今年は瀬戸内寂聴さんの三回忌。いま発売の「文藝春秋」１２月号に、寂聴さんの秘書の瀬尾まなほさんが寄稿しています。

まなほさんを寂聴さんに紹介したのが、祇園「みの家」の女将の薫さん。このいきさつは何度もききました。ある種のサクセスストーリーともいえます。

寂聴さんから薫さんに、若い事務員を紹介するように電話があったのがそもそもの始まり。薫さんはいい話とは思わなかったようですが（表には出てない理由あり）、「おかあちゃん」時代からのつき合いのある先生の厳命です。「みの家」でバイト中の、直接知った子ではなく、その子の友人のまなほさんを紹介します。面接を受けて採用になりますが、長年寂庵に勤務するスタッフ数人がいる中のいちばん下っ端。そこから寂聴さんの心をつかみ、一人秘書となり、本を出版し、「美人秘書」としてメディアに登場するようになる。「あの子、のったなあ」薫さんがつぶやいたのを覚えています。チャンスというのは、最初からチャンスという顔をしてやってくるのではないのかも。いい条件でなかった話が、本人次第で思わぬ展開となり、人生が拓けていくことがあるのかもしれません。

さて、先日の薫さんとの長電話。４億２千万の借金のため、清水にあった旅館「吉むら」を手放すときに、「瀬戸内先生には頼めやん」と、わたしが挨拶文を書いた話に。薫さんはいま、何度目かの終活中で、寂聴さんが瀬戸内晴美時代に書いた『京まんだら』の初版サイン本などをわたしが譲り受けることになっています。

寂聴さん三回忌