第45話 スキー合宿異聞【4】
バスは目的地に着き、宿舎に荷物を置くとゲレンデに整列し、いよいよ合宿の開始であります。初心者が混じっているとは言え、そこは大の男のこと、しかも体育会に籍を置く者達ですので、実地訓練あるのみ、と相成った次第であります。
「ええ眺めやのぉ」
と顎だけは一人前ですが、足は一歩も動きません、と言うか動かせません。教官が20メートルほど滑り「ここまで来い」と号令をかけますと、他の学生達はスイスイと滑る中、三武会メンバーはボトボトと転倒者続出であります。
それでも時間の経過と共に少し滑れる様になりますと、集団から離れ思い思いに滑り出したのですが、コースの両サイドにある雪の土手に突っ込み抜け出せない者、リフトの鉄塔に激突し倒れている者、リフトから落下し身動きが取れない者等々、惨憺たる光景が展開されていたのであります。
「なかなか手強いのぉ」
などと強がりを言いながら、コースを下った麓辺りで尋常ではない疲労感を漂わせながら合流する三武会メンバー。すると
「○○がおらん」
と應援團員がいない事に気付きます。さりながら捜索出来る様な腕の持ち主は誰一人おりませんので、途方に暮れておりますと、救急用ソリに乗せられ運ばれる團員を発見したのであります。
後で聞いたところによれば、日頃から「ワシは曲がった事が嫌いや」が口癖の團員氏、見栄を張って上級者コースへと続くリフトに乗り、ゲレンデに到着するや、急勾配を一直線に滑り降りたそうであります。元よりそんな技量はありませんので、忽ち飛ぶような勢いで派手に転倒、しかも倒れたところを後続のスキーヤーに轢かれ、結構な重傷を負ったという次第だったのです。
スキーは一歩、間違えれば、大変、危険な目に遭います。スキーを嗜まれる方はくれぐれもご留意頂きたい、という事を皆様に啓蒙し、本稿を締めくくりたいと思います。
甲南大學應援團OB会
八代目甲雄会広報委員会