少女の名はアリス。

彼女は好奇心旺盛な女の子。

普段からよく家を抜け出して

こっそり街の中を出歩いていました。




ある日のことでした。

「今日は少し遠くまで探検しに行ってみようかな?」








彼女は自分の家から少し離れた森の奥に入ってしまいました。そこは一度入ると出てこれない『迷宮の森』

と住民達の間ではちょっとした噂の森でした。


すると声が聞こえてきたのです。


「―――彼女をさがしてーー。」


「え、誰...!?」

驚いたアリスは後ろを振り返った。でも姿は何処にも見当たりません。


「きっとアナタなら、見つけられるわ。」


「アナタ......誰なの?どこにいるの?」



「来て...こっち……。」


アリスは困惑しながら、声が聞こえる方へ進んでいくと、そこには小さな洞穴に辿り着きました。

すると、突然洞穴の中から黒い影が現れたと思うと、中から吸い込まれるように渦の中へ引きずり込まれてしまいました。



―――スッ…―――



その洞穴はワンダーランドという場所に繋がっていました。だが、この時の彼女はまだこの先で何が起ころうとしてるなんて思いもしません。


ワンダーランド

その場所に描かれるのは不思議な場所...。


物語はアナタの手によって導かれる。


旅の始まりです!







私の名前は、雛月 結衣。

彼女は夢を見ていた。




「…本?」


夢の中で最初に現れたのはたった一冊巨大の本。

空中に投げ出されていた私は、呆然と立ち尽くしていると、突然強い風が吹いてきて両腕で顔を覆い隠した。



「何?…何が…起きて…」






ーースッ…パッ…ーー






本は次々とページが開き、白紙のページに止まると中から渦巻状の黒いドームが現れ、私は引きずり込まれてしまった。


気がつくと…いつの間にか、真っ暗な空間に何処かも分からないまま、身動きがとれないでいた。


「アナタなら、きっと、私を見つけてくれる。」


頭に響いてきたのは女性の声。


「誰!?...ここはどこなの?」



その声の持ち主は何処にいるのかさえも分からなかった。照らされてるのは自分の身体だけだった。

自分に何が起こってるのか、頭の中は真っ白になって

泣きそうになっていた。



「落ち着いて…。アナタは、これから色んな事に直面するかもしれない…でも、アナタには人を寄せつける素質がある。きっと、彼等となら乗り越えられるわ。」



「彼等って…誰のこと?」


「会えば分かるわ…。」

そう言い残すと、声は途切れてしまいその言葉が最後だった。



すると白い小さな光が近づいてきて私は眩しくて目を開けてられなかった。何がどうなってるのかも分からないまま、私は気を失った。



「…ぇ…。…じょうぶ?…」

遠くで声が聞こえる。。。



「もーう…起きて。ねぇってば!」

体を揺さぶられ目を覚ますと小さな女の子が心配そうにこちらを覗き込んでいた。



「良かった!目を覚ましたみたいね!」

何処かで見たことある格好...。そう思いながら彼女を眺めていた。



「・・・ここは?」



気がつくと緑いっぱいの平地に倒れていた。辺りを見渡すと草木が広がっていて木が周りにいくつか生えていた。






その中心には人が一人通れるくらいの道が何処かへ繋がっているようだった。




「はじめまして。私の名前は、アリス。アナタは?」




「知ってるよ...。有名だもの...。

私は雛月 結衣。結衣で良いよ。」


そう、思い出した、あの絵本...不思議な場所に居た...

...その小さな女の子、アリス!!




「私って有名なんだ、それってすっごく嬉しい。

だって私の事見てくれてるってことだよね?」




「まぁ...見てはくれてるとは思うけど...私は好きよ。」

私は少し考えた。アリスってこんな感じだったかな?

でも...好奇心旺盛な子ってイメージなんだけど...ま、いっか、考えるのは止めよ、そう自分に言い聞かせた。



「結衣が好きなら私も好きー。」


「え?...アハハ...アリスって面白いね。」



(そういえば...変わってる……)

私は自分の着ている服が違っていることに気がついた。...アリスと服が似てる...。



「……そういえば何処から来たの?」



「え?あ...うーん分からない......。でも大きな本があってその本に吸い込まれた...までは覚えてるんだけど...」


「それって私と一緒だ!」


私は辺りを見渡したが入り口のようなものは見当たらなかった。


「え?アリスも?」


「うん、洞穴から真っ黒いのが現れて、吸い込まれちゃって...気づいたら知らない場所に倒れてたの。」


「でも...私の事見つけてくれたよね?」


「声を辿ってきたの!知らない声だけど...楽しそうだったから...そしたら結衣が倒れてたの。」


「知らない声なら...尚更ついて行っちゃだめだよ」

私は少し困った表情でアリスに言った。

私たちは幼い時知らない人について行ってはダメ!と親や学校で教わったのを覚えてる。でもアリスは

そんなの気にしてないように思えた。ココはきっと特別な場所...そんなふうに思った事も無かった私は

大人たちにきっと守られてたんだなって思った。



「そうなの、でも結衣に会えたよ。」

(こんな小さな子に心配されるなんてな……。)




-----ふと思い出していた……。

あの声は誰だったのか、そんなことを考えながら重い腰を持ち上げ立ち上がると遠くから声が聞こえた------。




すると、、誰かがこっちに走ってくる気配を感じて振り返った。 





「急がないと、、、また機嫌損ねちゃうよ!」

大急ぎで走ってきたのは...チェック柄の服を着こなして頭にはウサミミの生えていて

背中には赤いリュックを背負った。白銀頭の男の子だった、、、。






「...待って!!どこ行くの?」

彼はものすごく忙しそうに走っていた。



「君らは誰?、白うさぎのレノだ!!俺は急いでるんだ!!」


「案内役の白うさぎさんだよね?」

白うさぎは案内役でいつも忙しいと言って慌てている

ので有名なキャラクターの一人。


「確かに白うさぎは俺だ。じゃあ俺の質問に答えてもらうよ!」

白うさぎのレノはペンと手帳を取り出し足をパタパタしていかにも急いでいる様子だった。



「......私は結衣です」

(...ちょっとは落ち着いて行動すればいいのに)

そんな事を考えながらレノと話した。


「......っ!!」




「アリス...。」





「......俺は君たちに構ってる暇は無いんだ...。質問には3秒で答えて!俺は忙しいんだから...!行くよ!!」


「好きな食べ物は?」


「オレンジかな...。」


「好きな言葉!!」


「ありがとうとか!!」


「......カキカキ...。」


次々と質問が飛び交い質問攻めは終わった。

「女王様に伝えないと!はい!終わり!」


「え、ちょっと...」


「俺は忙しいと言っただろう!!」


そう言って走り去って行った。




「なんなの...アイツ。」




「後、帽子屋のパトラには気をつけな、」

彼はそう言い残すと勢いよく去って行った。




「あ、ちょ...待っ...」

呼び止める間もなく彼の姿は無かった...。





「行っちゃった......。」



「結衣ちゃん、どうしようか...。」




「そうだよね、とりあえず進んでみよ、レノさんは帽子屋のパトラを探せって言ってたから何処かにいるはず。」





「でも何処でお茶会してるのかな?」



「私もここに来るのは初めてだから分からないわ」



「そっか...。」

 私達はため息をつきながら歩き出した。

 一歩...また1歩と...。 



「実を言うとね、結衣ちゃんに会うちょっと前

不思議な空間に迷っちゃってね...。」





 「迷ってた時にね…声を聞いたの。頭の中に直接話し掛けられて...誘導されるように声を辿ってたら結衣ちゃんが倒れてて...。」



 (それって...アリスもここに飛ばされてきたってこと!?)





私とアリスは引き合わせられたんだと思った。それは偶然ではなく必然的に……。




私達は足を止めて、とりあえず歩きながら探索してみることにした。