そう、はじめて「ヒロイン」に会った日の天気は今日みたいな、
なんともビミョーな曇り空だったと思う。
その「ヒロイン」に会うまでは、これといった「ヒロイン」という存在は、
私の中には一切なかった。
秋のある日、私のクラスは席替えで朝から盛り上がっていた。
そんな中、私自身は憂鬱でしかなかった。
なぜなら、席替えの結果を知っていたからだ。
場所は嫌いな真ん中。班の人はあまり話したことのない人ばかり。
とくに、隣の人なんてお互いに「絶交したい」と思っていた人だからだ。
可能であれば、もう一度新しい班を考え直してほしい。
または、今までの班でいたい。
しかし、私の願望は、どちらも叶うことなく終わった。
ただただ「席替えしたい…」と思いながら
おそらく一週間たっただろう。
その日は、ごく普通の月曜日だった。
月曜日には、数学のワークが毎週ある。
私たちの学校は、週初めに宿題を担当の係りの人へ渡し、
係の人は職員室前まで持って行くのである。
そして、隣の人は数学教科の担当なので、
私は抵抗がありつつもワークを渡した。
すると、「なんか、今日集めんらしい。」
と言って、そのワークを私の所へ返してきた。
「そーなんだ。」
私はそう返事をし、ワークを渋々机の中にしまった。
次の日になり、フツーに学校で午前を過ごしたのだ。
しかし、その日の午後は忘れもしない一日になったのだ。
5時間目は数学だった。が、始まったとたんに先生から言われた一言だった。
「おい、おまえ。まだ提出物出さんのか。」
「…え?」
私は、昨日のとなりの人との会話を思いだす。
「なんか、今日集めんらしい。」
「そーなんだ。」
話が違う……すると先生が
「わしはお前に聞いとるんだ。なんか答えんか。」
「黙っているだけなんか?は?」
頭が追い付かない。私はなぜ怒られているんだ?
小さな声で隣の人へきいたのだ。すると、帰ってきた言葉が…
「は?おれしらんし。」
「いやいやいやいや、こっちが知らないよ。
昨日の朝、あなたが「集めんらしい」って言ったじゃん。」
「は?」
すると、先生が
「えーけぇ、はよ出せ言うとんじゃ。」
先生の怒鳴り声だけが教室に響き渡る。
(もう無理。耐えれない。私が悪かったのかな?)
そう思っていると、気づいた時にはつ涙していた。
「すみませんでした。」
と、私の声とある女子の声が重なった。
「先生‼、朝、○○さん(私)は出したんですけど、
△△(私のとなりの席)が間違えてワーク集めないって言ったんですよ~笑笑
なんで、○○さんは悪くないんですよ~~~。」
彼女の放った一言で、先生の顔が一変した。
「…そうなのか、辺識。」
そりゃぁ、悪かった。おい、△△、どういうことだ。」
その後も先生と私のとなりの男子は話していたようだが、詳しくは覚えていない。
なぜなら、私はそれどころじゃなかったからだ。
何度も何度も彼女にお礼を言い続けた。
今年も、その子とは奇跡に同じクラスで
いまだに恩返しと言う恩返しが出来ていない。
でも、もし彼女が負けそうになったら
「負けるなっ‼」
って、背中を押せる勇気を持てるようになりたいとは思う。
いや、なってやる。
そう思った、曇りの一日でした。
※~追記~ 2019/3/30
あれからもう二年がたとうとしています。
今では、彼女とお互いに全く気を使わない仲になりました。
けれど私はこのことを忘れないと思います。
これからも、ずっと感謝です。
※〜追記の追記〜 2020/05/02
そして、「追記」の頃から約1年、このブログを公開して3年の月日が経ちました。私たちは高校生になり、みんなバラバラの道へと進みました。たまたま、彼女は私と同じ高校へ進む、と噂を聞いていて、3年生の夏休みも彼女は塾で必死に勉強していたそうです。しかし、夏休み明けて彼女は全く違う高校へ行くことを選びました。家も遠いし、高校も違う。会える数は一気に減りますが、コロナが終息したら彼女を含めた仲のいい友達みんなで遊びに行こう、と話しているところです。