中には、ハウステンボスのオリジナルスノードームが入っていた。

 

「綺麗だな」

見とれて思わず声が漏れた。

 

そんな僕を見て

「たっくん。これから離れ離れになって寂しくなったり、落ち込んだり、会いたくなったらこれを眺めて私を想像してほしいな。ずっと前に、たっくん言ってくれたよね。私達なら乗り越えられるって。だから、寂しいけど頑張ろうね。大好きだよ」

 

 

乙葉は、遠距離恋愛をする覚悟ができたんだなと感じた。

強いなと思ったと同時に、涙を堪えているのも分かった。

 

「ちょっとトイレ行ってくるね」

席を立った乙葉の後ろ姿は、少し寂しそうだった。

 

僕はベッドに横たわり、スノードームのキラキラを眺めていた。

ガチャっとトイレのドアが開き、

 

「たっくん」

 

と乙葉が僕を呼んだ。

スノードームをベッドサイドに置き、僕は乙葉の方に目をやった。

 

 

そこには、セクシーなランジェリーを身にまとった乙葉の姿があった。

「たっくん、おまたせ。待ったよね、ごめん」

 

お風呂に入っていたはずの乙葉だが、何故かメイクをし直している。

少し不思議だったが、今日は、東京へ旅立つ前の特別なデートだ。

きっと夕飯を食べてプレゼント交換をした時に、写真を沢山撮るんだろうなと思った。

 

コンビニで買ってきたパスタを食べながら、今日のデートを2人で振り返っ

りながら、沢山笑って話した。普段は買わない高級スイーツも、あっという間に食べ終わりいよいよプレゼント交換の時間がやってきた。

 

「じゃあ、お互いにせーのでプレゼント渡そう」

 

僕の提案にニコニコ笑顔で頷く乙葉。

 

「いくよ?せーの!」

僕は乙葉にプレゼントを、乙葉は僕にプレゼントを渡した。

乙葉が渡してくれた袋は、重みがあって僕が買ってきたマグカップと同じだったらどうしようと少し焦った。

 

「たっくん、開けていい?」

 

小さな子供がサンタさんからのプレゼントを開けるときみたいに、目をキラキラさせて乙葉は言った。いいよと返事をする前に開けている。よっぽど楽しみだったんだなと僕はそんな乙葉を見てクスっと笑った。

 

僕があげたマグカップを取り出して乙葉は、

「うわー、マグカップだ!可愛い!たっくん、今だから言うけどね、たっくんからプレゼントの袋を受け取った時、私が選んだやつと同じやつだったらどうしようって少し焦ったんだよ?でも違っててよかったー」

 

乙葉も同じことを思っていたとは、びっくりだ。

 

ただ、僕はまだプレゼントを開けていないので、これがマグカップではないということを乙葉が僕に教えたことになる。そんな天然な乙葉も大好きだ。

 

よし、次は僕の番だ。ゆっくり乙葉からもらったプレゼントの袋を開けた。

長いレジから解放された僕は、乙葉と合流した。

乙葉は、僕に見えないようにプレゼントを両手で背中の後ろに隠しながら歩いている。

「ホテルに戻ったら交換しようね」

 

僕は乙葉の無邪気な笑顔が大好きだ。今までも何度もこの笑顔に救われてきた。

テストで悪い点を取って落ち込んでる時も、部活でうまくいかない時も、

いつも隣でニコニコ笑ってくれていた。

もう少ししたら、この笑顔を側で感じれなくなるのかと思うと凄く寂しくなった。

 

 

部屋に到着し、僕は今すぐにでも乙葉に覆いかぶさりたかったが、

「たっくん、先にお風呂入ってきていいよ」と乙葉に言われ、僕は素直にお風呂へ直行した。この後は、夕飯を食べて、プレゼント交換をして、乙葉を抱くという流れになるだろうと思い、入念に体を洗った。

 

僕と交代で今度は乙葉がお風呂へ。上機嫌なのか鼻歌を歌っている。

 

この前、高校を卒業したばかりの僕達はそこまでお金がないので、ハウステンボス付近の綺麗なホテルではなく、少し離れにある格安ビジネスホテルにした。いつも、デートの時はラブホテルで過ごすのが定番だが、今日ばかりは特別に、少しグレードアップした場所にしたのだ。

 

ホテルに帰る道中に、コンビニでパスタとパン、そしていつもは買わない300円ぐらいするスイーツを2つ買った。

テーブルに食べ物を並べ、乙葉が出てくるのを待った。

 

 

少しして、ガチャっとお風呂場から乙葉が出てきた。