バケツをひっくり返したような雨に打たれながらも



ひとり



ぽつぽつと歩いて



帰ってきた



捨て犬のことを



思った。







子供が拾ってきた子犬。



二匹。



こげ茶の毛色の子と



こげ茶をちょっと濃くした毛色の子。



子供は


ハッピーとラッキー



そう名付けてた。





家の裏で



こそこそと



飼っているのは気づいてたけど



あえて



目をつぶっていた。






嫁さんも



目をつぶっていた。







しかし



じいさんとばあさんは




目をつぶらない。



どころか



目をひんむいて



どっかに



やってこいと。




まぁ



予定どおりの展開





みんなで



貰い手を探したけど



雑種は



人気がない。





アンハッピーでアンラッキー





雑種じゃからって



負けんなよ!





そんな気持ちで



子供たちは



ハッピーとラッキーを



もと居た場所に返しにいった。




自転車に乗せて。






娘は




涙が出た




と言っていた。








その日の晩




雨が降った。どしゃどしゃ降りの雨。






午後8時頃。




玄関の戸の向こうで




クーン、クーン



と聞こえる。





「あっ、ハッピーとラッキーじゃ!」




子供たちは



ダッシュで玄関に向かい戸を開ける。










不正解。










ずぶ濡れの



ハッピーだけが



たたずんでいた。












ラッキーがいれば正解だが



いないから不正解じゃな。



いや正解が1点なら



半分正解なので0.5点じゃけど



君たちは



おとうさんの子供だから



すごくおまけして



0.75点をあげよう。















子供たちは



とりあえず



びしょびしょのハッピーを



タオルで拭いた。






そして



飯を食わせた。



ミルクもあげた。







でもすぐ




お別れの時間。





雨が降っていたので



嫁さんの運転に娘が同乗し



車で



また



もといた場所に返しに行った。












午後10時頃



また



玄関の方で



クーン、クーン



と聞こえる。








「あっ、ハッピーじゃ!!」





今度は間違いなく






大正解じゃろうな。













つづく