認知症だから、かなり進行しているから、ってそういう人たちに、子どもにいうような言い方をする人や、どうせ言ってもできないからわからないと決めつけて言動する方々が、意外と多くて悲しくなります。
よく相手の立場にたって考えてみましょうなどといいますが。
ふだんの何気ない動作や行動など、何も気を使わなくても考えなくてもできることを、認知症のうちの両親特に母は、できないし、理解も難しかったりするのですよね。
例えば。
『トイレに行きましょう。』
この一言に関して、どんな説明を、誘導をしたら、母が理解することができると思いますか?
母は、言葉の意味が理解できません。
話すことはできますが、内容はおかしなことになっています。
自分に声をかけられているということは、わかります。
わたしが母に対していちばん大切にしていることは、わたしと行動しても大丈夫だと常に安心した状態でいてもらえるように整えることです。
つまり。
『トイレに行きましょう』
というトイレについての説明。
トイレって何をするところ?
どこにある?
それをしたらどんな気持ち?
行く必要はありますか?
誰といきますか?
わたしといっしょに行ってもらえますか?
などなど、相手が納得するまで。
次に、トイレに行くために今の状況から次の状況への動作の説明。
座っていたら、立ち上がりますよね?
立つ動作をするために、椅子を後ろに下げる場合、その椅子を下げるという行為も説明します。
立ちますよ?!
今、椅子に座ってますよ。と椅子の座面をポンポンして。
立ち上がるので、椅子を後ろに下げますよ。背もたれと肩をポンポンして、表情を確認してみる。
OKなら、椅子ごとずらす。
そうして立つという行動を説明します。
自分の体の部位の名前もわからないのです。
実際は、わからなくてもうなずいてくれたり、返事を返してくれますが、それは相手の気持ちにこたえたいというサインであって、理解しているということではないのですよね。
「お尻を上げるよ」
といって、お尻はここだよ!と優しくポンポンとたたくようにしてサインを送ります。
それで、立てない時は、足に触るね?といい表情がかたくなければ、足を上からつま先まで優しくなでて促したり。
それでも立てない時は、立つという動作を母が見ているのを確認して、自分がやって見せる。
決して慌てることなく、相手のペースでゆっくりと。
ま、立てないときは、行きたくないことも多いので、立ってもらった時点で、漏れがないかとか確認させてもらいます。
体の力の張り具合と表情など、ここは細心の注意を払って。
と、まぁ立ち上がるまででもこんな感じなんで、以下は省略しちゃいますけど。
ひとつひとつを照合するように説明することで、何をされるかわからないという不安を一緒にいてくれる安心へと変えることができます。
ですが、知らない人は、強引に椅子から引き離すように、立ち上がらせて、引っ張って、無理やり自分のペースで力を入れて立ち上がらせようとします。
ここで、母は一気に不安と恐怖にかられ、体がこわばり、何をされるかわからないから、微動だにしない固まりの態勢になっちゃって、拒否拒絶モードがONになります。
こうなると、コミュニケーション取れません。
不安と恐怖で、激しい言葉と、ひどいときは、手足をバンバンモノや人に当ててきます。
母がする行動は相手へのメッセージ。
そう理解していただけると、ありがたいのですが。
そんなことは、やはり経験して、深く深く掘り下げて考えてみなくては、わからないことなのでしょうか?