試し打ちでも 充分すぎるくらい痛がったのだが…
「それじゃあ おしおき始めるよ」
そう言って振り下ろされた乗馬鞭。
ブンッッッ と それまでとは比べ物にならない 力強く重い唸り声をあげながら ケツの真ん中に打ち付けられた1発目の痛みは 試し打ちとは 全くの別物だった。

一打で 全身が痺れて 気が遠くなるくらいの それくらいの打撃。

「う…わ。まじ 懐かしい。」

柊二さんの 呑気な感想が聞こえても もはやイラっとする気力すらない。

「柊二 うるさいよ。遊びじゃないんだから 黙ってて。…ハル 自分で数えな。」

言われて あぁ そうだった… と 声を絞り出した。
カウントは自分で。
何打 打たれるのかは 分からない。
教えてもらえない。
それでも とにかく ひたすら 数を数える。

乗馬鞭を使う時のアキさんは「○打で終わり」とは教えてくれない。
終わった時に「今日は○打だったな」と確認する。
そのための カウント。記録係的な。

「……いち。」

ブンッッッ… ビシッッ

「……に。」

ブンッッッ… ビシッッ

「んんっ…  さんっ。」

3打目で すでに 根をあげそうで 床についた手を ぐっと握りしめた。

ブンッッッ… ビシッッッッッ

「あぅッッッ…  よ…んっ。」

ブンッッッ… ビシッッッッッ

「いッッッ… ごっっ。」

「情けない声出してんなよ ハル。まだまだ 序盤だよ?」

アキさんに こう注意されても仕方ない。
それくらい オレは息が上がってしまっている。
情けない。

「は… (ビシッッ) いいっっっ。…ろくっ。」

返事の途中にも 容赦なく打ち付けられる乗馬鞭。

「オマエは 偉くなったわけじゃないんだよ。勘違いするなよ。」

「は…  (ビシッッ)あぅッッッ…  なっなっ。」

「ハルは こうやって ボクの足元で四つん這いになって 馬用の鞭で打たれるくらいの… それくらいの 立場なんだからな。」

「はい… (ビシッッ) はちっ…。」

「それから 柊二が許してるからって 最近の柊二に対する態度は さすがに 目に余るな。見ていて不愉快だよ。」

「は… (ビシッッ)っっ きゅう… 。すみませんでした。あらためます。」

「うん。そうしな。目上の人は敬えって いつもも言ってるよな? バカなアニキでも バカにするのは 良くないよ。」

「はいぃっっ(ビシッッ)…じゅう。」

「ケンのことも…手が焼けるのは分かるけど バカな弟って かわいいだろう? ちゃんと愛情持って かわいがりな。」

「はい。… (ビシッッ)んんっっっ じゅういち。… (ビシッッ)じゅうに。」

「はなちゃんはね… あの子は 難しいけど。柊二の彼女だから。妹みたいにしか見えなくても 姉さんだと思って 大事にしな。」

「はい。… (ビシッッ)っっじゅうさん。(ビシッッ)っじゅう…よん。(ビシッッ)じっじゅう…ごっ。」

「…それじゃあ ペースあげるから。ちゃんと ついて来いよ。」



ここからが…  乗馬鞭の本番だ。
気を引き締め直して 歯を食いしばった。