眠りから覚めたらちょうど最寄駅についたところだったので、膝に乗っていた財布やら携帯やらを抱きかかえて急いで飛び降りた。駅を出ると空がまさにねずみ色の雲で埋め尽くされていた。わたしはそれを見ているうちにだんだんと電車の中で眠る前の感情が、吹き付ける冷たい風と一緒に舞い戻ってきた。それはなんだか言葉で表すことはできない感情なのだと思う。でもなにに近いかっていうと、きっと寂しさ。むかしに数日間滞在したおばあちゃんの家から帰るときのような、まったくそれと同じではないのだけれど、そんなような感情。
わたしはそんな感情に、だいたい一ヶ月か二ヶ月に一回くらいのペースで襲われる。それでそのときの状況はだいたい決まっていて、それは家に帰る途中のことがほとんど。というよりはそれがすべて。わたしにとっての家はこの地球上のどこよりも安全で、安心できる、心の置き場所のようなところなのだけれど、どうしてかそこへ帰ろうとしているときにその寂しいさに似た感情はわたしに襲いかかるわけで。そういうときわたしは自分がほんとうはどんな人間なのか、いままでやってきた作業が全部白 紙に戻ったみたいにわからなくなる。ほんとうに、頭が、真っ白になるの。雲よりも、白紙よりも真っ白に。