江戸そばとラーメンのふたつの味を持つ蕎麦屋。蕎麦屋とコンビニの二つの顔をもつ蕎麦屋の次は、店名がふたつある店を紹介する。

このふたつの写真を観て欲しい。

 これが現在の店名〝立ち喰いそば 米次郎〟

そしてこの店の資材置き場に捨てられていた〝よりみち〟の看板。この店は40年近く前から〝よりみち〟の店名で営業をして来た。

では、何でふたつの店名が存在するのか・・・。

環状7号線の〝南交差点〟の角にある当店。交通量の激しい目の前の環七。この一角だけ背の高い木立が騒音と排気ガスを防ぐついたてになっている。

 まるで砂漠の中の〝オアシス〟。だからこの店を知っているタクシーやトラックの運転手はここによりみちして蕎麦を食べる。

店内のテーブルがいっぱいならこのベンチに腰掛けて食べるのもいい。

 

店内の片隅には、日活の古く良き時代の銀幕スターのポスター。昭和レトロの雰囲気満載のコーナー。

ふたつの名前が生まれた話がよこみちにそれたが、店主の奥さまは、神楽坂の〝みちくさ横丁〟で長年バーを経営していた。

 

神楽坂のみちくさ横丁は、夏目漱石の生誕と終焉の地。漱石の代表作〝道草〟にあやかって名づけられた。

そのみちくさ横丁にあった奥さまのバーを業態変更。〝米次郎〟と名付け、よりみちを息子さんに任せ立ち喰い蕎麦屋を営業。2008年~2011年頃の話。その時、お金を掛けて作った看板や電光掲示板の〝米次郎〟。捨てるのが勿体なくて、店主が復帰するとよりみちを米次郎に変えてしまった。

でも米次郎をググってみると必ずよりみちの名前が出てくる。40年近く営業してる店名だから当然なのだが・・・。

客にとったら店名なんかどうでもいいんだよ

82歳の店主は屈託なく笑う。確かにそうなんだけど・・・。

今は、息子さんとふたりで店を切り盛りとている。

 

注文したのは〝かき揚天そば〟(400円)にごぼう天(100円)の計500円。

いい感じで天ぷらが溶けてゆく。

蕎麦は定番の茹で麺。お湯にちゃっちゃとくぐらしてどんぶりに放り込む。この気取らなさが好きだ。

 この〝米次郎〟の蕎麦の美味しさに惹かれて大物芸能人も〝よりみち〟する。

 

自分は羽田空港から環七を通って帰ってくるのだが、その途中、南の交差点のところに、一軒の立ち食いそば屋がある。以前から、そのそば屋が気になっていた。
デビューした頃、三十年以上前からそこにあるのだという。最近やっと、ときどきそのそば屋に行くようになった。
そのそば屋に七十過ぎの親父がいるんですよね。きっとそば一筋なんでしょうね。イカ天、イモ天、春菊天・・・・・・いろんな天ぷらが並んでいるわけ。
実は今日もそのそば屋に行ってきたの。かき揚げとイモ天を入れて、あと卵落として・・・・・そうするとその親父が、はいよ、ってね

 

 長渕剛が「長渕剛論」(杉田俊介著。毎日新聞出版)の中の「そば屋の親父の歌」の章で書いている。長渕剛さんの深沢のご自宅はここから遠くない。長渕さんも米次郎と言わず〝よりみち〟としてますけど(笑)

 

【お店へのアクセス】

東急バス(森91) 新代田駅前 ⇒大森駅

宮が丘バス停⇒米次郎(よりみち) 徒歩1分