かく言うわたしがまさに「親が認知症?!信じられない!受け入れられない!」という思いからスタートした認知症両親の在宅介護でした。
わたしだけでなく、母が若年性アルツハイマーの症状が出始めた頃は、父も妹たちもそうで、むしろわたしよりその思いはかなり強かったと思います。
 
つまり。
「親が認知症?!信じられない!受け入れられない!」と思うのはとても当たり前の反応なのです。
 
ではなぜこのような思いが湧いてくるのでしょう?
そしてその思いでなんとなく絶望してしまうと感じるのはなぜでしょうか?
それは、親子関係からくる思考の偏りです。
 
当たり前ですが、わたしたちは親に育てられます。
その親は完璧な人間ではなくむしろなにかしらどこかしら偏った人間です。
自分もそうだと思いませんか?
良い悪いは置いておいて、その偏りは親に由来するもの。
わたしたちが育つ過程で親に刷り込まれたり、自ら思い込んだり決めつけた思考や習慣が今の自分を作り上げています。
言い換えれば、子どものころから無意識に積み重ねてきた選択とパターンで生きているというわけです。
 
強く絶望を感じる人は、親から過剰な期待を受けたり、厳しい躾けなどを、激しく偏った育ち方をしてしまい、使命感や罪悪感が強く背負い癖が付いているのかもしれません。
 
さて。
こうした思考にやられていると、親の認知症の症状に向き合うベストタイミングを逃してしまいがちです。
深い闇のような負のスパイラルに陥らず乗り越えるには、まずするべきことがあります。
まず自分の思考と感情をばっさりと切り離し、親の現状を知り、しかるべき人に相談し、事実に対処することです。
 
「俯瞰した視点を持ち対処する」
具体的には、
・親の現状、親に今起こっている事実
・自分の思考・感情
を分ける。
 
まずは、「親の現状、親に今起こっている事実」。
今は自分の思考と感情を完全に分離し(←ここが最重要!)、冷静に親の現状を知り、どうすればよいか?すぐに専門家に相談することが最優先。
順番としては、親の生活の現状を知る→相談する
 
現状を知るには、
・親の付き合いのある友人、知人、親族、ご近所の方々などに近況を聞く
親の現状を踏まえて相談するのは、
・かかりつけ医
・地域を管轄する市区町村の介護相談窓口
 
まずここまでを自分を捨てて、事実に対処してください。
 
ここまでできたら、自分のケアをじっくりしていきましょう。
自分のケアは、親子関係の振り返りです。
根本的に対処するので、じっくり取り組むことになります。
 
ちなみに、すぐに出来る簡単ケア(気持ちの切り替え)は、好みの香りをかぐことです。
香りは脳にダイレクトに届き、思考で過去や未来に集中してしまう脳の働きを、一瞬で今ここに引き戻し、すべき行動につなげてくれます。
 
長年(二十数年)認知症両親の在宅介護をし、最近ようやく「あの時どうすれば良かったのか?」がわかってきました。
経験を振り返り、書き出し、疑問点を調べ、学び、それをまた実践し体験的に得た答えです。
 
認知症の親に関わることは、自分の人生にとって大きな自己受容と変容に踏み出すこと。
自分をケア=癒すために取り組むことは、
・親や家族それぞれに対する感情を書き出す
・その感情を掘り下げる
・自分の感情から意識の偏り・こだわりを知る
ここをゆっくりじっくり取り組むほどわたしは楽になりました。
 
続いて、次へのステップ。
・親との今後の関わり方を明確に決める
・できること、できないことを決める
・家族間のコミュニケーションを見直す
 
これを繰り返しその時々になじむよう変化させていく。
つまり「子どものころから無意識に積み重ねてきた選択とパターン」を意識的に変化させ今の自分が望む方に切り替えていくということ。
そうすると少しずつ思いが癒され、いつの間にか穏やかで小さなことに豊かさや喜びを感じながら生きる日々へつながっていきます。
今のわたしがそういう感じ。
 
両親や祖母たちに厳しく躾けられ、三姉妹の長女とか跡取りじゃない娘という呪縛に縛られて死にたくなるほど絶望して自分をがんじがらめに縛りつけた思考で偏った私が、両親の認知症にさらに絶望しながら、責任感と使命感、罪悪感にやられながら生きてきた道。
つらかったけれどこうでなかったら、私には今の豊かさや喜びは感じられなかったのかもしれない、と思わなくもありません(笑)
 
現在介護施設両親で暮らす両親と妹たちとのゆったりとした穏やかな関係は、いろいろありながらも、充実し愛おしさを感じています。
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松元佳子