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西さんの、短編を集めたものです。
読むまで知らなかったけどね。

どのお話も、切り口がすごく面白かったです。
完全に、SFに近いような話なんだけど、短い話の中に、大切な要素が、ぎゅっと詰め込まれている気がしました。

どきっとするようなこととかさ、発想が飛び抜けていて、楽しんで読みました。

一番記憶の新しい、最後のお話が、特に印象に残っています。

書き下ろしの「ある風船の落下」


その言葉を聞くと、私は自分の体の芯が、きゅう、と固くなるのを感じた。
私が傷つき、捨ててきた「地上」。

忌まわしい思い出しかないあの「地上」で、もう一度重力を、感情の「重さ」を感じて生きていくことなど、出来るのだろうか。この私に。



僕は風船にはなりたくない。
等間隔のまま、傷つかない代わり、誰とも寄り添うことなく、たったひとりで浮き続ける風船には、なりたくない。

僕も「地上」は怖い。
でも、恐怖にかられても、人に裏切られて傷ついても、それでもまた、人間を信じて、何度も傷ついて生きる、人間でいたいんだ。ハナ!




終わりが見えなくて出来ないより、終わりが見えて出来ないことのほうが、きっとずっと辛いよね。
罪悪感が増すというか。

でも、終わりが見えた瞬間から、もうきっとそれに向かって、少しでも進んでいるんだと思うよ。
大丈夫。きっと出来るから。