また終戦の日を迎えた。
僕らは学校で、悪い「軍部」が暴走して戦争を起こし、日本人もアジアの人達も皆ひどい目にあった。それで戦後は平和主義の憲法をつくった、と教わった。今もそれは、大筋では間違っていないと思っている。
いっぽうで今の政府や国民には、「日本は悪くなかった、あれはアジアの平和を守るためで、侵略ではなかった。日本軍も立派だった、その名誉を汚すような奴はサヨクか中韓の回し者だろう」などと考える人が多くなっているようだ。この人達の論は、「自分たちの国は正しい」という結論が先にあって、それを支持する材料を集める感じがある。それにこういう論は、戦争を直接に知る世代が少なくなるにつれて広がってきたところもある。
では、ほんとうのところはどうなのか。
僕が戦争のことについて本当に考えるようになったのは、911テロへのアメリカの報復攻撃からだった。飛行機がハイジャックされてビルに突っ込んだことの「報復」として、なぜか遠いアジアの最貧国アフガニスタンが爆撃され、さらにその後、あまり関係なさそうなイラクも攻撃された。日本はそれに賛成し協力した。
テロという犯罪行為に対して、犯罪者を処罰するのが当たり前だろうに、アフガニスタンやイラクという「国」を攻撃し、政権を転覆させ、アメリカの意のままになる政権を据える。この様子を見、アメリカ政府高官の関わる会社が「戦後復興」を受注したこととか、イラクが産油国でアフガニスタンには石油パイプライン計画があったことなどを知るうち、「この戦争はビジネスではないか?」という疑いが生じてきた。それで、「では日本の戦争はどうだったんだろう」と調べ始めた。
いろいろな本を読んだ。いろんな人が、いろんなことを言っていた。軍部の独走、天皇が果たした役割、メディアの扇動、世界大恐慌による閉塞感と青年将校の決起、欧米の帝国主義への対抗上やむをえなかったとする説、日露戦争のときに道を誤ったとする説・・・。どれもそれぞれに、そうだろうなと思い、シンプルに「これが原因」と言えない複雑さに、頭が混乱した。
そんな中で出会った、薄い一冊のブックレットがあった。戦前生まれのドキュメンタリー映画監督・高岩仁さんの
「戦争案内」。読んでみて、目からウロコだった。226事件にカネを出していた財閥の存在。満州の農作物をめぐる利権。そこには、日本の「あの戦争」も、裏にはやはり市場開拓や資源獲得を狙った大資本の画策があったことが、データとともに書かれていたのだ。
著者はフィリピンの歴史学者に、こう言われたという。
「日本の歴史書や歴史教科書をたくさん調べましたが、今まで日本が行なって来たアジアに対する侵略戦争の張本人をすべて軍人や政治家として描いています。しかし基本的に軍人や政治家は金で操られた操り人形の役をしたにすぎません。戦争を必要として計画して金で軍人や政治家を操って莫大な利益を上げてきたのは、財閥・資本家たちですよ。しかし日本の歴史書には、このことはどこにも書いてありませんね」と。
この小冊子を読むと、日本の戦争もビジネスだったとわかる。そして今、集団的自衛権容認や武器輸出容認などの動きが、経団連の後押しで行われている意味も見えてくる。敗戦で憲法は変わり、日本の支配層の上にアメリカが君臨するようにはなったけれど、財閥や官僚や政治家などの支配層も、天皇の権威で統合するやり方も、実は変わらなかった。過去と今は、つながっているのだ。
高岩さんは数年前に亡くなり、彼の映画もあまり上映されなくなり、この「戦争案内」も入手困難になった。それでも、図書館横断検索(http://calil.jp)で探せば、いくつかの図書館には置いてあることがわかる。ぜひ探して、読んで、そしてその内容を広めてほしいと思う。
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「戦争案内」の紹介記事(書いてる人は、なんか左翼系の党の人らしいけど^^;)