今日は、生田耕作愛蔵館5の豆本「四畳半襖の下張」のご紹介ですが、その内容の前に、『四畳半襖の下張事件』についてご説明したいと思います。


既に、ご存知の方も多いと思いますが、『四畳半襖の下張事件』とは、月刊誌 面白半分 』の編集長をしていた作家 野坂昭如 は、永井荷風 の作とされる戯作 四畳半襖の下張 』を同誌1972 7月号に掲載した。

これについて、刑法 175条のわいせつ文書販売の罪に当たるとされ、野坂と同誌の社長・佐藤嘉尚 が起訴された。

被告人 側は丸谷才一 を特別弁護人に選任し、五木寛之 井上ひさし 吉行淳之介 開高健 有吉佐和子 ら著名作家を次々と証人申請して争い、マスコミの話題を集めたが、第一審、第二審とも有罪(野坂に罰金 10万円、社長に罰金15万円)としたため、被告人側が上告 したが、最高裁判所 1980(昭和55)11月28 に上告棄却し確定した。


発売頒布禁止処分となった「面白半分 1972年7月号」です。



掲載された「四畳半襖の下張」原文の一部写真です。

文体が古く難解で、とてもわいせつ性を感じるとは思えませんが、いかがでしょうか。(文字が不鮮明でスミマセン)



最高裁判所 は、1980年(昭和55年)1128 、第二小法廷判決にて、チャタレー事件 判決を踏襲する形で、そのわいせつ性の判断について下記のように判示した。「文書のわいせつ性の判断にあたっては、当該文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度とその手法、右描写叙述の文書全体に占める比重、文書に表現された思想等と右描写叙述との関連性、文書の構成や展開、さらには芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度、これらの観点から該文書を全体としてみたときに、主として、読者の好色的興味にうつたえるものと認められるか否かなどの諸点を検討することが必要であり、これらの事情を総合し、その時代の健全な社会通念に照らして、それが「徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」(前掲最高裁昭和三二年三月一三日大法廷判決〔チャタレー事件 判決〕参照)といえるか否かを決すべきである。」


次回は、生田耕作愛蔵館5の豆本「四畳半襖の下張」の内容をご紹介致します。(摘発された本の内容と同一かどうか、読み比べていませんので、予めご了承願います。)


ではまた。