越後湯沢にある吉村昭さんのお墓に詣でたのは、しだれ桜が満開の今年の４月でした。

原稿を書くにあたって、お墓がいつできたのか湯沢町役場に問い合わせたところ、平成１２年６月に借りる手続きをしていますが、いつ建てたかの記録はないとのこと。おそらくすぐに建てられたのではないか、という回答でした。

その旨吉村家にお尋ねしたところ、以前文学館からもきかれましたが、わからないという返答でした。

そこで資料がないか探しました。見つけたのが『文学者掃苔録図書館』（原書房）という本です。

著者が２０年かけて、作家や詩人２５０人のお墓巡りをした記録です。

吉村さんのページには、「平成一二年、町営墓地に墓を建てた」とあります。これはどの資料に基づいた記述なのか、著者の大塚英良さんにメールで尋ねましたところ、すぐにお返事をいただきました。執筆にあたっては、文学者の数えきれないほどの作品や研究書を調べ、郷土史家や図書館職員、寺院の住職、文学者の関係者にもあたったそうです。あまりにも数が多すぎて、しかも昔のことなのでわからないとのことでした。

それで編集者と相談し、この本を参考文献としてあげ、お墓が建ったのは平成１２年としました。

大塚さんの著書は、文学者愛に満ちた「探墓巡礼２０年」の記録になっています。巻末に文学者１０００人以上の墓所一覧も。

井上靖さん、江藤淳さん、中村真一郎さんら、実際に私がお会いした文学者のページもあって、文学散歩の記録は文学者に関心がある人にとっては興味深い本だと思います。２０１５年刊行ですが、アマゾンで購入できます。