避妊去勢をする時は、その子は健康。
飼主さんは、そう思っている。
だから、麻酔で問題や事故が起こる事は考えていない。
健康、と言う事と、
麻酔を掛けた時に問題が出ない、と言う事は
イコールでない。
何の問題がないと思っていても、
麻酔下では、時折問題が出る。
麻酔を掛けた所で、または手術途中で心停止。
最悪である。
あってはならない事である。
だから避妊去勢でも、
術前の診察は当然として、最低限の血液検査も行う。
それでも、麻酔事故が起こる事はある。
麻酔中にモニターするバイタルサインは、
体温・脈拍数・心拍数・呼吸数・血圧・動脈血酸素飽和度・
終末呼気炭酸ガス濃度・吸入麻酔薬濃度そして心電図。
人の場合は、麻酔医が担当するが、
獣医の世界では麻酔医はいない。
これらの変化を、VTスタッフが記録していく。
獣医は、モニターの音や
VTスタッフが定期的に連絡する状態を聞いて判断する。
昔はモニターも十分でなかった時もあるし、
それに比べると、今は大分進歩した体制である。
VTスタッフが麻酔中のバイタルの変化に気が付かないと、
いくら監視機器が進歩してもどうしようもない。
VTなら誰でもイイって訳ではないのだ。
自ら勉強し、病院としても教育していかなくてはならない。
麻酔事故は、100%抑えられる物ではないかもしれない。
でも、出来得る限り100%になるように、
獣医もVTスタッフも努力をしなければならない。
麻酔前の準備。
麻酔中の注意力・集中力。
それでも事故が起きた時には、冷静な対応力。
安全に麻酔を掛けるには、
獣医もVTスタッフも、やるべき事をやらなくてはならない。
当り前の事を、当り前にやらないと、プロとは言えない。