実際にバイ(営業)が始まり、改めて自らが販売すべき商品を眺めておりますと、価格が全品、同じという事に気付きます。その様子を見ていた親方が「全品、同じ値段にしとかんと、こいつら計算出来ないんや」と解説して下さいます。
それでも500円の商品を9つ購入し1万円を出したお客さんが現れたりしますと、忽ちパニックに陥ります。ちゃんと揃っていない両手の指で懸命に計算しておりますので、「5×9=45、お釣りは5,500円」と教えますと「兄貴、九九が出来るんでっか!凄い!」と本気で驚かれるものですから、どう反応を示してよいものやら困惑するしかなかったり致します。
空気感や指揮命令は團生活と大きくは変わらないものの、やはり細かい点では相違点がありまして、往々にして戸惑う事がございます。例えば食事。ちょっとお客さんの流れが落ち着いた頃合いを見計らって、食事を振る舞って頂けるのですが、日常の癖で目上の方が食事するまでは、なかなか先に食べ辛いものであります。ところが若手諸氏は、我先に食べ始めます。
刻一刻とお客さんの流れが変わる商売の最前線、食べれる時に食べておかねば一食、抜く羽目になりますので、食事をしろとの指示が出たならば、迅速に食事をするのが業界のルールとの事であります。
弁当であったり、ハンバーガーである事もありますが、比較的、時間がある開店前は、炊飯器を持ち込んで白米を炊き、大皿で提供される様々なおかずを皆でつつくというスタイルがございます。顔の広い親方は店を出せば様々な陣中見舞いを頂戴しておられ、頂き物の中には目を剥く程、高価な食材がありまして、そのままおかずとして提供されます。故に一番、良い部分は若手が先に食べてしまうという事が珍しくありません。
高級そうな木の箱に入った極上明太子の箱がある事に気付き食事の時間を楽しみにしておりましたところ、少し遅れ食事の席に着けば箱は空っぽという事も往々にしてある事態なのであります。
甲南大學應援團OB会
八代目甲雄会広報委員会