この前のお休みの日に「銀色の絆」(雫井脩介)を読みました。




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ある図書館のお知らせに、
「ウインタースポーツ特集」として紹介されていて、フィギュアスケートを題材にした小説とのことだったので、どんなかな?と軽い気持ちで借りてきたのです。

これまでフィギュアスケートを題材にしたものといえば、マンガとか、ジュニア向けの小説とかあるのは知っていましたが、普通の小説ではあまり知らなくて、単に自分が知らなかっただけなんですけどね。

軽い気持ちで読み始めたら、あっという間に引き込まれてしまい、
お昼過ぎから読み始め、気がついたら家族が帰ってきて、ご飯は本当申し訳ないけど、その辺にあったもので済ませ、さらに読み続けて読み終わったら夜中の1時でした。



これまでフィギュア関連の書籍をいくつか読んだことはあるし(伝記的なもの、選手が語った形式のものなど)雑誌の記事とかテレビで取り上げられたりして、舞台裏的な部分は断片的には知っているつもりでいたんですが、

小説ですがここまで詳しく書かれていて驚きました。

娘にフィギュアを習わせている母親が主人公で、
話のほとんどは母親の目線から書かれているので、スケートの練習や大会のことだけでなく、
フィギュアにかかる費用とか、コーチとの関係とか、クラブ内のしきたりや人間関係とか(母親同士の関係とか)娘の進路のこととか、
自分がちょうど小説の中の母親世代だからか、
ものすごくリアルに感じられました。

「クローズドノート」の作者としては知っていましたが、この方の小説は初めて読みました。そしてもともと作者がフィギュアに詳しい方とも思わないので、巻末を見ると、やはりいろいろ調べたり、実際にスケート関係者に取材されててなるほどなぁ、と思いました。フィギュアの世界で有名な方の名前や、有名なコーチのお名前が並んでいます。

2011年11月発行ですので、バンクーバーオリンピックの後ですね。その辺りに実際あったことにもリンクするような内容だと思います。フィクションだけど、やはり断片的に、ある選手を思わせるようなところもあったり…。

さらに思ったのは、今から5年前に書かれた小説なのに内容に古さを感じないというか、たぶん小説だから、当時の実際よりは、技は高度な構成になっていたんだろうけど、今、それに近いような状態になっているので、
例えば女子の世界で3Aのコンビネーションを跳ぶとか、女子で4回転を跳ぶ選手とか…女子の層の厚さとか、ジュニアっ子が元気で全日本で活躍するとか…
3Aは今シーズン紀平さんが成功しているし、試合の6練で着氷させた横井ゆは菜さんもいるし、この間真凛ちゃんが「S1」で「4回転を練習している。」と言っていたし、まるで現在の状況を予言していたような…
と書いてて、あ、バンクーバーで真央ちゃんは3Aのコンビネーションを成功させたんだった、そして安藤美姫さんが4Sを成功させてたことを思い出し、当時でもあった内容だったんだと思い直しました。

小説の話に戻ると、

途中からどんどん金銭的に苦しくなっていくんだけど、母はスケートに賭けて、娘もそれについていくんだけど…

本当、後がない状況で賭けにでる…。

あるコーチは「フィギュアスケートは勝ち負けです。競技ですから」と言い

もう1人のコーチ は「一番大事なことは、選手が自分自身を氷の上で表現し切ること。それが本当に思い通りにいけば選手は十分満足できるはず。順位とか点数とかは、そういうことに比べたら取るに足らない問題よ」
と言う。

もちろんこれは小説で、実際のコーチがそう言うとは思えないけど、


私も以前、「もう1人のコーチ」と同じことを書いていたと思う。

でも最近思っていることは

「競技のフィギュアスケートは、勝ち負けだ。」

ということです。当たり前ですが…

この小説を読んで、より一層そう思いました。


そして、ジャンプかスケーティングか表現力か、的なことが度々議論されてきたと思うけど

今の状況は

「ジャンプもスケーティングも表現もすべて兼ね備えたスケーターが勝つ」

ですよね。



長々と書いてしまいましたが、

この小説を読んだ一番の感想は

スケーターの親御さんに対して、

途方もないくらい手塩にかけて育てられた大事なお子さん方を

かわいいや綺麗やカッコいいだと好き放題に言って、

見させていただいてすみません。

という気持ちでいっぱいになりました。

そして小説の中で選手のお母さんが

「フィギュアスケーターは見られてなんぼ」と言われた言葉を真にうけて

これからも、心して

ありがたく演技を見させていただきたいと思います。