母に言われて、本当に嫌だったことも書いておこうと思う。
妊娠23週4日。
完全破水が発覚した日のこと。
午前6時半、破水に気づいて病院に電話。
午前7時、夫と娘と一緒に病院へ。
午前9時半、夫が娘を病院から保育園に連れていった。
保育園の連絡帳アプリ「コドモン」には、
「完全破水してしまったため、今日から入院になります。今後の送り迎えは夫が担当します」
という内容を送っていた。
母も同じ連絡帳を見られるので、私が入院することは、すでに伝わっていた。
ひと通りの検査が終わり、絶対安静になったところで、ベッドの上から母に電話した。
状況を説明すると、母が最初に言ったのは、
「ねえ……今から堕胎できないの?」
だった。
頭が真っ白になった。
母は続けた。
「この日本では、障害者を育てていくのは本当に大変で……。正直、あなたにできるとは思えない。今からでも堕ろすことは考えた方がいい」
考えた方がいい、と言われても。
できないのだ。
考える、考えないの話ではなく、もう選べないことなのだ。
母は、そのことを知らないようだった。
私は「何を言っているんだろう……」と思いながら、説明した。
「もう23週を過ぎているから、法律上、それはできないよ。もう産むしかないんだよ」
すると、母はこう続けた。
「確かにそうね。でも、お医者さんが治療を断念するとかはできないの? 私は、母親としてあなたが心配」
参った。
本当に参った。
私が心配。
そう言われても、今の私は、その言葉をどう受け止めればいいんだろう。
お医者さんに、一体何を頼めと言っているんだろう。
「それはできないと思うよ」
やんわり伝えたつもりだった。
でも母は、
「一応、お医者さんに確認を取ってほしい。できるかもしれないから」
と言って、電話を切った。
どっと疲れた。
破水して、病院に来て、検査を受けて。
それだけでも気持ちが追いついていなかったのに、さらに何かが重くのしかかったようだった。
母は、こんなことを言う人だっただろうか。
それとも、私のことが心配すぎて、冷静ではいられなかったのだろうか。
そう考えてみた。
でも、やっぱり、言っていいことの範囲を、超えている気がした。
昨年、長い闘病生活の末に、父が亡くなった。
母にとっては、夫を亡くしてひとりになり、まだ一年もたっていない。
そのことが、母の気持ちにも影響しているのかもしれない。
母自身も、まだつらくて、頭がおかしくなっているのかもしれない。
そんなふうに理由を探して、どうにか自分を納得させようとした。
私を心配するあまり、あんな言葉が出てしまったのだ、と。
それでも、言われた言葉は消えなかった。
電話を切ったあと、母なりの理由を考えてみても
あの言葉は、時間がたつにつれて、じわじわと私の中で重くなっていった。