◆平成27(2015)年2月11日 朝日新聞 北海道朝刊
母子家庭にシェアハウスの安心 道内、徐々にお目見え /北海道
母親が育児や仕事、社会からの孤立などに悩む母子家庭の住まいとして、シェアハウスを提案する動きが道内でも出てきている。
□元社員寮を改装 札幌
札幌市豊平区に3月、市内で初という母子家庭向けのシェアハウスが開設される。若者向けなどのシェアハウス8カ所を市内で運営してきた不動産会社「マッシブサッポロ」(札幌市)が運営。4階建ての元社員寮を改装し、8畳の居室15室にキッズスペース、居間などを備え、家賃は3万5千円と共益費だ。小学校卒業までの子どもが入居でき、男性の訪問は不可などのルールがある。同社の川村健治代表(36)は首都圏で母子家庭向けシェアハウスを見学した際、新潟県など遠方から引っ越してくる人もいることに驚いた。川村さんによると、母子家庭向けは全国でまだ10カ所程度だが、都市部を中心に増えている。自身もシェアハウスに住んだ経験がある川村さんは「人が支え合うことで、より楽しく前向きになれる。子どもは色々な母親と接することで社会性も身につくのではないか」と話す。
ただ、家庭内暴力や収入など、人によって抱えている状況が異なる難しさもある。そのため同社は、NPOが運営する保育士養成施設「こども学舎」(札幌市)に通う母子家庭の母親の意見を採り入れたり、親同士で子どもを預け合う「子育てシェア」運営会社や、暴力や離婚の相談ができる団体などにサポートを頼んだりしている。提携しているこども学舎の南邦彦さん(40)は「母子家庭の母親は一人で悩みを抱え込んでしまう人が多い。シェアハウスで周囲に受け入れられる経験をし、前向きに歩むきっかけになれば」と期待する。
□シェルター役に 恵庭
市では2013年、福祉事業の会社を経営する三神利恵さん(42)が、母子家庭向けのシェアハウスを開設した。これまで7年間、養育里親として14人を預かった経験から、「親が育児や仕事で追い詰められて施設に預けられる子どもを減らしたい」との思いで始め、今までに5世帯12人が入居した。2年間の運営を通じ、三神さんは「一時的に落ち着ける場所で、就職など先のことを考えるシェルターのような役割を求める人が多い」と感じたという。離婚後に生活していけるのか不安で、相談できる場所があったという安心感から涙を流す人もいたという。三神さんは「母親が少しでも笑顔で子どもに接することができるよう、これからも子育てや精神面でのサポートをしたい」と話す。
ひとり親を支援している「しんぐるまざあず・ふぉーらむ北海道」の平井照枝代表(54)は「仕事も保証人も見つからず、住む場所に困っている母親は多い。安心して暮らせる住居があることは生活の安定につながる。生活費の大きな部分を占める住居について、公的な支援の充実が必要だ」と指摘する。