アヘン戦争とイギリス議会」といふ記事を、以前に書きました。議會に阿片を賣るために艦隊を派遣して呉れ、とは言へないので、阿片商人が苦勞した話です。


結局、イギリスの阿片商人達は、かう主張しました。清王朝が自由貿易を阻害してゐる。特定の商社にしか貿易を許してゐないのだから、間違ひではありません。


では、なぜ自由貿易を阻害する事が、艦隊を派遣する理由になるのでせう。その根拠となつた經濟理論を比較優位の法則と申します。


簡単に説明すると、自由貿易はそれを行ふ雙方の側に利益をもたらす、といふ理論です。細かい理窟は絶對優位比較優位の説明からしないといけないので割愛します。


阿片商人は、イギリスと清國の兩國の人民の利益になる自由貿易を清國政府が障壁で阻害してゐる、と主張したのです。この理由づけでも、現代では艦隊派遣は無理だと想ひますが。


ここで御注目いただきたいのは、イギリス人だけでなく清國人の利益にもなるといふ主張です。イギリスだけが儲かる、ではないのです。巧妙ですね。


大英帝國と言へども議會があるから、阿片を賣らせてくれないから武力行使する、といふ訣にはいかないのです。そして自由貿易の正しさを證明する理論が比較優位の法則といふ訣です。


こんな話を想ひ出したのは、三橋貴明氏が御著書で「世界経済が収縮してゐるときには比較優位の法則は成り立たない」といふ意味の事を御書きになつてゐらしたからです。


バイが小さくなれば比較優位で安い粗惡品を賣る餘地がなくなる、といふ理解で良いのでせうかね。