白のバックに女の影が見え始めたのも、理由の一つで。

 

僕はある日、白に直接問い質した。

白は終始居心地悪そうにしていて、今思えば、この日もその女の所から向かって来たのかなと思う。(違うかも知れないけど)

 

この頃、白は周囲から縁を切られ始めていた。

態度の悪さが原因で、稽古にろくに通いもせずにいたらしいから、僕に言っていたほぼ毎日稽古というのは嘘で、その女に会いに行く口実だろう。

実際に改定前の台本を○○ホのゴミ箱に捨ててるのを目にしてる僕は、これについては何も言えない。

ただ、本人は凄く調子づいていて、スターを取ったルイージみたいだった。星キラキラ

 

ずっとフリーでやって来た僕にとっては、フリーになるという事象自体はそこまで大きい事に思わないけど、白という人物が、今の彼のレベルでフリーになる事はかなり大変だと思っていた。

先ず、バックアップがあって何処かの所属でやって来た子が知らないのは、今ついてくれてるお客が全員ついて来てはくれないって事だ。

つまり自分の客だと思い込んだら違うって話で、大抵の子がその現実に直面する。

会社の客は会社の客なのだ。

何千人のファンがガッツリ居るならまだしも、百人程度の集客率でフリーになれば、その2割が付いて来てくれれば良い方だ。

それに、恐らく白の気質ではフリーは無理だ。

だからその女の存在に賭けているのだろう。

 

その女は既婚子持ちの主婦で、半アマで本を書いてるという話だったから、横の繋がりと言っても彼女自身にバリューがある訳ではない限り、業界の片隅にも居座れない程度だろう。

そして色に入れ込んで足を突っ込むタイプは大成しない。これはもう法則みたいなもんだから、どうしようもない。

私情と仕事を割り切るのが一番難しい世界だから。

 

最初は、僕と天秤にかけてたのかも知れない。

 

恋愛と仕事、白はよくそう言ってた。

恋愛と仕事どっちかを選ばなければいけないという自分ルールが、彼の中にあったようだ。

 

そしてあろう事かSNSに呟き出す。

仕事の為に、何かを犠牲にしなきゃいけないんだ!と…。

なんだよ僕は。スケープゴートかよ。そんな役回りの為に傍に居るなんて御免だよ。PTSDと必死に戦いながら白を信じて自我を保ってた僕も、この頃から自我の暴走に耐えられなくなって来る。

 

俺は出来ちゃうからさ

俺等なら大丈夫だろ

 

白はそう口にしてたから、僕からの承認が欲しかったのだろうか?

だったら、可哀想な事をしたのかも知れない。僕には甘い言葉は言えなかった。褒めたら大事な彼の未来が潰れると思っていたんだ。そんなの、お節介だったのかな。

 

続く

白の情緒が不安定になって、SNSのトップ画をコロコロ変えたり、ポエミーな心情発言が多くなったり、挙動のおかしさを見せるまでに時間はかからなかったけど、白の心情は僕の触れたい事では無いから今は置いとく。

(白の心の内は白だけのものだ。例え“繋がって”“伝わって”しまおうとも。)

 

共鳴する様に僕はPTSDに悩まされる様になった。

それは白の悪癖でもある「わざと試すような行動言動で相手を揺さぶり、嫉妬深く独占欲を見せて追い縋ってくれて、自分の方が優位だと感じていられる相手でないとその情を実感できない」っていう、病んでれ乙女みたいな態度(苦笑)に原因があったんだけど、もっと根部く掘り下げれば、僕の中にあった過去のトラウマが、まるで間欠泉でも掘り当てたかのように、一気に溢れ出て来たからだ。

 

壁を超えるには、壁に直接触って攀じ登ったり体当たりしたりする事になる。

そう言う時、壁の厚さや高さや硬さを身を持って知るものだ。

 

 

さて僕は「高根の花」扱いをされる事が多かった。

狩猟本能をさぞかし刺激するだろうけど、狩りが終わったハンターは家を求めるよね。帰ったら子供が走って来てシチューの匂いがしてるような家臭い家。

僕はそれじゃないらしい。

いつからかそう思う様になって行ったし、結局最後は皆、僕に希望通りの役柄を演じて欲しいんだな、そう割り切るようにもなっていた。

何より刃傷沙汰になる様な家で育ち「終わらない愛」を見た事が無い僕は、克服した様でしていない人間不信が、まだまだずっと続いていた。

 

 

「俺はゆっくり(好きになって行く)だなぁ~。」

そこそこの関係になってから白の言い放った一言が、それ。

僕の中で「けじめ付けなきゃ」という思いから、自分の好意をはっきり言葉にした返事がそれだった。

は?

その気も無いのに関係進めた訳?

僕だって最初は朧気で、その気持ちを何度も反芻し、躊躇し、自分の中で否定さえしていた。好意なんて持つ筈が無い、これは友情の延長線上で、きっと相方という仲間意識なんだ…ってね。だけど認めるのは潔い方だから、ああそうだ、と、いつしか自分の中での区切りを付けた。

だからちゃんと好意があるって事を、言葉で伝えたんだけど、返事は曖昧なもんだった。

お互いまっぱで聞くにはパンチ効いた言葉だったかな。

ああそのパターン、ハイハイ。聞きかえしてもハッキリ説明しない※曖昧な態度も重なり、僕の白への信頼感はぐらっと揺らいだ。

(※今思い返せば、説明出来ないみたいだったけど)

 

そのくせ別れ際には、

「で、俺はこれから本名で呼べばいいの?」

だった。何だコイツ?

一回寝た相手と結婚考えるタイプなのか?と、ちょっと引き気味になった僕は、今迄通りでいいんだけど…と、本名は教えなかった。

 

白の言動行動は一貫性が無かった。

「黒さんって俺の一番好きな女優にそっくりで、めっちゃかっこいいし綺麗!!すっごい綺麗…!」

「(始まりが)燃え上がる様な熱愛じゃなかった…してみたいけどね、燃え上がる恋…(遠い目)」

「めっちゃ好き。前よりも好きになってる。」

「俺は俺を好きじゃない人を好きになるみたい。好き好きって来られると駄目なんだよねぇ。」

「可愛げ見せてくれる方が、スンッてされるよりいいよ。」

「俺は将来、結婚するかも分かんないしさぁ…」

「同棲ってさぁ、やっぱした方がいいよねぇ~。」

と、二転三転する上に、SNS上での“当て付け投稿”みたいなのが多かった。

自分の周りの女性関係者とのツーショットを載せては「俺の姉ちゃん」「姉の様な存在」「お姉ちゃんみたい」と、よく分からない姉扱い…。

誰に対しての、何のつもりでの当て付けなのかよく分からなかったけど、とにかくモテるんだぞって言いたいんだろうと…。

 

実際、白は周囲の女性をそういう目でしか見られないやつのようだった。

以前の企画のトラブルもそうだけど、何かにつけて「俺の事気に入ってくれてるから、結構動いてくれる」「オレの女みたいに扱ってるから~」と女性を評価する癖があり、(女性本人に確認するとそうでも無かったりするんだけど)あまり人付き合いや人使いが上手いとは言えなかった。

ていうか、下手だった。振り回してるつもりで振り回され、使うつもりで使われるタイプだな、というのが僕の本音だ。

 

白の癖に関しての話はここまでにしとくよ。あんまりするとただのディスになっちゃうから。

とにかくこの一言が、事ある毎に、上手く行ってても、いや行ってる時に限って頭の中にフラッシュバックする様になってしまった。

何だろうこれは。考え過ぎだ、気にし過ぎなんだ、上手く整理できていないんだ、信じる強さが無いんだ、そう思えば思う程に悪化し、毎日何しててもそっち側に意識が引っ張られる様になってしまい、そこに白の揺さぶり行為が重なって来て、ある日崩壊した。

 

吐くほど辛い毎日、自制心と自我が常に戦っていて、思い切り揺らいでいる所に攻撃を食らいまくって倒れたのもあるけど、

実は、人に言っても信じて貰えなそうな、不思議な理由もあった。

 

白は、「僕の今迄のX(元恋人)達ダイジェスト」みたいな奴だった。ほんとに驚く。

そして、最も愛する部分と最も嫌悪する部分を併せ持ってもいた。

例えば、僕のXが「子供の名前は○太郎にしたかった」と言ってた事があり、いやそれは絶対ないだろ!今まで聞いた名前候補の中で一番無理だなと思ってたんだけど、白が急に「子供の名前は○太郎にしたい!」といい出したり…○太郎はそうそう被らないだろ!?

それと、別のXは、その年齢でそれはちょっとね…という、どうしても理解出来ない生活環境だった事があるんだけど、白もまさにそうだったり…。(これもなかなか被らないピンポイントの筈なんだけど)

同時に、

これをしてくれる相手が居たら運命だわ…ぐらいに思っていた事をサラッとやってのけたり、

いつかこうしてくれる人が現れればな、の条件をいとも簡単に満たしたり、

これはなかなか無い!っていう最高と、

これはなかなか無い!っていう最低を、まるで何かのテストのように具現化してくれる相手だったから、善し悪しに関わらず、いつも気持ちの振れ幅は極限だった。

 

続く

コンビの彼は呼び名に困るから、白にするね。僕が黒って事で、会話の部分は仮名表記する。犬みたいだけど。(笑)

 

白の悪い癖は、異性の客の気を惹く様な事を言って自分に入れ込ませるいわばイロコイ営業みたいな感じだったんだけど、その相手が太客になった時点でスタッフに引き込むというタブーを犯す事だった。

本人は、その行為がタブー視されている事すら、よく分かってないんだと思う。

ある程度の経験を積んだ大人なら「ああ、それ絶対破滅する上に、人間関係のいざこざが絶えないやつ」って分かるもんだけど、彼は…まあ人間関係においては極度に未熟だった。

 

内部に絡ませるのと“パトロン”とは全然違うから。

 

僕は何度か注意した事があるし、前のブログで書いた事件があった直後に、白に直接注意したし、制作さん本人にもキッパリ一線引いている。

「ファンをスタッフに引き込むなんてロクな事ない」「参加動機が好意なら好意で縺れる」「プロでない以上は現場においてどんな行動するか分からないし、私情で動く様な事があればお前が(主宰者が)行動に責任を取る必要がある」って。

白はのらりくらり、あはは(苦笑)、そうかな、いや確かに、そうかもね~ぐらいで重大さをまだ分かって居なそうだったけれど…。

事実、公演が始まってからは白自身が散々この人に「はぁ、何でこんな仕事も出来ないの?」「ちゃんとして欲しいんだけど…」と、裏で文句を言ってたし、結局、そういう裏の顔を見せてしまったせいで向こうに愛想尽かされて「もう一緒に出来ません」って言われたらしい。

 

白の我儘な態度は、関係構築の未熟さが根底にあって、本当に宜しくない。

後輩に「お前何やってんの?ふざけんなよ?こ●すぞ!」とか言う奴だから。

 

白のこういう態度の話は改めてになるけど…

 

とにかく、現実的にも不思議体験的にも色々ありつつも、企画は終わった。

 

打ち上げの席で、僕は白に初めて、筋書きが全て自分の体験して来た事だったと告げた。

白は何も知らなかったので、そうだったんだ…という反応だった。

 

ここから更に急展開だった。

 

僕達は距離が縮まり、一週間後には、一部のお客さんのご期待に沿える様な関係になっていた。

白は、未熟で我儘な所もあるけど根は素直で、僕にとって初めて、性別を否定せずに受け入れられた相手だった。

僕は仕事場では精神面の性別の方=男性として生きているので、同性として対峙してた筈だけど、恋仲になっても同性愛の感覚のままだった。そもそも、白は完全に僕の「ターゲット外」だと思っていたらしい。僕は女の子としか付き合わないんだと思ってたんだって。だから、両方と付き合った事があると聞かされた時は驚いたようだ。

アプローチは向こうの方が激しかった気がするから、彼にも十分その気があると思う。

(実際、本人がそう言っていたし。)

 

ただ、

同性は初めてで、お互い戸惑った。

白は同性を好きになるまではあったけど付き合った事は無く、

僕は異性愛者(付き合う相手によって性自認が変わる)だから、

自分がどう接して行けばいいのか、相手はどういうつもりなのか、よく分からなくて。それを素直に言った時の、白の言葉が忘れられない。

「性別とか関係無い、超越してる。いいじゃん同性愛、カッコいい。」

今までどちらかである事を求められ続けて、必ず相手に合わせどちらかに寄って演技をしてた自分が、初めて全肯定された様な感覚だった。

それは白にとっても同じだったんじゃないかな、と思ってる。

 

それから白は色々話してくれた。

本当はスカートとか穿きたい、レディース服着てみたいっていう事、イヤリングがしたいっていう事や、華奢なチェーンで小さなチャームが付いたネックレスを可愛いと思っている事、どれも表向きの彼には求められていない事だと思うけど、僕にとってはそれこそが彼の魅力だった。

片面を隠してしまえば輝きは半減する。

それは僕が良く知っている。

 

僕と居る時は素で在って欲しいし、僕も素に帰りたい時、解放し合える気がする。

いつも営業スマイルの印象があったけど、こんな笑顔するんだな、コイツ…って何度も思った。

 

それでも結局僕らには最初の壁があった。

 

売り物同士であるっていう壁

 

そして、今迄の自分の売り方(生き方)の壁

 

壊すべきだから、存在していて、越えるべきだから、立ちはだかった

 

と、僕は思う。

 

 

続く

当時、僕の可愛がってたペットが死んだ。小さなハムスターだったんだけど、胸に腫瘍が出来て、手術するかしないかで眠れないぐらい悩んで、しないまま自然に任せる事を決定。

毎日決まった時間の投薬と食事管理(病人が居るのと同じ)があり、遠方から仕事に通わなければならない僕には負担が大きく、報酬の受け取りもままならない現場に携わる事に違和感を覚え始めた。

※事実この現場は、未だに一年分ぐらい報酬未払いのままだ。

 

お客さんから慰めのつもりで「彼等の生活の為にも仕事しないといけないから悩みますもんね」と言われる度に、意義を見失い、辞めようかな、という方向へ傾いていった。

 

そんな時、丁度、コンビの彼から自主企画へのオファーがあった。

今まで現場以外では話した事が無かったが、突然呼び出され、初めて外で話した。

企画の内容とオファー的にはちょっと微妙で、一度は断りかかったけど、時期的に「やるからには調整のハシ役に入るのではなく、本気で演技に取り組みたい」って言う気持ちが大きかったのと、彼の熱意に応えようかとも思ったから、受けた。

妙な違和感はあったんだけど…。

 

この違和感は後々当たる事になる。

 

 

驚いたのは、その企画内容が大きく改訂されてからだった。

当初の話とがらりと変わり、まぁまぁ面白い内容に書き変わってはいたものの、その筋書きが…

 

 

ここで少し、僕の幼少期からの人生に遡る。

 

 

社会の目から僕は「良家の長女」だったろう。

僕は自分が肉体的性別の自覚ないまま生きていた。

三人兄弟の長子として生まれたけど、性別のせいで何故か一歩引かされることが多く、それでも要所要所では進んで手伝いやら何やらをしなければならない環境に違和感を抱きながら大きくなった。

加えて、特異体質だった。

赤ん坊の頃から眠らず、感覚が過敏で、見えない系のものが見えていた。不思議な体験も多くあった。

祖母からは「あなたが生まれた夜に、何故か流れ星が沢山降ってたの。あなたはお星さまに乗ってやって来てくれたと今でも思っているのよ。」と言われるぐらいには、変わった子供だった。

母も、「百年に一度のバイオリズムで生まれた子」と医者に言われたらしく、親族の中でも“僕伝説”は絶えず聞かされた。

 

小学校高学年で、家の事情で引っ越しがあり、転校先で上手く行かず大きな苛めに遭った。

その頃から両親の不和が悪化し、家庭崩壊、登校拒否。自分の悩みを誰にも相談できない環境で、人間不信から他人と距離を置く様になり、あまり人と話さなくなって、元からそういう気はあったけど、更に動植物と居る事が多くなった。

将来はこの声なき子達の為に何かしたいと、志望を画家から変更して、獣医を目指し始めた。

 

高校に入ると完全に重度の対人恐怖症で、会話の仕方を忘れてしまっていた。

片親になって、更に荒れた家庭環境から強迫神経症の様になってた。

泥沼の様な環境に、弟二人も荒れていた。

 

ある日、弟同士の喧嘩がエスカレートして大騒ぎになった。

思春期に入った男子同士の喧嘩に母が介入出来る筈も無く、ついに刃物が出た。

僕の目の前でそれは起こった。

一歩踏み出せば止められたかもしれない距離で、弟が兄を。

この時は僕に注意を向けさせることでそれ以上の事にはならなかったけど、僕の人生に衝撃を与えた事件で、後々まで当時の光景を引き摺った。今でも指が震えるぐらいの驚きだった。

 

 

そして、話は戻って。

 

「こんな身分や状況は想像するしかないけど」と、筋書きを考えた彼は言ってた。

でもね、僕は何も想像する必要が無かったんだ。

だって僕の半生や葛藤がそこに書かれてるんだから。

誰にも言わないまま、自分の中だけにその驚きは秘め、淡々と仕事をこなして行く内に、僕は更に不思議な体験をした。

 

僕の考えている事が、彼に伝わる事が多々あった。

家の片づけをしていたら古い小道具が出て来て、「これ使いたいって言われそうで面倒だから捨てよう」と思った次の日、「ねぇ、こういうの使いたくない?」って写真付きでメールが来たり、

練習風景を見ていて、僕ならこうするな…と思った次には、彼が急にそう動いたり。

テレパシーと世間で言われているやつで、特異体質だった僕にはめずらしい事では無かったけれど、そこまで頻発した事が無かったから、途中から気持ち悪くなってずっと「オフ」にしてたぐらいだ。

 

また、それは僕から彼へ、だけでなくて逆もあった。

 

ある晩、僕の自室に居た時、急に、他の現場で目にした事がある彼の“太客”の顔が浮かんだと思ったら、吊り下げの照明が床に落ちて、バウンドしてこっちに飛んで来た。

何だよもう?!

と思って、普通に照明直してそのままだったけど…

後日、彼と契約の事で話している時に、制作担当者と話し合わなければいけない部分があって…という旨の事を聞かされて、耳に引っ掛かった。

実は僕の契約内容だけ皆と違っていて、遠方からの参加である事や衣装のデザインも兼任していた事や、あとはこちらが提示した条件も踏まえて負担を軽減できるように考慮してくれたらしく、それが制作担当者との意見不一致になって、電話越しにやや言い合いになったらしい。

「優遇している、特別扱いするのはどうか」みたいな感じで…。

ピンと来て、聞いてみた。

「なぁ、その担当者ってさ、俺(表での僕)も見た事ある人?」

「いや、まぁ知らないとは思うけど、○○に来てた事あるよ…」

「あの茶髪でさ、××してる人じゃねえ?現場でチラッと会った、お前に△△渡してた事のある…」

「おお、そう、その人…凄いな!よく分かったね。」

「おい客じゃねえのか?関係者なのか?」

「うん、制作を勉強してるみたいで、俺の計画を手伝いたいって言ってくれてて…」

大きく長~~~~い溜め息と共にすべてを理解した僕は、先日あった事を話して聞かせた。

「…あ、その日のその時間って丁度、俺がその人と電話でやり合ってた時だ…」

勿論、担当者さんから彼はこの現場の直後にブロックされ、僕はこの現場の直後フォロー解除される。

 

そして、この時もう見え始めてたんだけど、

 

オファー承諾前に感じた違和感の原因は、彼のこの“癖”にあった。

 

 

続く

初日に話したのは彼だった。僕のパフォーマンスを気に入ってくれて、妙に盛り上がった。

「最高だよ!外国だったら観客は皆、君のパフォーマンスを溺愛するぜ!」

って言って貰えて、ハグまでして仲良くなった。(以後ずっと仲良かった)

同じ格闘技やってたのもあって、何度も話したな。

 

(余談だけど、外国人出演者は全員こう言ってくれるんだよね。日本人だと「出来ない若手に対しての基礎・基本指導・及びマウント」が入る事が多い(笑)のが僕のあるあるだったんだけど、他の外国人キャストからも「上手いなぁと思っていつも魅入っちゃって!」「何処かで体の使い方を学んだの?」と言われてた、細やかな自慢。表だと面倒で言えないからここで言って置く。)

 

 

と。

このステージは出演前に二回、客席から見学させて貰ってたんだけど、二回目の時。

「今夜は君と同じチームで新人が出るから、ちょっと参考にしたらいいよ」、と言われていた。あまり他人の仕事ぶりに興味の無い僕(苦笑)は、ハイハイぐらいだったけど、こいつが妙に目に付いた。

 

変な色気。華がある。

そして、体躯が似ている。

パフォーマンスはイマイチ惜しい(若さからか、勿体無い部分が多かった)けど、僕の普段の売りとキャラ被ってるじゃ―――ん…と、ちょっと鬱陶しく思えた。でもまぁ、後出しの方が有利だったりするもんね。

演技はイマイチだし。

と、たかを括って見てた。

 

そのステージ終了後、皆の前であいさつするから残っていてくださいと言われて、終演後の会場で紹介された。

どのチームに属するかと、軽い自己紹介の後、場は解散となり撤収作業が始まった。

社長に挨拶しようと裏に回ると、先程ステージの上に居た同じチームの若いイマイチの彼が、端っこで目をキラキラさせてこっちを見ていた。一瞬だったけど妙に目に留まって覚えてる。

向こうは挨拶しようとしてくれてたみたいだけど、社長が出て来たので、僕は社長の方へ話し掛けて、彼とは会話しないまま帰路についた。

 

 

彼と実際に話したのは一ヶ月後だった。

 

出た瞬間から他の案件で欠席してた為、被る事が無かった。

 

最初の印象は「鬱陶しい人だなぁ…」だった。(苦笑)

 

仕事のスタイルも正反対、年齢も離れているんで、正直なところ、噛み合わない感じがして会話するのが面倒だった。

○○したいんですけど良いですか?ここどうします?っていちいち確認して来るんだけど、僕はもう「やってみて合うならGO、合わない場合はまたやってみてお互いの出方で決める」という現場での力量を重視してたから、若手が苦手で。

「お好きにどうぞ、後は演出次第でしょ。」

っていう感じで流していたけど、彼の方が気づくと後ろに居たり、遠くから見てたり、演技を合わせたがったり…

不本意ながら、最終的にコンビの様に組まされてしまったので、自然と会話が増え、仲も良くなって来た。

意外な共通項が多いと知ったのもこの頃。

企画主宰者である事、船が大好きである事、元志望が同じ分野である事。(これは滅多に居ない)

活動エリアが何度もニアミスしていた事に加え、不思議な「かぶり」が多く…周囲からも似ていると言われ始め、僕もようやく意識し出した。

 

でも、その後の急展開は想像もしていなかった。

 

続く