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同世代名画館DX

昭和37年生まれの支配人です。小学校でライダースナックを川に捨て、中学で赤いシリーズに毎週熱中、高校で松田優作に心酔した世代です。50~60代の皆さん、いつかどこかで観た映画とともに、時間の旅をお楽しみください。

当館プログラムもついに1040回。

かなり現在に近い作品まで紹介して、懐かしい感じも薄れて来た。

で、突然ではありますが、設備もガタがきたので、全館メンテナンスするため、このあたりで一時休館としたいと思う。

あと10回で、1050回まで。残り10回は総集編特別プログラムとしてお送りしたい。

なので、新たな作品を紹介するのは今回が最後。


記念すべき第1回で取り上げた「未知との遭遇」のスピルバーグ監督による宇宙人SF「宇宙戦争」、そして、最も繰り返し再上映して来た「スター・ウォーズ」サーガ最終編「シスの復讐」。
最後の2本立として、これほどふさわしいカップリングはないはず。

かつて、1977年に「未知との遭遇」と「スター・ウォーズ」が相次いで公開され、中学生の私は映画の世界へ引き込まれた。
28年後の2005年、同じ監督同士によるSF超大作が、偶然にも夏の映画館で激突。同世代映画ファンは、感慨深いものを覚えながら、大いに興奮した。


「スター・ウォーズ」新三部作は、旧三部作で悪役だったダースベイダーの誕生秘話。
観る者は、あの純朴な少年が、才能あふれる青年が、なぜ悪の権化に落ちて行ったかに、全ての興味を注ぐことに。

「エピソード2 クローンの攻撃」では、許されない恋がその布石となることを、女性を描くのが下手なルーカスのつたない演出で描かれた。
そして迎えた「エピソード3 シスの復讐」。いよいよ我々はダースベイダー誕生の瞬間を目撃する。いかなる無惨で絶望的な結末が待っているのか。
冒頭から「悪くなってやるゾ」モードを漂わすアナキン。案外コロッとダークサイドに落ちちゃう。その間の複雑な感情の揺れ動きは、かなり描写不足と思える。
しかし、クライマックスの炎の中の戦いは映画史に残るだろうし、変わって行くアナキンにアミダラが言う「アナキン、私、胸が張り裂けそう!」には、こちらまでブロークンハーツして泣けた。
最後にダースベイダーが立ち上がった瞬間は、鳥肌が立つ思いだったし、ラストで映るタトウィーン星のルーク養父の姿に、第1作へ見事に繋がった感慨を覚え、目が潤んだ。
壮大なサーガを完成させたルーカスに拍手。ありがとう、ルーカス!


スピルバーグにとって、初めての侵略宇宙人を描く作品「宇宙戦争」。
トム・クルーズ主演というのが異和感ありありだが、スピル師匠の娯楽映画手腕は衰えていない。こんなに怖い宇宙人映画は他にない。船で逃げようとする群衆に、山から宇宙船が現れてクラクションを鳴らすシーンの恐ろしさ!
ラストがあっけなくて期待外れだとか、賛否はあろうが、一市民トムの逃げる姿だけを追った構成は大成功だ。スピルバーグは、「未知との遭遇」や「ジュラシック・パーク」でも、特定の主人公たちの行動を追っている。「インデペンデンス・デイ」のようにマスを描くと“戦争ごっこ”“侵略ゲーム”に見えるだけだと知っているのだ。
H.G.ウェルズの原作を何で今さら、と最初は思ったが、最新の映像技術で楽しませてもらった。やっぱりスピルバーグはSFだ!


これを観るまでは死ねない!と思っていた「スター・ウォーズ」完結編も終わった。
CG氾濫により、あれほど好きだったSF映画も辟易するようになった。歳をとったということなのか。
これからの半生は、また違った映画の観方をするのかも知れない。取りあえず、一つの区切りが2005年であったのは間違いない。

中学生の頃から本格的に観始めた映画について、綴り続けて来た当名画館。

中でも、角川映画はわが青春だった。今日は、その角川絡みの新しめの作品2本。


久しく獄中の人だった角川春樹が、再度本格的な映画製作に乗り出したのが、「男たちの大和 YAMATO」。
ハッキリ申し上げて、あの「読みたい!」「観たい!」原作を実に巧みに取り上げて映画化していった、往年のプロデュース・センスはどうした?と最初は思った。今さら戦艦大和かよ?って。角川も、塀の中が長くて、時代を読めなくなってしまったかと。だから、角川映画のほとんどを劇場で観た私が、これは行かなかった。
ところが、意外なことに大ヒット。しかもキネ旬ベストテンにまで入選しちゃった。傑作に出来あがっちゃった。まさかと思ったが、あらためて角川春樹恐るべしと痛感した。
監督は佐藤純彌。角川初期作品「人間の証明」「野性の証明」で、「宣伝だけで、ヒットはするけど内容がともなわない」角川映画の悪評の根源を作った張本人と言っていい。
その借りを、30年ぶりに角川に返した感あり。「敦煌」「おろしや国酔夢譚」など超大作作りで培ったスケール大な演出ぶりを発揮。脚本も単独で手掛けてる。佐藤監督としては、キネ旬入選も「新幹線大爆破」以来。
実際の映画は、個人的はそれほど良さを感じなかった。滅び行く巨艦の哀しみは、迫力あるスぺクタルとともに表現されていたが、役者の演技が臭かった。
新生角川春樹映画は、この後「蒼き狼」の大失敗を経て、「椿三十郎」に続く。大映映画が名を改めた角川映画とは違うから、間違えないように。


もう1本は、「戦国自衛隊1549」。
決して名作でも何でもないのに、覚えやすいタイトルで多くの人の記憶に残る角川映画「戦国自衛隊」のリメイク、というより、設定だけ借りた新ストーリー。
半村良の原作に敬意を表しながら、新たな物語を作ったのは、「亡国のイージス」「ローレライ」の福井敏晴。この年、3本も原作映画が作られた。
監督は、「ゴジラ×メカギラス」「ゴジラ×メカゴジラ」「ゴジラ×モスラ×メカゴジラ」で、シリーズに新風を吹き込み評価を受けた手塚昌明。怪獣以外の初演出。
大して面白くなかったオリジナル版より、数倍落ちる面白くなさ。あらためてまた、オリジナル版を名作と錯覚させることになってしまった。


この後、日本映画は「日本沈没」「犬神家の一族」など70年代映画のリメイク流行りに。
時代は巡る。ここで一つの輪が出来て、区切りがついた気がする。

ジョージ「よーし、オーシャンとその仲間たち集まれ!8時だヨ、全員集合!声が小さい、オーッス!なんちゃって」
ジュリア「相変わらずエラそうにしてるわね。ハリウッドのドンみたいな顔しちゃって。私なんか、あんたがまだ吸血鬼と戦ったり、コウモリ男のコスプレしてた頃は、もう大スターだったんだから」
ジョージ「もうピーク過ぎてたんだろ」
ジュリア「失礼ね。確かに結婚ドタキャンとかしたけど」
マット「兄貴、何か集まり悪くないすか」

ジョージ「何だって、ジミー?」

マット「大西画伯じゃありませんって。人数が少ないって話です」
ジョージ「おう、ドン・チードルはホテル・ルワンダとかにどうしても寄らなきゃいけないって連絡あったぞ。じゃあ、点呼!1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11…あれ?11人もいるぞ。チードル欠席で10人じゃないのか?座敷わらしか?」
マット「兄貴、今度一人増えて『オーシャンズ12』になるって、ソダーバーグ現場監督が言ってましたよ」
ジョージ「ん?誰が増えたんだ?新入りはどいつだ?俺様に挨拶がないぞ、出て来い!」
キャサリン「私よ。悪かったわね、顔がデカくて」
ジョージ「ゼタ・ジョーンズじゃないか!いるならいると言ってくれればいいのに~。さあ、キスしてくれ」
キャサリン「夫に言いつけるわよ」
ジョージ「いやいや、マイケルさんにはいつも世話になってるから…。今度ハム持ってうかがうと言っておいてください」
マット「兄貴、やっぱり10人しかいませんよ。誰かいないようです」
キャサリン「あら、ブラッドが今日は来れないって言ってたわよ」
ジョージ「ブラッドが?どこ行ってるんだ?チベットか?」
キャサリン「何でも、奥さんのアンジェリーナと一緒に映画観るって」
ジョージ「あのタラコ唇の嫁さんか。俺様より嫁を選ぶなんて、許せんな。新婚だから仕方ないか」
マット「やってる、やってる~!」


その頃ピット夫妻は…
アンジェリーナ「あなた!何『フレンズ』なんか観てるのよ!まだジェニファーに未練があるの?」
ブラッド「テレビ点けたらやってただけだよ。ハニー、やきもち焼くなよ」
アンジェリーナ「知ってるのよ!あなたがジェニファーと携帯でメールしてるの」
ブラッド「おい、俺のソフトバンク携帯を見たのか?妻とは言え、それは許せないぞ」
アンジェリーナ「許せなかったらどうすんの?え?」


その頃、家の外では…
ダグ・リーマン「おい、カメラ回せ!こんなおもろい夫婦喧嘩はないぞ。映画にすれば大ヒット間違いなし。そうだな、タイトルは『Mr&Mrs.スミス』で行こう!」
マット「やってる、やってる~!監督、その次はボクを主役に『ボーン・アイデンティティ』撮ってね。約束だよ」

史劇やファンタジーなどコスチューム映画が苦手だというのは、前に書いたかな。
もう一つ、苦手なジャンルがあった。“潜水艦映画”これもダメだ。
狭い艦内で、みな同じ軍服で、帽子とか被ってるから、誰が誰だかわかんない。主演スター以外、区別がつかない。無名キャストで固められたら最悪。ストーリーもついて行けない。
要するに、コスチューム映画もそうだけど、顔の見分けがつきにくいのがダメなんだろう。
ということで、今日は潜水艦映画特集!


いずれも原作は福井晴敏。この人、ガンダムのストーリーとかも書いてる人。まずは「ローレライ」。
♪ロ~レラ~イ~、なんて唄いたくなっちゃいそうだけど、潜水艦の名前なんだね。ストーリーもよく覚えてない。
主演は役所広司、妻夫木聡。脇で柳葉敏郎なんかも出てた…はず。そう、私が俳優だったら潜水艦映画だけは絶対出ないね。だって、顔が充分映らなくて損だもの。え、出てたっけ?って感じで。
監督は、平成「ガメラ」シリーズの特技監督として名を馳せた樋口真嗣。やっぱドラマを撮らせたらダメかとガッカリ。それで敬遠した「日本沈没」は意外にも面白く出来てたが。


同じ年に続けて公開されたのが、「亡国のイージス」。こちらは潜水艦というより、戦艦か。
キャストがとにかく魅力的。「ラスト・サムライ」以後、海外に活躍の場を移した真田広之が久々に日本映画に凱旋。
これに中井貴一、佐藤浩市が加わり、同年代ビッグ3が揃った。誰がメインでもいいが、全員持ち前の役柄を見事に果たしてた。特に韓国工作員を演じた中井貴一が儲け役。
さらには、「博士の愛した数式」「半落ち」など、この頃絶好調の寺尾聰が、悪役めいた役柄で。さらに総理役で故・原田芳雄などが脇を固めてる。
これだけの男優を集めた大作映画をまとめたのは、「どついたるねん」「顔」「KT」などの阪本順治監督。これまで手掛けたことのない超大作。
劇場まで観に行ったが、ちょっと期待が大き過ぎた。阪本監督としては「KT」みたいな緊迫感が欲しかったけど。それでも日本映画としては及第点。


その後も、福井晴敏は「真夏のオリオン」の原案も手掛けてるが、やっぱ潜水艦映画は私ダメです~。面白い映画もあるんだけどね。

「ねえ、ロン。最近のハリーってどう思う?」
「ハーマイオニー、あいつは最悪だよ。一人だけ人気者のつもりなのかも知れないけど、『ハリー・ポッター』シリーズは俺やハーマイオニーがいてこそ持ってるんだろ」
「そうよ!ハリーったら、本当はレーシック手術したからメガネなんか必要ないのに、ずっとかけてるし」
「何かいつもスカしてるよなー。俺なんかずっと三枚目役で損してるよ」
「映画じゃ可愛そうな好青年演じてるけど、ホントはすっごい性格悪いんだからね。皆さん、だまされちゃいけませんよ!」
「俺なんか、いつも食いしん坊の設定で、食べてばっかりだし。戦隊ものの黄レンジャーかって!」
「だいたい二十歳近くになってるくせに、中学生の役やってんじゃないっちゅうの!」
「おいおい、それは俺たちも一緒のことだろ?歳のことは言っちゃダメだって」
「だって、原作は1歳ずつ年をとるけど、映画は1年半に1本だから、私たちも大きくなり過ぎちゃうわよ。ブリキの太鼓じゃないんだから、成長止められないって!」
「でも、一時は途中で配役変えるとか言ってたのに、最後まで使ってもらえそうでよかったじゃん」
「ハリーだけ変えればいいのよ!」
「本当にハリーが嫌いなんだね…」
「『炎のゴブレット』じゃ、中国の女の子と仲良くなったりしちゃってさ。『アズガバンの囚人』じゃ死にそうな思いしたくせに。あの時死んじゃえばよかったのよ!まったく、私はこのシリーズのヒロインなのよ!なのに、どうして主人公と結ばれないの?よりによって、黄レンジャーなんかと何で?!」
「おいおい、それが不満だったのかよ!ハーマイオニー、あんまりじゃないか!」
「私、もう『不死鳥の騎士団』出るのやめよっかな。また監督変わるって言うし」
「確かに、よく監督変わるよね。クリス・コロンバスから『天国の口、終わりの楽園』のアルフォンソ・キュアロン、『フェイク』のマイク・ニューウェルとか」
「こちらの支配人さんも、『アズガバンの囚人』はお子さん二人ついて来たけど、『炎のゴブレット』は娘さんだけしか来なかったんでしょ。この次はどうすんの?お父さん一人で行くのかしら?」
「どうでもいいよ。それより、ねえ、俺のこと嫌いなの?」
「あー、やだやだ。ドラコとでも付き合っちゃおうかなー」
「えー、それはないんじゃないの?ねえ、ハーマイオニー…」

ごめんくさ~い。
こんにちは、チャーリーです。チャーリー・ブラウンですよ。え?チャーリー浜やろって?あ、こりゃまたくさ~い。
細かいことは言わないで、映画紹介しようじゃあーりませんか。


「チャーリーとチョコレート工場」は、ロダルト・ダールの原作「チョコレート工場の秘密」を、あのティム・バートン監督が映画化したんですねえ。
主演は、バートン監督とは名コンビのジョニー・デップ。ジョニデですね。あの、私みたいな二枚目がオカッパ頭に薄化粧して、不気味な工場の案内人に扮してます。
黄金のチケットを手にした貧乏チャーリー少年が、謎のチョコレート工場で見たものは、世にも不思議なワンダーランド!小人が唄って踊り、ネズミやら色んなキャラがいっぱーい!
超高速エレベーターとか、仕掛けもいっぱい。良い子は誰かな?悪い子は、チョコ食べる前に、食べちゃうぞ!
てな感じで、想像力たっぷりに作られた、見たこともない映像と音楽に彩られた、いかにもティム・バートン的世界じゃあーりませんか。
支配人さん、岡山の映画館でやってないもんで、わざわざ倉敷まで観に行ったそうね。ポスター貼ってたくせに上映しなかった、そのSY松竹はそれからすぐに閉館になっちゃったんだって?岡山千日前から映画館が無くなって、寂しい思いをした時だったわね。場末の映画館、いずこへ?


もう1本は、「バットマン・ビギンズ」じゃあーりませんか。
「バットマン」シリーズは一度終わった筈だったんだけど、それまでのダークだけどカラフルな路線から、思い切りシリアスな路線に変更したんですねえ。
「ビギンズ」っていうくらいだから、誕生秘話ってことじゃあーりませんか。監督はクリストファー・ノーランって、「メメント」と「インソムニア」を撮った監督じゃあーりませんか。
バットマンにクリスチャン・ベール、他にマイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、ゲイリー・オールドマン、リーアム・ニーソンなど豪華キャスト。
そうそう、あの渡辺謙も出てたじゃあーりませんか。謎の東洋人武芸家役で、「ラスト・サムライ」の直後で早くも東洋人俳優の限界を感じましたけど、どっこい「SAYURI」や「硫黄島からの手紙」が続いてよかったですねえ。
期待した割に、従来のシリーズの方が良かったと思いきや、ノーラン監督が放った「バットマン」第2弾の「ダークナイト」は素晴らしかったですねえ~。衝撃的な面白さで、感動しました。

その後の完結編「ダークナイト・ライジング」も見事でした。


いやあ~、映画って本当にいいもんですねえ。って、水野さんのパクリじゃあーりませんか。それでは、ごめんくさ~い。

異色作家特集、ということになるのかな?


映画監督にも色々あって、何でも撮っちゃう職人もいれば、独特の作品世界を持つ作家性の強い人もいる。
わが専門学校の恩師・鈴木清順監督などは、作家性と言っていいのかどうか悩むところだが、誰にも真似出来ない作品を撮る“元祖・カリスマ監督”である。
日活をクビになった頃の作品はほとんど観てないが、80年代以降の「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」「カポネ大いに泣く」「夢二」「結婚」は全て劇場で観た。
「ピストルオペラ」からは、先生すみません、ビデオで観てまーす。だって、岡山でやってなかったんだもの。
「オペレッタ狸御殿」は、SY松竹でやってたけど、迷った末行きませんでした。誠にすみません!
でも、ビデオで観て感激!意外、と言っては失礼ですが、とても楽しく観ることが出来ました!私もやっと先生の映画の良さが分かって来たのかも。
オダギリ・ジョー、チャン・ツィー、薬師丸ひろ子他豪華キャスト。何と言っても、チャン・ツィーですよ。「初恋のきた道」で世界にその可愛さを売り出し、「グリーン・ディステニー」「LOVERS」「2046」など、この頃のアジア映画の名作にほとんど出演、「SAYURI」でハリウッドも制したチャン・ツィーが出てくれただけでも奇跡だと思う。
映画は、特撮を駆使したミュージカル、とでも言いましょうか。とにかく、ばかばかしいほどに楽しい作品。「ちゅうちゅう、たこかいな」ばかり言ってた「ピストルオペラ」はしんどかったけど。まさか鈴木先生がミュージカルを撮るとは思ってもいなかった!
最近あまりテレビでも見かけなくなり、お身体の調子でも悪いのかと思いつつ、年賀状の返事が届くとホッとしてます。もう次の作品は難しいのでしょうか…。


もう1本、「TAKESHIS’」は、ご存じ北野武監督の第12作。
これまで順調にレベルの高い作品を発表し続け、前作「座頭市」もベネチア金獅子賞を受賞した北野監督。
ここで足を踏み外した、というより、あえて全く一般受けしない実験的作品に挑んだのがこれ。つまり、ワケわかんない映画。
スターのビートたけしがいて、俳優のオーディションを受けてる無職の男たけしがいて、この二人の話が交錯するストーリー。いや、ストーリーなんかあるんだかないんだか。完璧にこわれちゃってる映画だ。
この次の「監督ばんざい!」は、さらにこわれる。もう、やる気ないんじゃないか、タケちゃんどうしたの?と心配にさえなって来る、ひどい映画に。
次の「アキレスと亀」で少し持ち直し、「アウトレイジ」シリーズでは久々にバイオレンス映画に戻って来た。ホッ、よかった…。

マット・デイモン主演の“ジェイソン・ボーン”シリーズはある意味、世にも珍しいシリーズだ。
全部で3作作られたが、1作目より2作目、2作目より3作目と、回を追うごとに出来が良くなって行くのだ。長いこと映画観てるが、こんなシリーズは他に知らない。


人気作家ロバート・ラドラムの代表作「暗殺者」を、ラドラム自身が製作に加わって映画化した「ボーン・アイデンティティ」。
「暗殺者」はミステリ人気投票でベストテン入りするほどの名作だから、10年以上前に読んでた。「狙撃者」の邦題でTVドラマ化され、「将軍」のリチャード・チェンバレンと「チャーリーズ・エンジェル」のジャクリーン・スミスが出てたのも知ってる。今さら何で「暗殺者」が?って気がした。
記憶喪失だけど、実は鍛え抜かれたスパイで、身体が勝手に動いて敵を倒しちゃうという主人公を、マット・デイモンが演じるというのも「え~っ?」って感じだった。「グッド・ウィル・ハンティング」「リプリー」など青白い知性派のイメージだったから。
それもあって、結局私は劇場に行かなかったけど、意外とスマッシュ・ヒット。監督は、「Mr.&Mrs.スミス」のダグ・リーマン。娯楽アクションの職人らしく、手堅くまとめはしたけど、それ以下でもそれ以上でもない出来栄えだった。

ラドラムの原作は三部作で、回を追うごとに恐ろしく長くなるし、新潮文庫から角川文庫に代わる。一応買って読んだ。


で、第2作「ボーン・スプレマシー」。好評につき、デイモン君がまたボーンを演じる。結構アクションもやるんだ。ガンバってる。
問題は監督。ここで新人ポール・グリーングラスに交代。これが吉と出た。
予告編を見てビックリ!デイモンが乗った車が横から思い切りぶつけられて大回転!高速で中央分離帯に乗り上げるとこを運転手目線で見せる。あ、危ない!!
これって面白そうじゃねえか?と思ったけど、1作目を行ってないから劇場へは行かず、ビデオで観てまたビックリ!やっぱり面白れえ!
カーチェイスがスゴい映画は、「ブリット」「フレンチ・コネクション」とかあるけど、これはそれらを遥かに超えてる!
当然人気は急上昇。こういうのは口コミで広がる。ビデオは高回転。そしてグリーングラス監督は次作「ユナイテッド93」も高評価。


グリーングラス連続登板の第3作にして完結編「ボーン・アルティメイタム」は、シリーズ最高傑作!もちろん興行的にも前2作を大きく上回る大ヒット!私も今度は迷うことなく劇場へ行った。

2010年春にはグリーングラス&デイモンのコンビによる新作「グリーンゾーン」が公開。

さらには、完結した筈のシリーズを無理やり復活させた「ボーン・レガシー」も製作された。ただし、マット・デイモンは出演せず。おいおい、亜流かよ?


グリーングラスが監督した「ボーン・アイデンティティ」が観たいものだと痛切に思う。でも、誰よりも無念なのは、第1作完成後逝去した原作者ラドラム自身だろう。自作がこんなに面白いシリーズに化けたなんて、「アイデンティティ」の時は感じなかったはずだから。ラドラムに合掌。

日本映画も変わって来た。最近そんなことばかり書いてるが、つくづくそう思うのだ。


「ジュブナイル」「リターナー」の山崎貴監督が、「ALWAYS 三丁目の夕日」を撮った時も驚いた。
「三丁目の夕日」というマンガは、「ビッグコミック」に載ってるのを見たこともあったから、あれをこの監督がなぜ?と思ったけど、東京タワー建設中の昭和東京を再現するのにCGを駆使したと聞いて納得。
山崎監督は前2本から、独自のSF映画を、特撮集団“白組”を率いて作るスタイルの人と認識してた。きっと昭和再現CGの見事さだけが見ものなのだと。でも、それだけじゃなかった。
人情喜劇としてもよく出来てるし、ノスタルジー演出も見事。それまでSF的な映像作りしか得意でないのだと思ってたら、こんな人物造詣や感情機微まで描き切れるとは。
私はこの時代より少し後に生まれているが、懐かしいムードはよくわかる。それにしてもキネ旬2位には驚いた。
吉岡秀隆はキャリアの長さを生かして、彼にしか出来ない役柄を確立したし、堤真一は懐の広さを本領発揮し、以後の仕事の幅を一気に増やす切っ掛けとなった。
そして、我らが薬師丸ひろ子が本作で助演女優賞を総なめして完全復活を果たしたことが、何より嬉しい。これでお母さん女優としてのイメージが定着してしまったが、誰が見ても本作の彼女は最高だ。
「続・三丁目の夕日」も良かった。


もう1本は「電車男」。
インターネットが我が家にやって来たのは1995年頃か。パソコンを入口として別世界が広がる衝撃を覚えてから十数年。今はこうやって自らブログも書いてるが、「2ちゃんねる」とかチャットなんてものにはまだなじみが薄い。
それにしても、こんな世界が日本のどこかで行われてるなんて、ウソみたいだった。秋葉原の一オタクが全国的に有名になっちゃうんだからね。キターーーーー!なんて。
「電車男」は、山田孝之と中谷美紀で映画化されたが、個人的には伊東美咲のTVドラマの印象が強い。美咲エルメスに毎週目がハートになってた。私もオタか?


やがて映画はTVドラマと区別がつかなくなり、ネットだけの映画も登場する。そんなのもはや映画じゃないと思うけどね。時代は変わる…。

昔からボーダーレスな映画は、気になって必ず観てる。
日本の俳優が出演した外国映画や、日本の監督が外国人俳優を使って撮った作品とか、日米合作とか、ほとんど観てる。


「SAYURI」は、日本俳優が大挙出演しハリウッド進出を果たした米映画。
製作総指揮スピルバーグ。最初は彼が撮る予定だったが、「シカゴ」のロブ・マーシャル監督にバトンタッチ。
こんな大作映画に日系米国人ではなく純粋な日本人が出るなんて、夢みたいなイベントだ。一足先にハリウッドに名を轟かせた渡辺謙の存在が大きいのは言うまでもない。
彼が「ラスト・サムライ」に出てなかったら、役所広司も桃井かおりも本作には出られなかったはず。工藤夕貴は昔から出てるから別だけど。
残念なのは、メインのさゆり役がチャン・ツィーってこと。あと、コン・リーなど主要な役どころを中国女優陣に譲ってしまったこと。イメージ通りの女優が日本にいなかったんだから仕方ないけど。日本の若手はダメだったのか…。
映画の評価は賛否両論だったけど、私は素晴らしく感動した方だ。日本俳優の活躍もさることながら、ストーリー、演出ともによく出来てたと思う。
渡辺謙の役もおいしかった。この後さらに「硫黄島からの手紙」につながるのだから、彼は本当にラッキーだ。日本人俳優が、実力だけでハリウッドの役柄を貰えるものではない。


チャン・ツィーを「初恋のきた道」でスターにしたチャン・イーモウ監督が、高倉健を主演に迎えて撮ったのが「単騎、千里を走る」。
中国の大陸で、息子が観たかった京劇をビデオに撮るため、言葉のわからぬ異国で奮闘する父親の姿。不器用で、一直線な男という、いつもの健さん像を、日本人ではないチャン・イーモウが脚本・演出してるのだ。
退屈はしないが、何だか不思議な映画だ。イーモウ監督としても、やや物足りない出来だが、高倉健との組み合わせにこそ意味がある。


日本と海外の垣根は低くなった。これからもっともっと、こんな映画が増えて、我々を楽しませてくれればいいと思う。