『60歳からの主張』を知っているだろうか。
全国老人福祉施設協議会の主催で、応募できるのは当然、60歳以上。
小論文と川柳の2部門がある。
過日「もうひとつの成人式」と命名している入賞者の表彰式が行われた。
5回目になる。

小論文で入賞した三重県桑名市の池田義男さんの『広げよう「小さな勇気」の輪』の概略を紹介したい。
誰の身にも起こり得る電車の中の出来事を取り上げているからである。

座席はほぼ満席で、75歳の池田さんも立っていた。
そこへ杖をついている同年配の女性が乗車。
座らせてあげたいと見渡すと、2人連れの高校生の1人が座席に荷物を置いていた。

妻からは常々「正義感から注意などしてはだめよ。殴られたり、時には刺されたりもする怖いご時世なんだから」と言われている。
さあ、どうするか…

見かねてついに「その荷物、下に置いてこの人を座らせてやってよ」と声をかけると、高校生は黙ったまま荷物をどかした。
妻の顔を思い浮かべてホッとしたが、話はここで終わらない。
同じ駅で降りた高校生が何と自主的に女性の荷物を持ち、出口まで付き添ったという。

小論文の表現を借りれば〈態度に表すのは苦手のようだけど、接してみれば優しく気のいいヤング〉だった。
これからは、進んで若者に声をかけよう。
心を通わせてみよう。
味わい深い主張である。

―090126 中日春秋より