血管性認知症の父、現在要介護4。

脳卒中の後遺症で徐々に歩行は難しくなってる感じで、現在車いす生活です。

頭はまだらにボケてらっしゃいます。

血管が破れたところやつまってしまってるところの影響なので、仕方ありません。

父の大丈夫な脳細胞さんたちが一生懸命血流をサポートしてしっかり父を支えてくれてます。

こんな状況ではありますが。

父はハーモニカを吹きます!吹けます!

 

ただ可愛いだけで許される妹たちと違って厳しくしつけられて長女の責任を求められちっとも好きになれない、好きになれるとこなんてないよ!って思ってた父なんですが。

その心境も徐々に変化してまいりました。

ハーモニカを吹く父はかっこいい!

 

そりゃそれなりにボケておりますので、自分のお気に入りの曲、主に「おはら節、うさぎとかめ、肩たたき」を気が向けば気の向くままに満足するまでリピートしたりはしょったりしながら吹きます。

 

父の吹く曲はほぼ唱歌。

実は、曲名をリクエストすればほかの曲も吹けます。

そうして、メロディーを口ずさめば知ってる曲なら吹いてくれます。

1~2年前と比べたら、若干曲数は減ってはいますけど、それが父の具合の指標にもなるというもので。

生活のことは覚えていなくても、曲は忘れない。

すごくないですか?

 

父がハーモニカを始めたのは先輩の誘いでと語っていました。

おそらく高校生くらいだったのではないかと思います。

大学時代には本格的にサークル活動をその先輩とはじめたり演奏活動とか自慢話をよく聞きました。

というわけで、半世紀以上のキャリアです。

 

娘のわたしがいうのもなんですが、父のハーモニカの音色はなかなかです。

自宅でも時々、日中通ったデイサービスでも、母の通ったデイサービスの行事や、かかりつけ医の病院の診察室や、病院のデイサービスで、リハビリで入院した回復期の病院でも父のハーモニカは人気でした。

たとえ病気になっても、ボケてきたとしても、「芸は身を助ける」を深く実感しました。

ボケてくると気分も沈みがちだし、父自身が喜びを得るような場面もなくなり、心から相手に尊重される機会もなくなっていましたけど。

父がハーモニカを吹いているとき、気持ちよさそうで夢中な表情。

それを聞いている人たちの表情、演奏後の拍手。

父のくしゃくしゃな笑顔を見ると、わたしもうれしい気分になるようになりました。

ハーモニカという手に持てる楽器。

その場にいる人は誰でも知ってる曲。

生の音楽を聴くことでの癒しのすばらしさ。

大嫌いだった父が誇らしい父になりました。

 

たとえボケたって、父も母も、わたしにたくさんのことを教えてくれるし、そのことがいま二人が私に注いでくれる愛情なんだとやっとこころで感じ取れるようになったこの頃です。