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松井 大次郎

1年2ヶ月23日目

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これから話すことはまぎれもない事実で、嘘や偽りは決して存在しない

おととい生まれて2回目の体験をした

脳震盪

はじめての体験は高校生の時

当時同じクラスにボクサーがいた

そいつとふざけて寸止めでパンチの打ち合いをしてた時に

そいつのパンチがもろにオレのアゴにヒットして数秒間、視界がグルグル回っていた

それがオレの記念すべき、初めての脳震盪だ

そして生まれて2回目の脳震盪

それは一昨日起こった

毎朝通っている海での出来事だ

オレは毎朝まだ薄暗い時間に沖へとパドルアウトしていく

そしていつもと同じ場所で波待ちして波に乗ろうとした

この日はオフショアがとても強く、ブレイクする時はパンッっと前に放り出される感じのブレイクだった

見事に1.2本連続で波にグルグルまかれた

この日は最近の中でも特にブレイクが力強く感じた

それで3本目はいつもより強くパドルして、やっと波をメイクすることに成功した

そして4本目に事件が起きた

その波に少しずつ慣れてきたオレは4本目の波もテイクオフに成功して

リップでのターンを1回そして2回

いつもならうまく決まってるんだけど、この日の波は特に掘れていて

2回目のターンをした時に、ターンの着地に失敗してその力強い波のリップから叩き落された

左顔面から海面に落ちて『イタッ』って思ったけど耐えられる程度だった

だけど海の中から海の外に出てボードに乗ってパドルしてピークに戻ろうと思った時だ

目の前がグルグルで平衡感覚を完全に失っていた、そして左耳も一瞬聞こえなくなった

これはあの時のボクサーのパンチより効いた

まるでその波は、黒い帯を巻いた柔道家に背負い投げされて顔面から叩き落された気分だった

そんな平衡感覚の失った状態でも、沖から特大セットが来ているのがはっきり見えた

インサイドにいた俺は『やべー、ここにいたらやべー』と思い

必死に沖へとパドルして、目の前がグルグルの状態ながらなんとか安全地帯に逃げのびた

そこでもまだグルグルと目が回ってた

格闘技観戦が大好きだったオレは、あるコトをこの時に思い出した

K-1の試合でダウンした選手が起き上がった時に大きく深呼吸をするのを思い出した

そして大きく深呼吸を繰り返してなんとかその状況を打破した

落ち着きを取り戻してからもう一度ピークにもどり波待ちをした

そして良さそうな波が来たからパドルしてその波に乗って

さっき投げ飛ばされたセクションもなんとか抜けてこの波をメイクした

オレはさっきのダメージは完全に抜けたと思って、沖へ戻る為にパドルを開始した

そしてダックダイブして波に潜って顔を出したその時だ

まだ白いスープが回りに残っていて、オレはダックダイブに失敗して

そのスープの力で波のトップからボトムへと引きずり落とされる感覚を感じ

オレは覚悟を決めてボードを両手でしっかり握り締めて目を閉じた

まるでスプラッシュマウンテンから落ちていく時のあの感覚だ<ふわっ>っという

『ヤベー、ヤベー、恐えー、どうなっちゃうんだろうオレ』って思いながらボードを握り締めた

でも明らかに落下の時間が長すぎる、違和感を感じたオレは勇気を出して目を開けた

その光景をみたオレは『ヤベー』って思った

なぜならオレがいた場所はすでに波が通り過ぎた後で

俺の周りにはその通り過ぎた波の、なんでもないただの泡が浮いていただけだったからだ

そう、完全に抜けたと思っていた3本目の波の背負い投げのダメージがまだ脳に残っていたのだ

ドックダイブをしようと海面にボードと共に頭を波へと突っ込んだ時の

その物凄く少ない衝撃で、オレの頭にあったダメージがカムバックしてしまったのだ

あれは波がオレに放ったジャブだ

格闘家の、あの倒れてもまた立ち上がり相手に向かっていくその凄さがこの時わかった

この時、オレには格闘家程のスピリッツはなかった

ましてやここは海の上だし危険と感じて

そこまで大きくもない波に1本乗り、山の向こうから太陽が顔を出す前に陸へと生還した

これはK-1やボクシングの試合で言う、1R1分44秒TKO負けだ。

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特大セット

MR2

年2ヶ月20日目

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最近2週間くらいずっと、オフショアのセットで頭くらいの波でやってた

時にはダブルオーバの日もあったり、最高な日々だった

そんな日々も過ぎ、波のサイズも落ちて風もオンになった頃

やっと40日間の車での生活が幕を閉じた

車での寝心地はまるでカプセルホテルの様に落ち着いた

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誰もこなそうな場所に車を隠し、ガスコンロ、まな板、包丁、鍋を取り出して夕食の準備をする

野外でのおいしい夕食の後は、コーヒーを入れてチルしながら、今にも溶けそうな夕焼けを見るのが日課だった

このまま3.4ヶ月ぐらい車で生活するのもありかも、っと思わすぐらいだった

別に海に毎日入るし、海から上がったらポイントにはシャワーがあったし体臭を気にする必要もなかった

だが2日前事件が起きた

林の中で朝目覚め車の荷台でゴロゴロしていたら、誰も来ないはずの林の中に向かってくるエンジン音が聞こえた

こっそり寝ぼけた頭でフロントガラスを覗き込むと

俺の車の前で車が一度止まり、こっちを確認して車をUターンさせて戻ってこようとしていた

あれは、まぎれもなく国のパトロールカーの車だった

俺はそれを見て飛び起き、車の荷台から運転席へものすごいスピードで移動して

車のエンジンを慌てて掛け、パトロールカーがまたUターンして自分の車の前に来る前にその場を出ることに成功した

だがバックミラーを見ると、パトロールの車が俺の後を追っかけてきていた

俺はアクセル全開でクネクネした道を逃げた

俺は高校生の時に免許を取ったばかりの頃、兄の黄色いMR2というスポーツカーを借りて

よく仲間と一緒に箱根の峠や、ヤビツ峠を車で攻めていた

<この車は、俺がベイダーと野比海岸のカーブでスピンして突っ込み廃車>

まるであの頃の自分が甦ったようなドライビングテクニックで、パトロールカーをまくのに成功した

だが俺はこれをきっかけに車で寝るのが怖くなった

もし捕まったら100ドルくらいの罰金を請求されるのだ

実は、3日からはじまる予定だった仕事がまだ相手の事情ではじまっていなかった

もし100ドル取られたら、所持金200ドルになってしまうからだ

日本では同じ歳の仲間が一家の主になったり、全国流通で万寿がアルバム出したり

Mr ACE<POK社長 片岡 直也>もいい感じに業界入りしてるみたいだし

ZISTA<画家 ほんま りょうじ>も津波地震の被害地に自分の書いた絵を送ったりと

皆ステキなコトをして、しっかりと形に残している

自分はというと、25歳でパトロールカーから逃げたり、自分の全財産200ドルとかマジで......

まー今はこれが現実だと受け止めざるおえなかった

気分転換に森のハイキングコースを歩くことにした

この森はサーフポイントまで続く川が流れていたり

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子供や犬が川で遊んでたり

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透き通った水の中には魚の稚魚がいたり

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とても大きくて古い木がたくさん生えてたり

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その木が風に揺られる音や

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鳥の囀りが鳴り響ていたり、とても色鮮やかな鳥が住んでいたり

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木と木の間から太陽の光が射し込んだり

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とても気持ちのイイ場所なのだ

この川に倒れこんだ木の前でゆっくりストレッチして頭のモヤモヤを取り除いた

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その後、森の神様にお辞儀をして、仕事が欲しい、あとこの旅の成功をもの凄く願った

その森の帰り道に携帯が鳴った<メールの音>

内容を見てみると配信先はファームのオフィスからで

なんと仕事が来週の火曜日から始まるというGOODな知らせだった

願い事をして、5分もしないうちに起こった不思議な出来事だ

これでなんとかお金の方は平気そうだ

後はどうやってこれからの寝床を確保するかだ

俺の車は完全にパトロール隊にマークされてしまったし

っと考えながら、近くの公園で読書をしていたらまた携帯が鳴った<メール>

確認すると以前マーケットで出会ったおばちゃんからだった

実はこの町に到着した時は、シェアハウスに入れる位のお金はあったので

当時おれはシェアハウスを探していた、それでマーケットに出店していたおばちゃんに

シェアハウス情報を訪ねた所、「私シェアハウス持ってるわよ」っとビンゴ

でもあとあと聞いたところそのシェアハウスは週150ドル

ちょっと高いし、シェアメイトが5人もいるとのこと

それで俺は車で生活し続けることにしたのさ

でもメールの内容を見ると、おばちゃんの新しい条件がとても良かった

週120ドルで、はなれの小屋を貸してくれるとのこと

海からも車で5分くらいだし、もう車で寝るのは少しリスクが上がりすぎた

とりあえずこの小屋を見に行くことにした

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左の部分は倉庫

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入り口を入ると、はなれ専用キッチン

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キッチンからエントリーの8畳くらいの部屋

こんな所に一人で住めるなんて、しかも庭にはこんなのまで

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俺は速決めした

いままでのワーホリ生活で、こんなにいい条件で住める情報は聞いたことない

しかもおばちゃんは日本人が大好きみたいで

お金の事情を話したら家賃はお金に余裕ができてからでいいとのこと

やっと地に足が着いた感じがした

日本にいる仲間に負けないように頑張るぞー

オォー。


2012

1年2ヶ月17日目

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今年も波乗りまくるんでよろしく。