ここでの、ほんの数時間の体験は、 | すずめがチュン

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アケノさんを取りまく風景をおとどけしてます。











2014/7/10 撮影

これからしばらくの間、


記憶の中に、


何度も何度も表れてくる気がする、


ガイドは、そのたびに…何かを


置いていくような気も、


今はまだ、


私がきづいていない、


おもしろ~い何か、



それは、


彼のしぐさや、言葉、


何気に聞かせる音や、かすかな匂い・・・・


ひょっとして、現実のヒトとの会話の中に、


忍び込ませて、かもしれない、


 これは、油断大敵!


 そぉ~れ、はじまるぞ、と


逃げ出してきた、何気ない日常の、あれやこれやが、


これからも繰り返す、毎日の出来事が、


緊張に変わって、


ワクワクと身構える、




昨日と同じ、ホテルの部屋にたどり着くころには、


もう、殆どの部屋に灯りがついていた、


窪地から丘まで、


オワンの家は、いったい何個あるのか!


 それにしても、


 愉快な、形だ、


 ここは、ほんとに地球?


と思ってしまう。

平日で、あまり家族連れの、お客さんはいない、


子どもの目で、


ここを見たら、まず最初に


なんて、言うんだろ、


すぐわかる、うちの、マル & ホノの場合は?


想像してみた、


 「 わぁ~~・・・」 「 ああ~~~・・・」 と、呆気にとられて、


目がテン、しばらく固まるふたり、


鼻炎のマルは、・・・そのうち寒くて、鼻水もたれてくるだろう、


それが、ツツーと開いた口に入り、


我にかえる!、


今度は、ピョンピョンはねだす、はねながら


もう一度、「 ワァ~~ッ、!」と、びっくりするくらいの大声でマル、


すぐ続くホノ、「ワァ~~ッ、!」、


幼稚園に行くようになって、叫び、を覚えた二人の、


ワァ~~ッ、が二三回くりかえされたところで、


私が、ストップをかける、


 「 ほら、ほら、 だめでしょ、大きなお声は・・・


  オバチャンたちが、びっくりして、み~んな見てるでしょ!」


首に、おそろいで目印の、ネッカチーフを巻いた、


韓国の、オジサン、オバサンたちに、


頭を下げながら言う、


 「 ミヤネ~、 アムゴット ア~ニャ・・ 」


ごめんなさい!、なんでもないんですよ、って、


(韓国通の、ともだちに教えてもらった・・・・)


叱られたふたりは、手をつないで、オワンに向かって走り出す、


かわいいカーテンが覗く、小窓の付いた


オワンの家の、まわりを


一回ぐるりと、まわって、


窓から、中をのぞきこむ・・・・・


多分、とどかない・・・・、


 「 バアバ、早くおうちに入りたい!」


なんてね、



「 よし、次は、孫と一緒に、子ども達とみ~んなで、だ な!」


「だね、・・・でも一体いくら、かかるんだろ? 」


イモトの言葉で、いっぺんに現実にかえった!


 そうか、それを忘れてた・・・・、



「ところでさ、気になってんだけど・・・ 」


イモトが続けた、


 そうか、さっきから、おかしいと思ってた、


 ノリが悪いし、


 いつものツッコミもないし、で、


「 なにがさ? 気になることって 」


「 きょう見えた、女の人なんだけど・・・・・見えた時、


  指輪してたんだよね、」


「 ふう~ん、・・どんな?」


「 たぶん、・・・・あれかなぁ、 ほら、母さんにもらった紫の 」


「 えっ!、 あの、アレキサンドライトだ、とかいう、あれ!」


「 うん、あれだったと思う!・・・・


 それを、嵌めてて・・・・こう、何回も重ねた手を、はずしたり、また、


 重ねたり、くり返すわけ、


 『 この指輪、見てみて!、』 って言ってるみたいに・・・」


「 じゃ、・・・きょうの女の人、あのお婆ちゃんだという事!」


 それを待っていたように、


 切れ長の、くっきりとした目元の、鼻筋のとおったちいさな顔が


 浮かんできました、


 ホームに居た、そのお婆ちゃんは、あの時幾つぐらいだったのか、


 夏も、冬も着物で、質素な身なりの、他の人たちの中で、


 場違いなひとの様に、いつも浮いて見えました、

 

 ホームから、歩いて20分ほどのとこにある、温泉に通うのを、


 みな日課にしておられました、


 その行き帰りに、


 道路沿いにあった、私の家にいつか寄るようになって、


 ほんのひと時、


 手の空いた母と、世間話などをして、


 また、てくてくと、ホームへ帰って行くのでした、


 手土産に、ホームで配られるお八つとか、近くにあった


 店で買い求めた、駄菓子とか、


 その頃、まだ小学生だった私と弟、


 やっと二三才だったはずの妹のために、


 持ってきてくれてました、


 その指輪は、


 若かった頃は、とても裕福で、踊りの先生もしてたという


 その人に、最後に一つだけ残されたものだったのか、


 ある時、お金に替えるために、


 頼まれて、母が譲り受けたものでした、


 それから、何年かが経ち、


 次第に、おばあちゃんの足が遠のき、


 時々、気になってはいても、 毎日の生活に追われて、


 母も、すっかり忘れてしまってる頃、


 ホームから、お婆ちゃんが、亡くなったと知らせてきました、


 お弔いに、出てほしいと、


 びっくりした母は思い出しました、


 いつか、お茶を飲みながら、


 何気に、そのおばあちゃんに言われた言葉を、


 「 いつか私が死んだ時は、着物着替えて、


  私のそばに坐ってくれませんか 」、と


 単純で気の好いところもある母は、


 あまり深くも考えず、


 「 いぃ~ですよ」と言ったそうで、思い出した母は、


 あわてて、喪服に着がえ、


 ホームに駆けつけると、


 他にだれひとり、身寄りとして、同乗者もない


 霊柩車で、そのおばあちゃんと二人


 葬儀場に向かったそうで、


 それから、


 ホームの職員の方、二人と、他に同室の方ふたり、


 それに母の、たった五人だけでのお見送りをした、と


 当時母に聞いてた話を、


 イモトにしました、


 

 「 きっと、とっても嬉しかったんだね・・・・」


 「 約束守って、来てくたのがねぇ・・・・」


それから、しばし無言になったイモトは、目をつむり、


寝てしまったようで、


釣られるように、私も眠くなり、


 帰ったら、その人の事を、もっと母に聞いてみよう、


そう思いながら、いつか眠りに落ちていきました。



 


 つづく