便秘もメタボリックシンドロームの原因として重要です。肥満の人は便秘になり易く、また便秘の人は肥満になり易いという悪循環を形成します。

ここで再び日本人の民族的体質の話になりますが、日本人の腸は欧米人に比べて二mくらい長いことはよく知られています。日本人は米を主食として穀物、野菜を主に食べていました。つまり、繊維質の食品が多く、消化、栄養分の吸収に時間がかかるために長い腸が必要でした。ところが、現代人は食生活の変化で消化・吸収のよい食物を沢山食べるようになりました。これでは、食べたものは早く便になるため、便は二m分長く腸内に滞在することになります。腸は栄養を吸収する臓器なので、便の滞留時間が長くなれば、その分、余分な養分、水分まで吸収してしまい、便は出にくくなります。また、本来は吸収しないはずの養分を吸収するために、カロリーも余分に吸収し、肥満の原因になってしまいます。

排便には三3つの要素が必要です。()便が大腸に存在すること、()副交感神経の働きで腸が蠕動運動すること、()腹筋の働きで腸に腹圧がかかることです。肥満の人が便秘になりやすいのは、運動不足で腹筋が弱っているために、排便に際して腹圧がかかりにくいことが挙げられます。また、皮下脂肪が多くても腹圧はかかりにくいのです。

肥満の人は、脂質や糖質など吸収のよい食物を好んで摂取する傾向にあります。これらの食物はほとんどが小腸で吸収されてしまい、大腸には到達しません。これを解消するには繊維質で水に溶けにくい食物繊維である、ゴボウ、ニンジン、セロリなどの野菜や、ハト麦、玄米などの穀類、サツマイモなどの芋類・大豆、小豆などの豆類を多く摂る事が大切です。

排便は大脳によってコントロールされており、精神的な緊張や感情の起伏による自律神経の乱れによって下痢や便秘を引き起こします。最近では腸内細菌のバランスが腸の副交感神経の働きを調節するのに重要な役割を果たしていることがわかってきました。

便秘で腸内細菌のバランスが崩れ、善玉菌(ビヒィズス菌、乳酸桿菌などの発酵型細菌群)が減り、悪玉菌(大腸菌、ウェルシュ菌などの腐敗型細菌群)が増えると、自律神経の働きも悪くなり、脂肪を溜め込みやすく肥満しやすい身体になることが指摘されています。悪玉菌は菌体内毒素を放出します。腸内で悪玉菌が増加すると、菌体内毒素が血液中に入り、これがマクロファージなどに炎症性サイトカインを産生させて、血管内皮細胞を障害すると考えられています。内皮細胞の障害は、インスリン抵抗性や高血圧をもたらします。また、腸内で増えた悪玉菌や菌体内毒素は腸と肝臓を繋ぐ血管である門脈を通って肝細胞を傷害し、NASHの原因になる可能性も指摘されています。

便秘による腸内悪玉菌の増加はメタボリックシンドロームや生活習慣病や狭心症、心筋梗塞、脳卒中など心臓血管病の重要な原因です。腸内細菌のバランスを整えるのに有効なのは、食物繊維とヨーグルトなどの発酵型細菌を含んだ食物です。これらの食物を多く摂るように心がけることが大切です。

 

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引用元:便秘はメタボの原因