ゴラン高原はシリアとイスラエルの間に位置する標高1,800mの高地で、シリアの領土であった。それが1967年の第3次中東戦争で勝利したイスラエルが占領し、1981年に併合するところとなった。

しかし、国際社会は戦争による領土拡大は国際法違反であるとして、イスラエルの主権は認め ずに今日に至っており、シリアとイスラエルの兵力切り離し監視軍として、日本政府も1996年~2013年まで自衛隊を派遣している。
ところが、突如として米国トランプ大統領がゴラン高原の主権をイスラエルに認めると発言し、イスラエルのネタニヤフ首相への援護射撃を行ったのである。これに対して、世界各国から一斉に反発の声が上がっており、中でもEU諸国やロシア、アラビア諸国は一致して強い警鐘を鳴らしている。

トランプ大統領がこの時期に問題の発言をしたのには幾つかの理由がある。一つは4月9日に予定されているイスラエルの首相選挙、いまネタニヤフ首相は収賄の罪に問われている。また、一方で強力な政権ライバルが現れている時だけに、トランプ大統領の発言はネタニヤフ首相にとって追い風、渡りに船である。
更には、トランプ大統領が来年の米国の大統領選挙を有利に戦うために、イスラエルを支持するキリスト教福音派やユダヤ系ロビー団体に媚を売るために他ならない。また同時に、中東で影響力を強めているイランの動きをけん制するためでもある。

いずれにせよ、これまでのトランプ大統領によるイスラエル寄りの発言や政策の実施が、中東だけでなく世界情勢全般に混乱を引き起こして来たことは事実である。
今年の1月、シリアに派遣されているイラン軍からイスラエルにミサイルが発射され、直ちにイスラエル軍から反撃が行われている。これは事実上の軍事衝突である。

特に、今回のゴラン高原におけるイスラエルの主権を認めるとする発言は、イランとイスラエルの関係が悪化して来ているタイミングだけに見逃せない発言でもある。
トランプ大統領の発言は、中東における最悪のシナリオである「シリア対イスラエル」戦争の火種をまき散らすことになり兼ねないが、そんな大統領を選出したのは米国国民でもある。
