「凄い!」という噂を聞いていなければ、手に取るのを躊躇するほどのボリューム。
期待していた以上にのめり込んで読んだ。
文庫版が出る前だったので、辞書ほどの厚さのハードカバー版をどこに行くにも持ち歩いた思い出。
次から次へと事件が続き、初っ端から目が離せない。
目を覆いたくなるような展開に、憐れみ、怒り、恐れ、虚しさと自分の感情もグルグル廻る。
犯人死亡により、一旦解決したかのように見えて実は…
「なんなんだ?この人間は」
自分の読書史上、一番腹立つ登場人物のターンが始まり、また怒りが込み上げる。
ラスト、真犯人を暴き出し「やった!」と一瞬快哉を叫びそうになるけれど、その後、明らかになった事実を知ると呆然というか、やり切れないというか、素直に
「解決して良かった。」
と思えない。
読了後暫く、無理して笑顔で写真に写る、女性達の顔が瞼の裏から離れなかった。
心に深く刻み込まれた小説だったけれども、どんよりとした気分は暫く後を引いた。