皆さんおはようございます!涼風青葉です。今日は日曜なのですが将棋があります!そう、NHK杯二回戦とJT杯の決勝戦です!そして驚くことに両対局者とも山崎八段なんですね!!!
本日はJT杯の決勝局を取り上げようと思います!(ホントは両方とも取り上げたかったんですけど中の人がアーダコーダ)
棋戦:第38回日本シリーズJTプロ公式戦 決勝
場所:千葉・幕張メッセ
先手:山崎隆之 八段
後手:豊島将之 八段
☗2六歩☖8四歩☗2五歩☖8五歩☗7八金☖3二金
しかし今年度の豊島八段は凄まじいですよね!対局数が38局で勝数が28コ… 勝率にして0.824ですよ! A級と王将リーグ、王位リーグに所属しながらこれですからね… 2年前の天彦名人の勝ちっぷりも凄かったけど、今年の豊島八段も負けていませんよね!藤井四段との勝率争いは後世まで語り継がれるでしょう。けれど未だに無冠… どれだけ勝ててもここ一番で勝てない… とても失礼ですけど、それが私が持つ、豊島八段へのイメージでした。しかし今年は一味違います!順位戦も順調に勝ち星を挙げて、来期の名人戦の挑戦者候補筆頭です!あの地獄の王将リーグも勝ち抜けて挑戦者になりました!叡王戦も決勝トーナメント進出が決まっています。これは豊島名人叡王王将の可能性も十分にありますね!今まで大一番で中々勝てなかった分、鬱憤を晴らすかのような活躍に期待です!
対する山崎八段は例年通り、と言った感じでしょうか。ただ、このJT杯では三浦九段、天彦名人、羽生棋聖と名だたる強豪を破ってでの決勝戦です。これはなんとしてでもJT杯を勝ち取りたいですよね!
さて、話を局面に戻しましょう。戦型は相掛かりですね。山崎八段の得意戦法を豊島八段が受けて立った、と言った感じでしょうか。続きを見てみましょう!
☗3八銀☖7二銀☗3六歩☖8六歩☗同歩☖同飛☗8七歩打☖3六飛☗3七銀☖3四飛☗6九玉☖9四歩☗6八銀☖9五歩☗4六銀☖6二玉
横歩取らせはポナンザも多用する作戦ですね。しかしあくまで後手番で、です。先手で横歩を取らせるのが山崎流ですね!先手の手得と後手の歩得、どちらが勝利に結びつくか、と言ったところでしょうか。戦いが長引けば長引くほど後手の歩得が活きるので、先手の指し回しに注目です!
後手はひねり飛車のように飛車を8筋ではなく左辺で使い、玉は美濃囲いで戦うという構想なんでしょうか。そうなら9筋の位が活きてきそうではありますね。
対する先手の玉型は一見窮屈に見えます。山崎先生らしいと言えばらしいですが… とてもじゃないけど「この局面を持ちたい!」とは思えませんね。後手の飛車も直通しています。後手模様良し… でしょうか。しかしこのような”チョイ悪”で勝ち続けているのが山崎八段です!ファンが多いのも頷けます!
☗6六歩☖1四歩☗7六歩☖4二銀☗7九玉☖7一玉☗7七角☖4四歩☗8八玉☖4三銀☗1六歩☖5四銀
☗8六角☖3一角☗6七銀☖4五歩☗3七銀☖8二玉
駒組合戦ですね!しかしここでも先手は細心の注意を払う必要があります。右金が動くことが出来ず、☖4五歩を突かれると銀を引かなければなりません。そこで☗8六角と後手陣に揺さぶりをかけました。ここで☖4五歩なら☗3五銀☖同飛☖5三角成で王手飛車がかかります。しかしこれは☖3一角で何も問題がありません。結局先手は☖4五歩を突かれ、作戦負けに陥りました。
☗5六歩☖4三銀☗5五歩☖5四歩☗3一角成☖同金☗5三角打☖3二金☗2六角成☖5五歩☗3六銀☖5四飛☗4五銀☖5一飛☗5三歩打☖3四歩☗3八飛☖3三金
『歩越し銀には歩で対抗』の格言通り先手は5筋の歩を伸ばします。そこで☖4三銀が柔らかい一着でした。先手には有効な手が無いから銀を立て直す時間があるということなんでしょうね。放っておくと☖4四銀から☖3五銀で先手が困るので、5筋の位を取ってなんとか手を作ろうとします。角を替えて馬作りを目指しますがせっかく取った位も取り返され、おまけに後手は二歩得です。ここでも後手がやれそうに見えますが…
☖3四歩は☖3三桂の銀取りを狙った自然な手ですが、☗3八飛が機敏だったと思います。先手が☗3四銀から銀交換に成功すると☗6二銀と打つ手がとても厳しいです。これは先手勝ちと言っても過言では無いと思います。だから後手は☖3三金と悪形を強要されました。
う〜ん、ジリジリとした駒組が続きますね… 後手の陣型はまるでゴキゲン中飛車です。ここの部分だけ見て相掛かりと答えられる人は何人いるんでしょうか(笑)しかしこういうスローペースな戦いになると後手の端の位が活きそうな気がします。持ち歩の差も大きく、まだまだ後手模様良しには変わらないでしょうか。
☗3六銀☖8三歩☗4六歩☖3二金☗5八金☖3三桂☗2八飛☖6四歩
☗4七銀☖5四銀☗3六馬☖4五歩打
先手の狙いは☗4五歩〜☗4六歩と馬筋を活かして4三の銀をいじめることです。しかし☖6四歩が入ると☗4六歩には☖5四銀〜☖6三銀と手順に玉を固く囲えるんですね。もちろん山崎八段はそんなこと百も承知、☗4七銀と引いてツノ銀雁木と呼ばれる好形を築きました。☗2四歩が成立すると歩切れが解消出来るので先手が指しやすくなります。だからここで後手は動く必要があるんですね。
☗2四歩☖同歩☗同飛☖4六歩☗同銀☖4五歩打☗3七銀☖2三歩打☗2八飛
先手は念願の歩を手に入れましたが、後手が快調に攻めてるように見えます。途中の☖4六歩は仮に☗同馬で取ってしまうと☖1三角と打たれてしまい、いい位置にいる馬が消される上に右銀が浮き駒になります。結局先手は右銀が元の3七の地点に戻され、4筋の位まで取られてしまいました。苦難の時間が続きます。
☖6五歩☗4七馬☖4四角打☗6五歩☖5六歩☗7七桂☖6六歩☗5六銀☖1五歩☗同歩☖同香☗同香☖5五歩☗6七銀☖同歩成☗同金☖5六歩☗同金☖5五銀☗6九香打
先手はすっかり防戦一方です。6五の歩を取ってしまうと後手から棒銀の要領で5筋を突破されてしまいます。だから取らずに馬の力で6筋を支えますが、☖4四角打が先手の玉を睨みながら攻めを継続させる好手でした。☖5六歩の間接王手がとても気持ちいいですね!後手は更に攻めを続けるため、端から歩の入手を図ります。☖5五歩打が狙いの一手です。銀香交換で後手がやれそうかな… そんな時に☗6七銀が指されました。
一見するとタダやんです。しかし6筋の拠点が無くなると後手の攻めは続かず、歩損と先手の香成のみが残ります。こういう柔軟な発想はどこから来るんでしょうか… 棋風と言えばそれまでですが、この手を指せる人はどれくらいいるんでしょうか。山崎八段の才能が光った一着です。後手はなんとか攻めを繋げようと再び角筋を通しながら5筋の歩をぶつけました。これを☗同歩は☖6五銀で後手の攻めに勢いがつきます。
後手の☖5五銀は仕方無く… と言ったところでしょうか。先程も書きましたが、後手は攻めが止まると大変です。先手は5筋を受けずに6筋からの反撃を目指します。
☖5六銀☗同歩☖7四歩☗4八銀☖7三桂☗6六銀打☖4六歩☗同馬☖4五銀☗5五馬☖同角☗同歩☖5八角打
☗4八銀は遊び駒を主戦場である5筋に利かせた、とても味の良い手に見えます!後手は本来は守備駒である8一の桂を跳ねて攻めの継続を狙います。5〜6筋の攻防が勝敗に直結しそうですね。ここで少し形勢を見てみたいと思います。
駒の損得は金と香歩の交換があり、後手がいいと思います。しかし歩切れなので細かな手は指せません。
駒の働きは攻め駒が急所に効いてる後手に部があるでしょうか。美濃の端歩も、終盤の一手争いでとても活きてきそうです。先手は先程の☗4八銀が邪魔して飛車が守備に働いてません。不思議ですね… 筋の良い手も、時間が経てばタダのお荷物。それどころか現状は邪魔駒です。しかし5筋と6筋の位を有効に活用出来ればなんとか… と言ったところでしょうか。
手番は攻めてる後手にあります。先手は相手の攻め駒が自陣にあるので受ける必要があります。
以上のことから後手有利と言えそうです。何より☖5八角が痛すぎます。先手は攻めのてがかりも無いのでしばらくは苦心の受けが続きそうです。
☗4七角打☖7六角成☗7五歩☖同歩☗7四歩打☖4六歩打☗7三歩成☖同銀☗6四歩☖4七歩成☗6三歩成
先手は自陣に角を打ち込みました。香車を取られてしまっては仕方無いとはいえ、こんなところに角を手放すのは勿体無いというか、指しづらい手ですよね。もちろん後手はこの角を相手にせず、☖7六角成と歩切れを解消しつつ馬を作ることに成功しました。次に☖4六歩☗3八角☖5六金打とし、6六の銀を取ってしまえば飛車も捌けてくるので後手勝勢です。だから先手はここで反撃を開始します!☗7五歩と後手の桂頭に狙いをつけました。この歩を手抜いて☖4六歩と打つ手も有力だったと思います。以下☗7四歩☖4七歩成☗7三歩成☖同銀と進んで先手がどう指すかですが… 一度は☗3四歩と叩いてみたいですね。本譜は堂々と☖同歩と取りました。先手は桂馬をむしり取って、☗6四歩と突き出します。角を逃げていては勝てないと判断したんでしょうね。まだ後手の攻めの方が早いでしょうか。
☖6八歩打☗同香☖5八と☗5九銀☖同と
歩で香を釣り上げたことで☖6八ととしたときに金に当たるようになっているんですね。凄く綺麗な手順です。後手のと金攻めが間にあえば先手はひとたまりもありません。というわけで遊んでいる銀を捨てて、と金の働きを弱めに行きます。
…… 指し手の意図は理解出来ます。しかし☗5九銀を限られた時間で思いつく発想力と、実際に指す決断力が少なくとも私にはありません。これが山崎流の勝負術、勝負はまだまだこれからです!
後手のと金攻めを緩和出来たとは言え、駒割は銀金角と桂香の交換で明らかに先手が損です。ここで回ってきた手番をなんとか活かしたいところですね。
☗7三と☖同玉☗6五銀☖6九銀打☗8九銀打☖7八銀成☗同銀☖6九と☗8五桂打☖8四玉☗7九歩打
ゆったりとした中盤とは打って変わって激しい終盤戦です。凄い攻め合いですね… 先手は一度桂馬の王手をしてから☗7九歩打で☖7九角打からの詰めろを消しました。替えて☗6九銀としてと金を払う手も自然に見えますが、これには☖7七馬と切る手があります!以下☗同玉☖7六金☗同銀☖同歩☗同玉☖7五歩☗6七玉☖7六銀打☗5八玉☖5五飛☗5七歩☖4六桂☗4九玉☖8五銀として後手は安全勝ちが狙いそうです。(下図)
途中の☖4六桂を利かせないと☗7三角の王手飛車があり、それでも優勢とは言え避けたい順です。
☖6八と☗7三銀打☖9四玉☗6八飛☖6七歩打☗4八飛☖6五馬☗9六歩☖同歩☗9五歩☖同玉☗9六香☖同玉☗9七歩☖9五玉☗4五飛☖同桂
勝負も大詰め。☖7五馬は☗同桂と取ることが出来ません。王手飛車の筋があります。先手は少しでも逆転の目を残すために9筋の歩を切って、4五の銀を食いちぎってとイヤミイヤミで迫ります。本局は山崎八段の粘りや受けの手が目立ちますね。悪い局面でも泥臭く… それが功を奏したのでしょうか。今まで完璧に近い指し手を続けてきた豊島八段に、この局面でとうとうミスが出てしまうんですね。☖4五同桂が大悪手。飛車に構わず☖6八銀☗9六歩☖同玉☗9七銀打☖9五玉☗9六歩打☖9四玉 として明らかに先手が1枚足りずに後手勝ちだったと思います。
こういう逆転劇は人間の将棋ならではですね!人間、ミスはつきものです。みんながみんな、コンピュータのように正確に指すことが出来たらプロ棋士は不要でしょう。ゼヒ一度、この棋譜に限らず様々なプロの先生の棋譜を並べて欲しいです。どうしてこの手を指したのか… どういう構想を目指すのか… 悪い将棋はどのように粘り逆転を目指すのか… コンピュータに学ぶのもいいですが、今まで棋士が積み上げてきた証を蔑ろにするようなことがあっては絶対にあってはならないことだと青葉は考えます。
☗9三桂成☖8七馬☗同銀☖4八飛打☗7八角打☖同龍☗同銀☖8四香打☗8七歩打 まで後手投了
☗9三桂成が後手玉の退路を塞ぐ手筋ですね。以下先手玉は詰まず、後手玉は必死です。
本局は相掛かりの出だしから、模様の取り方が難しい中盤戦で巧みに指した豊島八段がペースを握る展開が最終盤まで続きました。しかし二回の銀捨てで後手の攻めを緩和し、相手玉に妖しく迫り、ギリギリまで勝負を諦め無かった山崎八段に勝利の女神が微笑んだ、そんな一局だったのでは無いでしょうか。山崎先生はJT杯初優勝です!このままA級へと駆け上がって欲しいですね!負けてしまった豊島八段ですが、王将戦と順位戦、叡王戦と重要な対局が続きます。タイトル戦での活躍に期待です!
拙い文でしたが、最後までお付き合いありがとうございました!
お借りした棋譜: https://shogidb2.com/games/72de72fdb7726ac584e6b217fad1f780723ce336#lnsgkgsnl%2F1r5b1%2Fppppppppp%2F9%2F9%2F7P1%2FPPPPPPP1P%2F1B5R1%2FLNSGKGSNL%20w%20-%202
【涼風青葉】














