征野千里 一兵士の手記
この本を読んだ、
少し引用させていただきます。
兄さんと呼ぶ仲のある上等兵が撃たれてしまったとき、
倒れた体を引き上げると
「谷口(著者)部隊長にようく御礼を言ってくれんか。
俺はもう駄目だがお前元気で行ってくれよ。」
…中略…
谷口が
「何か、言えよ、言えよ」と声をかけた
上等兵は首を振って「煙草をくれ」と云った。
「駄目だ、駄目だ。そんなものをのんだら駄目だよ」と答えると、
また、首を振って「水をくれ」といった。
「それもいかん。死んでしまうじゃないか」というと
黙っていた。やがてまた首を振って
「アア旗が見える、何処の駅だろ、旗が一杯あるよといった。
私は心臓を射抜かれたようになにかハッとした。
そこへ看護兵がきた。
「駄目だ」と看護兵がつぶやいた。
そしてこの上等兵は亡くなったのです。