iPodは結局一台きりだった。
WALKMANは、何度か壊れたり水没させたりしてしまったため、そのたびに代替わりしてきた。しかし、iPodはニュージーランドの中古屋で購入してからずっとそのまま使い続けていた。たぶん、WALKMANより人とのつながりがあったからなのだろう。
iPodの半分くらいは、友達からもらった曲が占めていると思う。ほとんどボーカロイドの曲で、そこから好きになった曲もかなり多い。
当時、動画サイトにある曲は、パソコンや携帯電話で見るか、ダウンロードして聴くしかなかった。ニュージーランドではパソコンも携帯電話も持っていなかったので、ダウンロードした曲が聴けるiPodはほんとに運命だと思っていた。
iPodを購入してから、自分の中で音楽の立ち位置が少し変わったと思う。音楽が、より身近になった。CD化されていないボーカロイドや、アマチュアの音楽を好んで聴くようになった。
もちろん、iPodも壊れそうになったことはある。買った当初はイヤフォンから音楽が流れてこなかった。友達と一緒に、日本食屋でもらった爪楊枝でゴミを掻き出してやっと聴けるようになった。その2年後ぐらいに、接続が悪くなった。イヤフォンのプラグを固定していないと音楽が途切れるようになった。画面が割れて取れたこともあるし、ロック画面にならなくなったこともある。
それでも、結局買い直すことなくiPodは使い続けていた。残念ながらもう使う機会がなくなったが、懐かしい曲を聴きたくなると、机から引っ張り出して充電し、イヤフォンを挿して聴いている。きっとずっと、いつか本当に壊れる日までこのまま使うんだろう、と、思っている。