東方project二次創作 書きたい物溜め置き場

東方project二次創作 書きたい物溜め置き場

此方は主に東方projectの、文章を媒体とした二次創作作品となっております。
主作品があるため、話の飛躍等を御容赦下さい。是非とも雅な世界へ、足を踏み入れて下さいませ。
あ、主作品はいつかピクシブか何かで投稿します(宣伝乙)

Amebaでブログを始めよう!
筆を置かせて頂いて、随分と久しくなってしまいました。恐らく再び続きを綴る事も無いかと思った時さえありましたが、やはり私にとって竹取は異質と言うわけでしょうか。語りたい事も、綴りたい事も湯水の様に湧き、結局お恥ずかしながら筆を取らせて頂きました次第であります。
さて気を取り直し此度語らせて頂きますは、輝や姫に挑む二人目の公達、倉持皇子の話で御座います。どうぞ深々と座布団に座り、寛ぎながらお聞き下さいませ。

前の挑戦者である石造皇子は、歌人としても男としても上等の上達部でありましたが、どうにも策を労すには向かない愚直な男でありました。故に輝や姫も自信を得ると共に油断をしてしまいます。そうした後に襲い掛かるが、倉持皇子の策謀でありました。
倉持皇子は原型をかの藤原不比等公とされる、竹取物語の中でも重要人物であり、また物語中でも秀でた頭脳を携えた男でありました。そんな彼は前例の皇子の様に愚直には向かわず、強かに策を巡らせました。
まず、上司には「湯治に行く」と言い、輝や姫には「出されたお題の物を探しに行きます」と言って船を出します。しかし難波(大阪)の港を出、部下が都へ戻った直ぐ後に彼はまた難波へ戻り、打ち合わせで話していた数人の鍛冶屋を呼び寄せます。
そしてその鍛冶屋達を離れ屋で隔離し、出されたお題として申し分無い物を作る様言って聞かせます。彼が姫に出されたお題は、唐土の蓬莱山にある蓬莱の珠の木の枝でありました。

そして倉持もまた三年程の時を経て、姫の下へ帰ってきました。手には、鍛冶屋が丹精込めて作った蓬莱の珠の枝を持って。
彼の作戦は完璧でありました。何処からも情報が漏れない様に隔離し、そして彼は疲労困憊と言う顔で姫と翁に対面したのです。恐るべきは彼の深謀と演技力でありましょう。それに翁が騙されるはおろか、蓬莱山など存在しないと知っているはずの輝夜さえも、本物かと思ってしまったのです。
彼はぼろぼろになった相貌ながらも、涙を流して偽りの苦労を吐露します。そしてその時、彼は輝や姫へ和歌を送るのです。

いたずらに 身はなしつとも 珠の枝を
         手折らでさらに 帰らざらまし
(この身が滅びてしまおうとも、この枝を、手に持ち姫の下へ帰るまで、帰らない気でした)

翁はそれを感激し、二人の張台、つまり寝室を用意までし出します。それに皇子はほくそ笑み、そして輝や姫は焦ります。あんなにも嫌った嫁入りを、今からする事になってしまう。自分はこの男に負けてしまうのだと、自信をすっかり消失した顔で落胆するのです。

虚偽によって作られた冒険譚を、皇子はつらつらと話します。そこまで念入に練られていた彼の策は、正に死角なしでありました。しかし、そんな皇子の策謀は、途端崩れる事となるのです。
「倉持皇子にお目通り願いたい!!」
屋敷の門前にて響いたその声を、三人は聞き取ります。そしてその方を向くと、家臣の者に取り押さえられながらも、それらを引きずって屋敷へ入ってくる男がいるのでした。翁が「如何した」と聞けば、男は勇み足を出す様に、その大きな声を早口に吐き出します。
「皇子に依頼された蓬莱の珠の枝の代金を、未だ頂いておりませんゆえ!!それを頂きに参りました!!」
聞いた皇子は、顔色を蒼白にさせて脂汗を流します。その男は皇子が呼び寄せた、鍛冶屋の男に相違なかったのです。
これが倉持皇子の油断なのか、それとも金銭の出し惜しみなのかは分かりませんが、ここまで寸分の狂いも無い計画は左様にも詰まらない事で瓦解と化したのでした。

心から安心しつつ、また勝利を確信した輝や姫は、鼻息荒らかに皇子へ和歌を詠って見せます。

まことかと 聞きて見つれば 言の葉を
       飾れる珠の 枝にぞありける
(本当かと聞いて見てみれば、なるほど言葉で付けて飾った、偽物の珠の枝でありましたわね)

そうして鍛冶屋は輝や姫に沢山の褒美を賜り、輝や姫は勝利を大いに喜び、そして皇子は敗北と羞恥に踏みにじられて、一人深い森の中へ入ってしまったと言います。こうして二人目の刺客との争いは終わるのです。

この章は単に倉持皇子の活躍と没落を楽しむ事も出来ますが、輝や姫の視点を持って接するとまた違う物が見えてきます。それはこの先へ通ずる、姫の成長です。
倉持皇子は強力でありました。故に未だ少女であった輝や姫は鍛えられ、少し大人へと成長します。この先の姫が如何に強かに敵を倒すか、今から楽しみではありませんか?

さて、丁度良い頃合いであります故、この度の語りは此処で締めさせて頂きましょう。御視聴感謝痛み入ります