末期ガンの患者さんが退院したあと、その患者さんが入院していた個室のベッドに座っていた。
さっき退院したばかりなのに、きれいに整えられたシーツの上であぐらをかいでニコニコとこちらを見ていた。
私服に着替えて退院したはずなのに、水色のストライプ模様の病衣を着ていた。
マキさん、まだいたの?ご家族お迎え来ていたでしょう。
声をかけるとニコニコとしたまま首を横にふった。入院生活もなかなか悪くなかったってことかな?と言うと、親指を立ててニッと笑った。
また後から来ますね。と、声をかけてから部屋を出た。
その日、私は部屋に戻ることはなくその日の勤務を終え、帰宅した。
亡くなった患者さんがお礼を言いに来たのだろう。よくあることだった。家で看取ってもらえて良かった。
テレビをみてビールを飲んでいると、スマホが鳴った。3階西病棟。げっ。何かやらかしたかな。一瞬で酔いが覚め電話に出た。
「今日退院したマキさん、家からいなくなったそうなの。あなた今日担当だったから何か知らない!?」
…え、生きてたの…!?
「あの、実は退院したあとベッドに座っている所を見ました…本人と話もしました…」
えー!?戻ってきたの!?なぜ言わなかったの!?それで、マキさんはどうしたの!?
すみません、亡くなったと思っていました。
え!?勝手に殺さないでくれる?!状況を詳しく報告して!
私はマキさんとのやりとりを師長へ説明した。
ため息と共に、分かりました。明日は日勤?師長室に来るように。といい電話は切れた。
はー。長いため息。マキさんどこに行ったんだろう…生きてたんだ…どうしよう…生きてた。