉強しても話せない人が山のようにいるのよ、だなんて…
言えなかった… あの頃の私には。
あまりにも、恥ずかしくて。
私が学生だった時代よりずっと以前から、
日本の英語教育は疑問視され続けてきている。
それでも
あの時ほどそれについて愕然としたことはなかった。。。
あれから10年。
もしかしたら、今の私なら言えるかもしれない。
この現状を、淡々と。
別に何かが改善されたわけではないのだけれどね(笑)