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僕の10代 目次

最終話 奇跡と軌跡

ケイの闘病生活が始まったころ、僕はもう一つの悩みを抱えていた。

それは、親友のシンと音信不通になってしまっていたことだった。

大学受験があったはず。

シンのことだから、どこか一流大学に合格してるはずだと信じていた。

しかし、彼から連絡は無かった。

こちらから連絡を取りたかったが、彼の実家が引越ししてしまい、新しい電話番号も住所も聞かされていなかった。

僕の実家も実は引越しをし、電話、住所が新しくなっていた。

お互い、連絡の取りようがなくなっていた。

もどかしかったが、ケイのこともあり、僕は大親友と絶縁状態となってしまっていた。


ケイの方は、病気と闘っていた。

なかなか手術の日が決まらず、薬での治療が続いていた。

薬の副作用なのか、日に日に痩せてきている。

あんなに艶のあった肌がカサカサになっている。

僕は、そんなケイを直視できずにいた。

頑張ろうなんていったものの、正直びびっていた。

好きな人が死ぬかもしれない。

どうしようもない絶望感。

ただ、ただ、受け入れたくない。

だけど、一番つらいのはケイ。

それなのに、病院へ見舞いに行くと必ず笑顔で迎えてくれる。

僕も精一杯の笑顔で返す。

病院の部屋ではくだらない冗談を言い合って、なるべく楽しい時間になるよう努力していた。


ケイ「ねえ、手術が成功して、病気が治ったら、旅行行かん?」


僕「いいねえ。どこ行きたい?」


ケイ「どこでもいいよ、二人一緒なら。」


病気が治ったらアレをしようコレしようといつもそんな話をしていた。

ケイは前向きに頑張っていた。

ただ、それは僕が見舞いに行った時だけだったようだ。

ケイのお母さんの話では、夜一人になるとどうしようもない不安で毎晩のように泣いたようだった。

自分が死ぬかもしれないという不安が一人になるとどっと溢れ出て来る。

僕に心配かけまいと、ケイなりに僕に気を使っていた。

そんなことも全てわかっていながら、僕には何も出来ないことに苛立ってしょうがなかった。

平日は仕事、土日は病院へ見舞いとさすがに疲れがでてきていたせいもあるかも知れない。

でも疲れたなんて言ってられない。

ケイは絶対治って良くなると思う他なかった。



とうとう手術の日が決まった。

手術が決まってからはケイは僕に対しても不安を口にするようになっていた。


ケイ「もし私が死んだら、ちゃんと新しい恋人を見つけてね。」


僕「ケイが死ぬわけないやろ。大丈夫やから、頑張れな。」


ケイ「そんなんわからん。死ぬかもしれんって先生に言われとるんやから。」


僕「弱気になるなよ。」


ケイの口から”死ぬ”という言葉が多くでるようになっていた。


そして手術当日の日が来た。

僕は有給を取って、病院へ来ていた。


僕「ケイ、きっと成功するから。頑張れよ。」


ケイ「今までありがとうね。私なんかの傍に居てくれてありがとう。」


僕「うん。これからも一緒やからな。」


ケイ「うん。治ったら旅行へ行こうね。」


ケイは手術室へと入っていった。







こうして僕の10代は終わった。

ケイの手術の日が僕の誕生日だった。

僕は二十歳になった。










~6年後~



僕「ねえ、ねえ、ママ~。ちょっと来て。ハルカが立った、立ったよ、今。」


ママ「え~本当?どれどれ、あ~本当だ。凄い、凄い。」


僕「ハルカももう1歳やもんな。」


ママ「そうね、早いね。私達も26歳やね。」


僕「そうやな~。手術から6年も経ったんやな。」


ママ「そうやね。あの時から考えたら、子供産めるなんて奇跡やね。」


そういってケイは僕に最高の笑顔を見せてくれた。

僕はケイとの間にできた娘を見ながら、昔のことを思い出していた。

テュルルル、テュルルル。

突然、電話が鳴った。


僕「もしもし。」


「やあ、元気やった?」


僕「え?もしかしてシン?」


「うん。やっと連絡先が判って、電話できたよ。」


僕「今何してるの?」


シン「東京にいるよ。もうすぐ大学卒業。一浪して慶応受かったんだ。就職も決まってる。」


僕「おお。さすがシン。おめでとう。」


当に雲一つない天気の春のぽかぽか陽気。

桜の木は、もうぽつぽつと花を咲かせていた。



~完~






第25話 事実

僕は嫌な予感がしながらもケイから届いた白い手紙を開けた。



 ひさしぶり。

 元気にしていますか?

 突然手紙なんか送ってごめんなさい。

 声を聞くと泣きそうになるから手紙に書きます。

 この手紙も書くかどうかすっごく迷いました。

 でも、このままバイバイするなんて寂しいから、ちゃんと書くね。

 もう、あなたとは会わないことに決めました。

 つらいし、何日も泣いたけど、二人のこれからのために別れた方がいいと思ったから。

 返事は書かないでください。

 一方的かも知れないけど、ごめんなさい。

 今までありがとう。今までのコト忘れないよ。

 お仕事頑張ってね。

                                                       」



内容は予想がついていた。

判っていた。

判っていても、涙がこぼれた。

何回も何回も読み返した。

読み返しても答えが変わるわけでもないのに・・・。

僕はケイにふられた。

納得出来なかった。

どうして?

僕は嫌われたのかな?

お義父さんが亡くなってショックなのは判る。

でも、でも、立直らないといけないし、幸せを探さないといけないんじゃないか?

その傍に僕は必要ないということなのか?



返事は書くなと書かれていた。

でも、やっぱり納得できない。

僕は直接会って理由を聞こうと思った。


(このままじゃダメだ。

 きっと後悔する!)


そう思うと、僕は車のキーを握りしめ、会社の寮を飛び出した。

高速に乗り、気付けばケイの家の前まで来ていた。

車を降りようとしたその時、玄関のドアが開いた。

ケイのお母さんだった。

大きなバッグを抱えていた。

僕は車を降りると挨拶をした。


僕「お母さん、お久しぶりです。僕です。」


お母さん「あ、あら。久しぶり。」


僕「ケイさんいますか?」


お母さん「居ないんよ・・・。」


お母さんの様子が少しおかしかった。何かを僕に隠している、そんな雰囲気を感じ取った。


僕「どっか出かけてます?」


お母さん「実はね、言うなって言われてたんやけど、あの子入院しとるんよ。」


僕「え?入院?」


思っていなかった言葉に、驚いた。


僕「どっか具合悪いんですか?」


お母さん「うん、実はね・・・。」


僕は、ケイが入院することとなった経緯を聞かせてもらった。

ケイは肝臓の後ろになにかができているということだった。

僕は医者じゃないので、詳しくはわからなかったが、命に関わる病気だということは理解できた。

どうやら、お義父さんが無くなったことと関係しているようだった。

お義父さんは2階のベランダを修理していて亡くなったと聞いていたので、落ちた時に頭を打ったショックで亡くなったのだと思っていたが、違ったらしい。

もともと肝臓の後ろになにかができていて、2階から落ちた拍子に背中を強く打ち、その肝臓の後ろの何かが破裂したということだった。

そのお義父さんと同じものが遺伝によってケイにもあるそうだった。

最近調子がおかしいので、もしかしてと思い大きい病院で検査をして発覚したということだった。

しかも、ケイの場合はかなり大きくなっており、内臓を圧迫しているということで、いつどうなってもおかしくないということだった。

それで、手紙の内容も理解できた。

僕のことを思って別れを告げたんだ。

僕はまた涙がこぼれた。

お母さんの手前、泣くのを必死で我慢したが、抑えきれず目から涙がこぼれてしまった。

お母さんがそれを察して、ハンカチを貸してくれた。



僕「どこの病院に入院してるんですか?」


お母さん「県立中央病院よ。今から病院に着替え持って行くから一緒に見舞いにいってくれる?」


僕「行きます。」


僕はお母さんと一緒にケイの入院している病院の部屋に向かった。

僕は、なるべく明るく振舞うことにしてケイと会おうと決めた。


僕「よ、ひさしぶり。なんで入院しとんやったら言うてくれんの?」


ケイは驚いていた。そして僕の顔を見るなりわんわん泣き出した。

やせ細ったケイを見て僕も泣いてしまった。

せっかく明るく振舞おうと思ったのに。


お母さん「ケイちゃんごめんね。教えてしもうた。」


ケイ「心配させたくなかったから言わんといてって言ったのに。それに手術はするけど、どうなるか判らんって

    言われてるし。もう死ぬかもしれん人が恋人なんて嫌やろ?」


僕「俺ってそんなに頼りない?」


ケイ「ううん。そういうんじゃなくて、だって私、死ぬかもしれんのよ。」


そういってケイは下を向いた。

”死ぬ”という言葉を言いたくなかったようだ。

ただ、その可能性が高いということは、来る前に聞かされていた。

聞かされてはいたが、正直ここに来るまで現実味は無かった。

僕はまた泣きそうになる。


(ケイの前では明るくしようって決めたじゃないか。)


僕は笑顔を作った。


僕「別れようなんて言われたって俺は認めんよ。大丈夫だから。俺も頑張るからケイも頑張ってよ。」


精一杯の笑顔で訳が判らないような言葉を言った。


ケイ「いいの?」


僕「一緒に頑張ろ。」


お母さんが気を利かせて病室から出て行った。

僕達は見詰め合ったまま、ベッドのカーテンに隠れてキスをした。


僕「はは、パジャマ姿でキスって。」


ケイ「うん、格好悪い?」


僕「ううん。それより頑張ろうな。きっと良くなるから。お父さんの分も生きてあげんと。」


ケイ「うん。」


しばらく会っていなかったので、今までのお互いのいろいろなことを話をした。

時には笑ったり、泣いたり、ひさしぶりに楽しい時間だった。

楽しい時間というのは早いものであっという間だった。


ケイの闘病生活が始まった。


続く

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