「AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣」 | Jiro's memorandum

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【経歴】 日本株アナリスト、投資銀行、ネットメディア経営企画、教育事業経営、人材アドバイザー、新聞社経営管理、トライアスリート

 

 

「AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣」(越川慎司)

 

 

以前読んだ「AI分析でわかったトップ5%社員の習慣」が結構参考になったので、こちらも読んでみた。

 

「AI分析でわかったトップ5%社員の習慣」は、精神論や(なんとなくの)経験論ではなく、客観的事実を基にした分析によって書かれているので("AI"は大げさな感じもしたが)、それまで読んだ自己啓発本とはひと味違う納得感あり、新しい気づきもあり、参考になった。

 

本書も似たような感想で、新しい気づきもあった。優秀なリーダーのイメージもちょっと変わった。ただ、少し考えてみれば「たしかに」「なるほど」と思えるようなことばかりで、今回も結構参考になった。

 

 

優秀なリーダーは、ひとことで言えば「心は温かく、頭は冷静に」といったところか。「頭は冷静に」が特に重要。

語源の“Cool head,but warm heart”は「心は熱く、頭は冷静に」と訳されることもあるが、「心は温かく」の方が、本書が評価するリーダーにはしっくりくる。

 

 

優秀なリーダー(もしくは尊敬されるリーダー、ついていきたいと思われるリーダー)というと、チームを引っ張る気持ち全開でメンバーを鼓舞したり、率先垂範とばかりにモーレツに働いたり、立ちはだかる壁に果敢に挑戦したり、というイメージが先行しがちだ。

 

しかし、実際に成果を上げているリーダーを様々な視点で分析した結果、冷静にリスクを見極め無茶をしない、メンバーのやる気やタレントに依存しない仕組みを作る、失敗確率を下げる方向で思考する、コツコツ地盤を固める、という特性が浮かび上がる。ややもすれば魅力に欠ける人物像に映りかねないが、総じて納得感があった。

 

 

とかくドラマチックな成功を遂げたリーダーは強烈に人々の印象に残る。だから、一見勇敢なリーダーが賞賛されやすい。しかし、真のリーダーは、派手なことはやらず、心に余裕を持ち、冷静沈着な判断で、確実に成功に導いてくれるリーダーだ(地味で印象には残らないかもしれないが)。

 

 

 

 

以下、備忘

 

 

 

AIが突き止めた!トップ5%リーダーの意外な特徴

◆トップ5%リーダーの59%は歩くのが遅い
※意図的に時間と気持ちの余裕をつくっている
※メンバーが声をかけやすい


◆トップ5%リーダーの58%は話が短い
※「伝わること」重視、メッセージはコンパクトに
※最終目標は「行動させること」


◆トップ5%リーダーの48%はメンバーにかなわないと思っている

◆トップ5%リーダーの65%は思いきった決断をしない
※成功確率を上げるより、失敗確率を下げようとする
※やっていたことをやめる決断や重要じゃないタスクを受けない決断をする
※「失敗確率を下げる」と発言をしたのは、5%リーダー291名、一般的管理職4名。成功例を真似することに注力している一般的管理職は891名、5%リーダーは3名。(トップ5%1841人、一般的管理職1715名へヒアリング)
※成功例を真似して成功を目ざす一般的管理職、失敗例をもとに発生原因を追求し失敗確率を下げていく5%リーダー


◆トップ5%リーダーの67%は「感情」を共有する



 

よかれと思ってやってしまう「95%リーダー」の行動習慣

◇95%リーダーは部下に答えを教える
◇95%リーダーは何でも「見える化」しようとする…
◇95%リーダーはタスク管理が自分のメイン業務だと信じる
◇95%リーダーは週報の作成にエネルギーを費やす
◇95%リーダーは定例会議で自分が7割話す
◇95%リーダーは感情で人を動かそうとする



 

トップ5%リーダーが実践する「8つの行動ルール」

[ルール1] 「やる気」をあてにしない
※やる気がないと業務が進まないというのはリスクが大きい
※やる気がなくても業務が実行される仕組みを作る


[ルール2] チームで解決する..

[ルール3] 異質を歓迎する....

[ルール4] ストイックにならない
※がむしゃらに仕事を進めるのはリスク、冷静かつスマートな業務遂行が成果につながる、努力や根性は決してアピールしない(仮に頑張っても、それを隠してメンバーに見せない)

[ルール5] 根回しを構造化する..

[ルール6] 「伝える」ではなく「伝わる」を目ざす

[ルール7] 先にやめることを決める
※業務処理能力を上げることよりも、やめることを決めることが先

[ルール8] 心と身体で聴く…
※うなずきのバリエーションは一般管理職2.5パターン(「はい」「なるほど」など)に対し、5%リーダー5.2パターン(「はい」「なるほど」「そうですね」「うん」「やっぱり」など)



 

トップ5%リーダーの「自分磨き」

◆広げる円を持っている....

◆学んだことを手放す・・・・・
※新たな経験や知識を取得し続け、古い知識は手放す
※読書量は年間49冊(一般管理職の12倍)


◆口角を2cm上げて誤解をふせぐ
※相手が話しやすい表情と空気をつくる

◆内省タイムを定期スケジュールに入れる

◆偶然の出会いを必然にする「歩き回り」

◆人からチャンスをもらう・弱さを出して人脈を広げる




チームを活性化するアクション例

 

◆暇なふりをする
※「今ちょっといいですか?」と話しかけやすい雰囲気をつくる
※時間と気持ちに余裕をつくる
※チーム全体にも「時間的余裕」(すきま時間など)をつくる工夫をしている


◆会議冒頭に2分の雑談で発言者数が1・9倍に



 

5%リーダーの聴く様子

・5%リーダーのうなずきは平均12cm。その他リーダーより33%深くうなずいている
・5%リーダーは1つのうなずきに平均1.1秒かけている(一般的な管理職より1.5倍ゆっくり)
・5%リーダーが、相手の話にかぶって発言した回数は10分につき0.2回(その回数は一般的な管理職の3分の1以下)



5%リーダーが心がけている5つのNGワード

1.「最近どう?」というカジュアルな声掛け
※部下の意見「適当な感じ」「私に関心を持っていない感じ」
2.「最近忙しい?」という他人事のような声掛け
※部下の意見「勤務表見ればわかるでしょ」「忙しいとは言いづらい」
3.「だらだらやってない?」という性悪説の声掛け
※部下の意見「否定から入らないでほしい」「決めつけないで」
4.(ダ行からはじまる)「だけど、でも、どうしても、どうも」から話し始めること
5.テレワーク中に「あれ、これ、それ」と指示名詞を多用すること
※自分の伝えたいことと相手の認識がズレないように

 

 

 

 

5%リーダーは自らがもたらした結果すべてが実力だとは思っていません。

「運がいい」と言っていた5%リーダーが一般の管理職よりも4/3倍多かったのは、運と実力の差をわきまえている、とも言えるでしょう。コントロールできないアウト・オブ・コントロールの領域では、ラッキーなことも逆風も起きるでしょう。

5%リーダーは、逆風にあったときのマイナスのインパクトがないように、しっかりと備えをしているのです。チーム内でペアを組み、一方が何かあったときに、もう一方が支える仕組みを作っています。

エース人材のやり方を水平展開できるようにチームポリシーがあり、新人社員はそれを真似すればある程度の成果を出せるようになっています。パフォーマンスを出せないメンバーには得意なところを伸ばして、他のメンバーの補完ができるようにします。

このように、メンバーの強みと弱みを理解し、その掛け合わせでチームの成果を最大化するのです。

やる気があるかないか、ラッキーなことが起きるかどうか、優秀な人材が入ってくるかどうか、といった不確定要素に賭けをしないのです。やる気がなくても行動を継続する仕組みを作り、偶然の発見を必然にする情報収集をしたり、一個人の能力に大きく依存したりする体制は組みません。

こうした変化に心をしなやかに生き抜く5%リーダーは、レジリエンスな人材といえます。バネのようにしなやかに伸び縮みすることで変化に対応し、仮に何か失敗したとしても元に戻ります。相手に応じてコミュニケーションを変えたり、相手を観察して伝わるコミュニケーションを心がけたり、伝達することではなく行動させることを目ざす人材がレジリエンスな人材です。

 

 

 

 

 

 

著者:越川慎司


株式会社クロスリバー 代表取締役CEO
国内外の通信会社勤務を経て、2005年にマイクロソフト米国本社に入社。のちに日本マイクロソフト業務執行役員としてPowerPointやExcelなどの事業責任者。2017年に働き方改革の支援会社であるクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3 日、複業(専業禁止)を実践。800社以上の業務改善、会議改革や事業開発を支援。講演・講座は年間400件以上で平均満足度は94%。
著書に『AI分析でわかった トップ5%社員の習慣』(小社刊)、『仕事ができる人のパワポはなぜ2色なのか?』(アスコム)、『17万人をAI分析してわかった いやでも成果が出る考動習慣』(アチーブメント出版)、『29歳の教科書』(プレジデント社)など多数。