当時、僕の可愛がってたペットが死んだ。小さなハムスターだったんだけど、胸に腫瘍が出来て、手術するかしないかで眠れないぐらい悩んで、しないまま自然に任せる事を決定。
毎日決まった時間の投薬と食事管理(病人が居るのと同じ)があり、遠方から仕事に通わなければならない僕には負担が大きく、報酬の受け取りもままならない現場に携わる事に違和感を覚え始めた。
※事実この現場は、未だに一年分ぐらい報酬未払いのままだ。
お客さんから慰めのつもりで「彼等の生活の為にも仕事しないといけないから悩みますもんね」と言われる度に、意義を見失い、辞めようかな、という方向へ傾いていった。
そんな時、丁度、コンビの彼から自主企画へのオファーがあった。
今まで現場以外では話した事が無かったが、突然呼び出され、初めて外で話した。
企画の内容とオファー的にはちょっと微妙で、一度は断りかかったけど、時期的に「やるからには調整のハシ役に入るのではなく、本気で演技に取り組みたい」って言う気持ちが大きかったのと、彼の熱意に応えようかとも思ったから、受けた。
妙な違和感はあったんだけど…。
この違和感は後々当たる事になる。
驚いたのは、その企画内容が大きく改訂されてからだった。
当初の話とがらりと変わり、まぁまぁ面白い内容に書き変わってはいたものの、その筋書きが…
ここで少し、僕の幼少期からの人生に遡る。
社会の目から僕は「良家の長女」だったろう。
僕は自分が肉体的性別の自覚ないまま生きていた。
三人兄弟の長子として生まれたけど、性別のせいで何故か一歩引かされることが多く、それでも要所要所では進んで手伝いやら何やらをしなければならない環境に違和感を抱きながら大きくなった。
加えて、特異体質だった。
赤ん坊の頃から眠らず、感覚が過敏で、見えない系のものが見えていた。不思議な体験も多くあった。
祖母からは「あなたが生まれた夜に、何故か流れ星が沢山降ってたの。あなたはお星さまに乗ってやって来てくれたと今でも思っているのよ。」と言われるぐらいには、変わった子供だった。
母も、「百年に一度のバイオリズムで生まれた子」と医者に言われたらしく、親族の中でも“僕伝説”は絶えず聞かされた。
小学校高学年で、家の事情で引っ越しがあり、転校先で上手く行かず大きな苛めに遭った。
その頃から両親の不和が悪化し、家庭崩壊、登校拒否。自分の悩みを誰にも相談できない環境で、人間不信から他人と距離を置く様になり、あまり人と話さなくなって、元からそういう気はあったけど、更に動植物と居る事が多くなった。
将来はこの声なき子達の為に何かしたいと、志望を画家から変更して、獣医を目指し始めた。
高校に入ると完全に重度の対人恐怖症で、会話の仕方を忘れてしまっていた。
片親になって、更に荒れた家庭環境から強迫神経症の様になってた。
泥沼の様な環境に、弟二人も荒れていた。
ある日、弟同士の喧嘩がエスカレートして大騒ぎになった。
思春期に入った男子同士の喧嘩に母が介入出来る筈も無く、ついに刃物が出た。
僕の目の前でそれは起こった。
一歩踏み出せば止められたかもしれない距離で、弟が兄を。
この時は僕に注意を向けさせることでそれ以上の事にはならなかったけど、僕の人生に衝撃を与えた事件で、後々まで当時の光景を引き摺った。今でも指が震えるぐらいの驚きだった。
そして、話は戻って。
「こんな身分や状況は想像するしかないけど」と、筋書きを考えた彼は言ってた。
でもね、僕は何も想像する必要が無かったんだ。
だって僕の半生や葛藤がそこに書かれてるんだから。
誰にも言わないまま、自分の中だけにその驚きは秘め、淡々と仕事をこなして行く内に、僕は更に不思議な体験をした。
僕の考えている事が、彼に伝わる事が多々あった。
家の片づけをしていたら古い小道具が出て来て、「これ使いたいって言われそうで面倒だから捨てよう」と思った次の日、「ねぇ、こういうの使いたくない?」って写真付きでメールが来たり、
練習風景を見ていて、僕ならこうするな…と思った次には、彼が急にそう動いたり。
テレパシーと世間で言われているやつで、特異体質だった僕にはめずらしい事では無かったけれど、そこまで頻発した事が無かったから、途中から気持ち悪くなってずっと「オフ」にしてたぐらいだ。
また、それは僕から彼へ、だけでなくて逆もあった。
ある晩、僕の自室に居た時、急に、他の現場で目にした事がある彼の“太客”の顔が浮かんだと思ったら、吊り下げの照明が床に落ちて、バウンドしてこっちに飛んで来た。
何だよもう?!
と思って、普通に照明直してそのままだったけど…
後日、彼と契約の事で話している時に、制作担当者と話し合わなければいけない部分があって…という旨の事を聞かされて、耳に引っ掛かった。
実は僕の契約内容だけ皆と違っていて、遠方からの参加である事や衣装のデザインも兼任していた事や、あとはこちらが提示した条件も踏まえて負担を軽減できるように考慮してくれたらしく、それが制作担当者との意見不一致になって、電話越しにやや言い合いになったらしい。
「優遇している、特別扱いするのはどうか」みたいな感じで…。
ピンと来て、聞いてみた。
「なぁ、その担当者ってさ、俺(表での僕)も見た事ある人?」
「いや、まぁ知らないとは思うけど、○○に来てた事あるよ…」
「あの茶髪でさ、××してる人じゃねえ?現場でチラッと会った、お前に△△渡してた事のある…」
「おお、そう、その人…凄いな!よく分かったね。」
「おい客じゃねえのか?関係者なのか?」
「うん、制作を勉強してるみたいで、俺の計画を手伝いたいって言ってくれてて…」
大きく長~~~~い溜め息と共にすべてを理解した僕は、先日あった事を話して聞かせた。
「…あ、その日のその時間って丁度、俺がその人と電話でやり合ってた時だ…」
勿論、担当者さんから彼はこの現場の直後にブロックされ、僕はこの現場の直後フォロー解除される。
そして、この時もう見え始めてたんだけど、
オファー承諾前に感じた違和感の原因は、彼のこの“癖”にあった。
続く