病気になって目の前の景色が少し変わって見える。
いつもの道、いつもの空、変わらないはずの風景が
やけに静かで、
遠く感じる日もあれば、
やさしく包んでくれるような日もある。
周りの人の言葉や態度もよく見えるようになった。
本当の意味で心配してくれる人、少し距離をとる人、
やたらと軽くふるまう人。
それぞれの本音が、薄紙一枚はがれたみたいに、
透けて見える瞬間がある。
自分がどんなふうに見られていたのか、
どう扱われていたのか、
何を大事にして、何を見落としてきたのか、
そんなことを、ぼんやり思い返す時間が増えた。
「わたし、あなたの病気が治って復帰するまでスイーツやめる!願かけ!」
そう言ってくれた職場の仲の良い同僚の言葉が胸に残っている。
でも、そのあとに続いた言葉。
「あなたが戻ってくるまでスイーツをやめて、私、痩せて綺麗になって待ってるから!」
それを聞いた瞬間、
嬉しさと、何とも言えない気持ちが入り混じった。
悪気はないとわかっている。
明るく励まそうとしてくれたのも、きっと本当。
だけど私は病気になって、
薬の副作用で見た目が少しずつ変わっていくことになるから
「綺麗」とか「痩せる」とか、そういう言葉が
今の私には遠く感じられた。
励ましのつもりで言ってくれたのだとわかっているけれど、
その言葉の向こうにある
「比べられる自分」をふと感じてしまったのかもしれない。
やさしさと無邪気さが、
少しだけ刺さって、
痛かった。
そんな気持ちになったことを思い出した。


