滅びゆくものの美
このラフカディオ・ハーンの怪談集のうち「耳なし芳一」の話しが大好きなのだ。平家一族と安徳天皇が壇之浦で滅びる。一族はその滅亡を悲しみ妖怪となって芳一に平家物語を語って聞かせるよう願う。小学生時代に読んだ本では、もう少し平家の妖怪たちが嘆き悲しむさまが生々しかったような気がするのだが。
耳なし芳一とは
芳一はとても優れた琵琶奏者だった。もちろん盲目であるが。
ある日、高い地位の武家のものが芳一のところへやってきて平家物語を家の皆に語ってくれ、と依頼した。芳一は大きな御殿のような屋敷に呼ばれて琵琶を奏でる。壇之浦で平家一門が滅びるところ、とくに安徳天皇が入水するところでは周りのものが声をあげて嘆くのであった。
帰って主人である寺の坊主にその事を話した。次の日また武者が呼びにきて、屋敷に出かけて琵琶を演奏した。ところがたまたま通りかかった寺のものが雨のなか墓地で芳一が琵琶を奏でててまわりに火の玉がいっぱい舞っているのを発見した。
それで寺の坊主が芳一は悪霊に取りつかれてると悟り、こんど悪霊が呼びにきても返事をするな、と命令し、芳一の身体中に般若心経を書いたのである。その夜悪霊が来ても般若心経が書いてあるので姿が見えない。ただ耳に般若心経を書き忘れたので耳だけは見えた。仕方がないので悪霊は芳一の耳をちぎって帰っていった。悪霊とは成仏しきれない平家一門のものであった。
そして耳なし芳一になった。
