もうすぐたくさんのお花が咲いて、ソサノヲさまが生まれた季節がやってくる。そんなときに訪れたイサナミさまとのお別れ。
「お母さまがいなくなってしまったのに、なんで、お日さまは、いつもとおんなじように昇ってくるのかな。なんにもなかったみたいに、また、お花も咲くのかな」
ソサノヲさまは、家族にとってのお日さまが、永遠に姿をかくしてしまったのに、まるで、なにごともなかったように、季節が進んでいくことが、不思議でたまりませんでした。それで、ワカ姫さまに、この思いを打ち明けました。
「お姉さま、どうしてなのでしょう。ぼく、なんだか、よくわからなくて」
「ええ。ソサノヲのその気持ち、お姉さまにも、よくわかりますよ。わたくしたちが、そのように感じるのは、おそらく、お母さまが亡くなられてから、わたくしたちの時間が止まってしまったからなのだと思いますよ」
「ぼくたちの時間が止まっている?」
「そうです。わたくしたちは、まだ、お母さまの死を完全には受け止められず、同じところにとどまっているのです」
「同じところに・・・・・・」
「ええ。だから、お日さまがいつも通り昇ったり、これまで通りに暮らしている人たちを見ると、おかしな気持ちになるのですね」
「ああ・・・・・・」
ソサノヲさまは、さびしそうにうつむきました。
「だから、わたくしたちが、お母さまの死をちゃんと受けいれて、前をむいて生きられるようになれば、そんな気持ちは消えていくことでしょう。お母さまに喜んでいただくためにも、しっかり生きてゆきましょうね」
ワカ姫さまは、ソサノヲさまの手を取り、やさしく頭をなでられました。