先日、所謂保守派の講演會に付合で顔を出して、久しぶりに食料自給率が低いのは問題だといふ間抜けな議論を聞かされた。問題なのは食料安保であつて自給率ではない。


實は食料自給率百パーセントは、食料安保を意味しない。自給率が百パーセントで國民の大半が餓ゑてゐる國は少なくない。さうした國の多くは國家にとつて大切な兵器などを購入するため飢餓輸出してゐる。


かうした國のすべてが獨裁國家な訣ではない。民主的な議會を持つ國でも、飢餓輸出は起こるのである。なぜなら、農業が主な産業の國は、農産物を輸出する事でしか外貨を獲得できない。


軍事豫算は最低限に抑へたとしても、農作をするためにはエネルギーが必要で、江戸時代ぢやあるまいし、全部を人や牛や馬で作業する訣にもいかない。トラクターを動かすにはガソリンが要る。


これらのエネルギーを自國で賄へなければ、外貨で買ふしかない。そのための輸出品が農作物しか無ければ、國民が餓ゑてゐても飢餓輸出するしかない。しなければ現在より多くの國民が植ゑる事になる。


日本の隣國に、外國に食料を握られるのを嫌つて食料の自給を國家目標とした國がある。北朝鮮である。さうした歪んだ經濟政策は、當然な事ながら自國民を大量に餓死させた。


もういい加減に、食料自給率など問題にするのはやめよう。眞の問題は國民の食糧安保であり、一億を超えた國民を日本列島の食料だけで養ふことは、若し可能だとしても經濟的にも政治的にも合理的ではない。