受験英語に熟達するために
これから大学受験に必要な「英語」に関する知識・技能を書いていこうと思う。読者として想定するのは高校生、特に高校1年生である。もちろん、2年生・3年生が読んでも役立つものにしたいし、中学生が読んでも有意義なものとなる自信はある。まずはじめに押さえておきたいことは、受験英語を学習する目的は、「外国人とコミュニケーションする」ということではない、ということである。その目的は第一に、大学受験で「合格」を勝ち取ることである。その目的の第二は、知力・思考力を鍛えることである。その目的の第三は、国語(日本語)に対する理解を深めることである。その目的の第四は、「大人になってから使える英語」の基礎を学ぶことである。その目的の第五は、英語を母語とする人々の「思考方法・型」を知ることである。したがって「何となくこんな意味」とか「だいたいこんな感じ」などの曖昧な理解は排除される。一つ一つの英文に対して、完璧な理解が求められる。例をあげよう。一つ目は中学校1年生1学期に習う英文から。I have a book.日本語訳:「私は本を持っている。」格単語の訳I= 「私(は)」have =「持っている」a = 「一つの」(訳さない場合が多い)book = 「本」さて、各単語の訳をつないでも、日本語訳:「私は本を持っている」という文はできない。「を」がないからである。「を」は英文のどこにもない。『英語にはないけど日本語にするには入れないと不自然だから』と、思た人も多いだろう。これが「曖昧な理解」である。受験英語に習熟し、大学に合格したいなら、英文にないものを訳してはならない。英語と日本語は完全に対応していなければならない。ということを学習の基本姿勢としなければならない。上のような曖昧な理解のまま学習を続けると、天賦の才能がない限り、遠からず英語の成績は低下してしまう。(進学校と言われる高校ではクラスの約10%の生徒が、英語に関する天賦の才能に恵まれている。そのような人は、こんなサイトに来る必要はない。)『have は「~を持っている」という意味だから』と考えた人もいるだろう。しかし、Yes, I have .とう英文があったら「はい、私はを持っている」とは訳さず、「はい、私は持っている」と訳すだろう。have の訳が曖昧になっていることがわかるだろう。この「を」の謎は、後日、解明することにする。今日はもう一つ別の例を見てみる。Pleas make yourself at home.(グアム島でホームステイしたときに、ホストファミリーの奥さんから生で聞いた。「ほんとに言うんだ!」と思ったことを覚えている。)標準訳(映画の字幕に出るような自然な訳)は「どうぞ、おくつろきください。」pleaseは一応「どうぞ」に対応するが、make yourself at homeは、各単語の訳が、「おくつろきください」に全く対応しない。受験英語では、なぜ、この標準訳になるのか、説明できなければならない。各単語の訳に基づいて、日本語を構成してみよう。make = 「作る」yourself = 「あなた自身」(再帰代名詞:命令文の主語 you と同じ人間)at = 「~に」(場所を示す前置詞)home = 「家」(建物そのものではなく「自宅」という意味を含む)したがって日本語訳は、「どうぞ、あなた自身を家(自宅)で(の状態)に作ってください」(前出の「を」及び「(の状態)」がなぜ付加されるのか、については、後日くわしく解説する。)『なるほど』と思っていただけただろうか。「自宅」では誰でも緊張をゆるめてくつろぐことができる。「ここでも同じようにしてくださいね」というのが英文の意味である。各単語の意味を確認し、文の訳・意味として再構成し、標準的な日本語との対比を考える、という作業は、高度な知的活動である。この英文を考えることを通じて、私たちは知らず知らずのうちに、知力・思考力を鍛えられる。また、なぜ英語では、Pleas make yourself at home. という表現になり、日本語では、どうぞおくつろぎください、という表現になるのか、を考えることは、国語(日本語)のより深い理解につながる。英語を母語とする外国人の思考方法・型を考えるきっかけともなる。受験英語を学ぶ目的は、英語でコミュニケーションすることではない。受験英語を学ぶ目的は、大学受験において「合格」を得ることと、幅広い知識・教養、知力・思考力・洞察力などを獲得することである。そのためには、曖昧な理解を排除し、各英文を正確に読み、完璧に理解することが必要となる。英文を正確に読み、完璧に理解するためには、「英文法」の学習が求められる。今後、「英文法」について、書き重ねてみることにする。