最近、体温がおかしい。頭もだ。
奴を見るといきなり暑くなるし、見てるだけでおかしくなりそうだ。いきなり声なんてかけられたときにはくらくらしてくる。ひどく、虜にしたくなる。
…なんで僕がこんな事で悩まなくちゃいけないんだ。
太陽の国の王位第一継承者、サリエ王子殿下はナイトについて大変悩んでいた。
「王子ぃ。それって恋なんじゃないんですかぁ?」
特長のあるしゃべり方で喋るのは太陽騎士隊紅一点のシャワーズのバブリスだ。
「…恋?馬鹿なことを言うな。だ、大体僕とナイトは男同士だぞ!」
バブリスの目がきらり、と光る。詰まるところこの女子は思考が少々ゆがんでいるのである。
「だ・か・らぁ!素敵なんじゃないですかぁvv王宮内で繰り広げられる禁断の愛っ!しかも相手は最大の敵国の兵の将を努めていた…!もうこれ以上のシュチュエーションはありませんよぅ、王子!私は全面で応援しまうすよぅ!…本にしたらどのくらい売れるかなぁ…。」
と、悶々と自分の世界に入ったバブリスを後にして次はもっとまともな奴に聞くことにした。女だと思ったから聞いたのに、バブリスは大夫ハズレだったみたいだ。
次ぎに聞く相手は城内1のプレイボーイ、サンダースのライキである。
「ラ、ライキ…。バブリスにこういうのは…こ、恋って言われたんだ。お前なら…その、経験豊かだろう?お、教えてはくれまいか…。」
何故こんなに緊張して聞くかというと、このライキとか言うのは女だけではなく男でもくどく人物として有名だからだ。良くバブリスのスケッチ対象になっているらしい。
サリエが聞くやいなや、ライキはさりげなく質問者を壁の隅へと追いやって包み込むような大成をとるために派手に壁に手をついた。
「王子…。俺、王子に気があるの、知ってますよね?王子がもし気持ちに答えてくれるなら…そんな淡いもんじゃなくて、もっと…本当の恋を教えて差し上げますよ。」
と言いつつサリエの手首をつかむ。心なしか顔も近づいてきたようだ。
絶体絶命。これじゃナイトがどうのこうの前に自分が危ない。
(だ、誰か助けて…!)
そう思った瞬間、派手に扉が開いた。
「ヤッホーライキー!なぁ、双六やろうぜ!」
太陽騎士隊の二番手、ファイラだった。
「あり?取り込み中?」
サリエはライキの脇をすり抜けて、小首をかしげるポーズをしたまま立っていたファイの手を取って飛び出した。
「…た、助かった。ファイ、来てくれてありがとう。」
(ファイはまだあんまりにも子どもだし…。こういう話をしても無駄だろうな…)
そう思ってファイの手を握り返すと純粋な目がのぞき込んでいていった。
「…ナイト様のこと気にしてるの?王子。」
思わず咳き込む。子どもの鋭さは侮れない。
「なっ…なん…!」
「だってさー。ナイト様がぼやいてたよ。何か王子が出会ったときよりもよそよそしいって。」
なんだ、意地悪しているからよそよそしいとかの類かと心の中でつぶやく。
「王子、もうライキは来ないと思うから…。僕ナイト様と遊んでくるね!」
ファイは無邪気な笑顔でもう一つ付け加えた。
「好きな人にはちゃんと好きって言わないと辛くて悲しくなってくるってママがいってた!」
「…!…」
好きな人、か。
(総合的に言うと…これは僕がナイトのことを好きって事なのか…)
悔しいけどそうなのかも知れない。図書館で読んだ小説とかにあった気がする。
(でも…奴は僕のことなど愛してはいまい。)
なんの心も無しに歩いていくと、王宮の一番上の天のテラスへと辿りついた。星空が見えるからそう付けられたが、一番質素なテラスである。
そこの一番良く星が見える場所に、今では良く見慣れた姿があった。
ふいに、体温が上がる。
(ナイト…。)
声をかけようか、かけまいか。悩んでいるうちに向こうから声がかかった。
「あれ?王子、来ていたんですか?」
もう、駄目だ。心臓が破裂しそうだ。
「こっち来ます?…今日は綺麗な星空ですよ。」
馬鹿。お前の所なんかに行ったら倒れてしまいそうだ。
ナイトは独り言のようにサリエに話しかける。
「ここ、好きなんです。星がよく見えて。
俺、星は凄く好きなんですよ。何か凄いじゃないですか。何万年も、何億年も前の光だなんて。
自国でも良く恋人と見てたよな。と言っても、まぁ恋人はもういないけれど。」
恋人、と言う言葉にちくりとくる。
何だか何もかもが分からなくなって…頭がぼおっとしてくる。星空を見上げながらサリエはつぶやいた。
「僕は…星、よりは…星を見て楽しそうに笑うお前の顔が好き、だ。
いつもあんまり笑わないお前が笑う姿が好きだ…。
お前の声も、仕草も見てるたびに暑くなってくる。どうしたら良いのだろう。
バブリスやみんなに聞いたらそれは僕がお前に恋してるからだって…言うんだ。」
「なぁ、ナイト。どう思う?」
おずおずとナイトの顔を見上げると、彼は星ではなく自分を見つめていた。急に恥ずかしくなって顔を下げようとすると、すっと手がほおに触ってきた。
「本当、ですか。」
また見てみると目が開いている。赤くて綺麗な目が自分を見つめている。
「…ああ。」
先ほどのライキのように顔が近づいてきた。耳元で囁かれる。
「俺で…良いのか。あんたみたいな綺麗な人が。本当に俺なんかで。」
先ほどの丁寧語はなくなり幾分荒々しさが増す口調で。
「僕はお前が思っているようなものじゃない。もっと浅はかで…ど、どん欲なんだ。お前を見るとどうしようもなくなる。自分だけのものにしたくなる。」
素直に言うと少しすっきりした。これが、自分の気持ちだったのか。
ナイトは今度は耳元ではないが、顔をもっと近づけていった。
「…好きになってもいいですか。サリエ王子殿下。」
「…僕の台詞だ、馬鹿。」
サリエが言うとナイトは軽く口づけてきた。
満天の星のような味だった。
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後日、ファイに会話収集をさせ妄想をふくらませたバブリス女史が、二ヶ月ぶりに腕をふるい「闇と太陽」という名の本を書き上げ、その筋の国民たちに売りさばいた、という。
サリエとナイトがそれを知るのはもう少し先のことだ。
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1.好きになってもいいですか
配布元→[リライト] http://lonelylion.nobody.jp/