第31話 歯科医【前編】
ある團員氏、ふと頬に違和感を感じます。ここ数日、先輩の愛のご指導を頂く事もなかったのに、と面妖さを覚え、頬を抓ったり口を開け内側を鏡で見たりと自己診察を繰り返した結果、歯茎が腫れている事に気付きました。
ご経験のある方も多いと存じますが、歯の痛みは一種、別格で、耐え難いものがありまして、これ以上、腫れて痛みがピークの折に闘魂注入を頂戴しようものなら大変な事になると、一人想像し勝手に震え上がり、歯医者さんに行く事を決意したのであります。
とは言え以前、通っていた歯科医は自宅の近くにありますが、一日の大半を團室で過ごす應援團員である今となっては通院は難しゅうございます。そこで大学周辺が地元という下級生がいた事を思い出し、その者を捕まえ
「おい、大学の近所でエエ歯医者を知らんか?」
と尋ねると
「押忍!○○歯科をお薦めします!」
と即答するあたりは流石に地元住民の強みでありましょう。
早速、團務の合間に薦められた歯科医に向かう團員氏。行ってみると意外と空いておりまして、すぐさま診察室に通され、問診が始まり治療へと移行致します。無論、團員氏は医術の心得がある訳でも医療の専門家でもありませんが、素人目にも明らかに歯科医の段取りが悪く思えてなりません。レントゲン写真を見ながらしきりに首を傾げたり、さっきも触ったであろう箇所を改めて触ったり、と素人判断は危険ではありますが、何か釈然としません。
結局、結構な時間、診て頂いた割には何が悪くどういう治療を行い、どの程度の期間がかかるという事もハッキリせぬまま歯医者さんを後にする羽目になったのであります。
甲南大學應援團OB会
八代目甲雄会広報委員会