社会人になった僕はしばらく「ゲイである自分」を忘れていた。
仕事帰りにフラッと入った街角の書店。
月刊誌が並んだ棚の一角にあったその雑誌を手に取った。
『Badi』だ。
表紙を見ただけで、こっち向けのものであるのは判った。
ただ、ここでページを開いて中身を読んでみる勇気は無かった。
読みもしない別な雑誌を一冊上に重ねてレジへ足を運ぶ。
店員の表情を伺うなんてことなんてしないで、視線を店内の別な方へ向けて平静を装う。
今思えば、傍から見たらすごく不審な動きしてたんじゃないかなぁ。
家に帰り着き、とりあえずは家事と遅い夕食を済ませ一息つく。
帰ってきて床に雑に置いた荷物の中にそれはあった。
くわえタバコのままテーブルに頬杖をついてぼんやり眺めていたが、やっと重い腰を上げてその紙袋を手に取る。
一大決心したかのように、意を決して紙袋のテープを剥がし、中のその雑誌を手に取る。
が、意を決した筈なのになかなかページを開けない。
「お、タイプ(ハート)」
表紙のモデルさんに釘付けになっていただけ。
で、ページをめくる。
それまでに、一応はゲイについての予備知識みたいなものをある程度は持っていたけれど、こうしてゲイ雑誌なるものを実際に見たりするとやっぱり違うもんだ。
結局、日付が変わるまで読みふけってしまった。
それから数年、ゲイとしての生き方を特段に意識もせず、というより、ゲイとしての日常生活を送りもせず、ただただ右手が恋人で過ごしてきた。
2006年の秋。
仕事で引っ越してきた関東のある街。
ネットを見ていたら、どうもこの街の中には「ハッテン公園」なるものがあるということを知った。
後日、深夜、その公園に行ってみた。
いるわいるわ・・・。
そもそも僕は、今までゲイとしての生活を送ってこなかっただけにこうした「野外発展場」なるものについても全くの無知だった。
で、今、その真っ只中にいる。
どうしたらいいのか分からなかったものの、とりあえずベンチに腰掛けてタバコをふかしながら観察することに。
向こうの茂みの中では文章に書けないないようなあんな事やこんな事が繰り広げられていた。
と、背後に人の気配がした。
突然後ろから身体を触られた。
その後の事はご想像に・・・。
こうして深夜の公園で野外発展デビューしてしまったのだ。
多分、これで何かが吹っ切れたのだろう。
出会い系の掲示板で知り合っての関係とか、公園で知り合っての関係とかが増えていった。
もちろん、身体関係だけじゃない付き合いも増えていった。
むしろ、そうした、俗に言う「ゲイ友」の方が多いのかもしれない。
遊びに行ったり、買い物に行ったり、飯を食いに行ったり...etc。
そう。
ゲイとしての生き方としては僕はまだまだ若輩者。
そうして2013年、現在に至る。
