まぶしい花火の終ったあとで
あの人は一本の
線香花火を とり出す
忘れものを 思い出すために

『あかるい日の歌』岸田衿子

子供たちの手花火でも、傍迷惑だとか危険だとかいう理由で筒花火が嫌われ、線香花火がはやっているそうだ。
「線香花火」には、しかし、「まぶしい花火」にはないよさがある。
「忘れものを」思い出すために、人々はしゃがんで、掌を照らしてはぜる「一本の 線香花火」の光を燃えつきるまで見守る。

―中日新聞“けさのことば”岡井 隆