鳩山首相の所信表明演説、やっと行われましたね。就任以来、よく遊びまわったものですね。


 所信表明演説の内容ですが、第一印象は、どっかの頭でっかちな大学の先生が好みそうなものだなあというものです。


 表面的に抽象的で聞こえのよい理念を雑然とならべただけという感じがします。きっと、どこぞのよい大学とか大学院を出たての、あまり社会経験のない比較的若手の政策担当秘書とかが書いたんでしょうね。


 読売新聞の社説は 「『理念』だけでは物足りない」(09年10月27日付) と書いています。すこし引用してみましょう。

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…理念は、法案や政策として具現化されねばならない。今国会で、鳩山内閣は、その用意がどこまであるのか。

子ども手当やガソリン税の暫定税率廃止、高速道路無料化などの家計支援によって「人間のための経済」への転換を図ると言われても、首をかしげざるをえない。問題は財源をどう確保するかだ…。

…首相は、「対等」な日米同盟について、「両国の同盟関係が世界の平和と安全に果たせる役割や具体的な行動指針を、日本の側からも積極的に提言し、協力していけるような関係」と定義した。

ところが、懸案の米軍普天間飛行場の移設や、海上自衛隊によるインド洋での給油活動について、明確な方針を示さなかった。

なぜ「ノー」なのかも語らず、対案も提示しない。これでは「対等」な関係などありえまい。

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また産経は次のように書いています。

産経新聞社説「所信表明演説 見えない政策の優先順位」(09年10月27日付)


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外交面では「緊密かつ対等な日米同盟」を改めて掲げ、同盟が世界の平和と安全に果たす役割を「日本の側からも積極的に提言」すると述べた。


だが、日本がより大きな責任を担うことを前提に米側に提言する用意があるのだろうか。海外に派遣する自衛隊がより能力を発揮するには、憲法改正や集団的自衛権の行使容認に踏み込むことが求められる。そうした言及がないのは現実性に乏しい。

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 私も、読売と産経と似たような感想を持ちました。


 鳩山さんの所信表明演説は、耳当たりのよいと(特に左派にですが)思われている「新しい公共」とか「対等な日米同盟」とか「いのちを守り国民を第一とした政治」とか「共生」とか、ちりばめてますが、具体的方策は示されていません。


 特に、指摘したいのはやはり外交、安全保障でしょう。産経も指摘していますが、「緊密かつ対等な日米同盟」というのは、集団的自衛権の問題に踏み込まずにどうやって成し遂げるのでしょうか。

 まさか、中国とアメリカとの間の危ない綱渡りをすることによって、中国というトラの威を借りて、「対等な発言力」を得ようというのでしょうか。

 そもそも対等な安全保障上の関係といえば、やはり「貴国の安全が脅かされれば我々が手を貸す、その代わりわが国の安全が脅かされた場合は貴国の力をお借りしたい」ということが言えて初めて対等になるはずです。

 そのための集団的自衛権の問題や憲法改正の問題に踏み込まずに、「対等かつ緊密な日米同盟」と語を使うのは欺瞞以外のなにものでもありません。

 今回の鳩山さんの所信表明演説は、おしなべてこのような欺瞞が多いように思います。表面上は、(繰り返しますがマスコミなど左派に)聞こえのよい言葉をならべてはいますが、ちょっと考えると何も実質的なことはいっておらず、実現はおぼつかないし、実現できてもそれがよいかどうかよくわからないような事柄で満ちています。

 まあ、鳩山さんとか民主党の性格がそのまま現れているといってはそれまでですが。

 所信表明演説批判は、次回も続けたいと思います。